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2006年9月30日 (土)

『「明日の記憶」と付き合う』と付き合う

『「明日の記憶」と付き合う』と付き合う

「明日の記憶」に感動してほぼ毎日イトイ新聞の『「明日の記憶」と付き合う』の渡辺謙さんと糸井重里さんのメールのやりとりを一気に全部読みました。
22通のメールと試写会のトークです。
全部を読む時間の無い人の為にその中から私の印象に残った部分を紹介します。
時間のある方は是非全文を読んで下さい。
珠玉の対談集といえるでしょう。 これからの対談のありかたの一つのような気がします。
映画をご覧で無い方は是非ご覧下さい。

糸井重里→渡辺謙

前に1度、家で観た映画なのに、 ほとんど同じところで、泣けてしまいました。
劇場で観ると、音量に遠慮がないので 渡辺さんの演じる「佐伯」の声の大きさが、 直に胸に響きました。
つらいときの叫び声、 強がりの悲痛な大声、 生きる動機が危うくなったときの弱い声、 仕事の現場での役割を演じる声など、 どれについても、「ボリューム」が とても大事な表現なんだと、つくづく思いました。

渡辺謙→糸井重里

こちらで字幕つきの試写会をしました。
普通のお客様です。
何故か、日本と同じリアクションでした。
何か暖かいものを受け取ってくれていました。
僕の漠然とした思いが、間違っていなかった。
“生きる”ということに関しては、どの年代も、人種も、国境も 越えられるのかもしれない・・・。
この作品に出会えたことを、心から嬉しく思えました。 ・・・・・・・・ 梅って品があっていいですよね。 桜のような派手さはありませんが、凛と立つ古木の梅のような、 品のある映画になると良いなあ

糸井重里→渡辺謙

「負け」ということを意識した経験がありますか?  あったとしたら、その「負け」と、  どうつきあいましたか?

渡辺謙→糸井重里

僕は17年前、生きるということに終わりがあると、 突然知らされました。
きっといつかは誰でも受け止める事実でしょう。
でも、僕はやはり早すぎました。 敗北から立ち上がり、もう一度何かに向かおうとしました。
当然のことでした。 そうしなければ生きるよすがが無かったのです。
でも、月日がたち様々僕を取り巻く環境が変化していきました。
どこにいても、どんな仕事をしていても、 誰と逢っていても、何を食っていても 僕はただ、そこにいればいいんだと思うようになってきました。
僕らしく、僕なりに・・・。

糸井重里→渡辺謙

ぼくは、この『明日の記憶』を、 「負けの先に紡ぎ出されていく夢」の映画だと感じました。 それが、これだけ胸に響いてきたのは、 仕事としての「企画」やら「テーマ」ではなく、 もっと実感として、からだ全部で感じ考えた何かが、 あったからだと思ったのです。
使いにくいことばなのですが、 「たましい」が、 この映画のおおもとにあったと感じたのです。
「外国」で仕事をするようになってから、 何かが変わりましたか?

渡辺謙→糸井重里

「実際にこの病気になったらどうしますか?」という質問が 今、一番嫌いです。
だって、その質問は、 ただ病気を恐ろしいものとしか捉えてないんですもの。
なりたくない、なったらおしまいだ・・・ そう思ってるだけなんですもの。
病気と向かい合っている人を、 遠くから「可哀想に」と眺めている感じがするんです。 見えない線がそこにはあるんです。
・・・・・ 国が違おうが、お互いに「生きている」ことに 違いは無いからですかね。
言葉や習慣、価値観というのは、 後で形づくられたものですよね。
でも、やりとりするのは同じ人間で、 食って、寝て、愛して、憎んで、そして消えていく。
痛みや寒さを感じる皮膚は違っても、とにかく感じるんです。
美味いか不味いかは、それぞれだけど、 とにかく食ってみりゃあいいんです。

糸井重里→渡辺謙

ロケ地のこと、あの映画のなかの「景色」のことについて、 話してください。 再出発した佐伯夫婦は、 あの山の景色のなかに溶け込んでいくんですものね。

渡辺謙→糸井重里

ちょっと自慢できる仕事だったのは 堤さんを監督にお願いしたのと、 ラストシーンを新緑に設定したことです。 原作の設定では紅葉の夕暮れでした。
最初はそれもありかなと思ったのですが、 何か違うと思ったのです。
寂しすぎる、そう思ったのです。

糸井重里→渡辺謙

次の部屋のドアについた把っ手は、 エグゼクティブ・プロデューサー渡辺謙さんの、 会心の当たり! 「堤幸彦監督」というキャスティングについて、 というのはいかがでしょうか。

渡辺謙→糸井重里

この何年かすごく自分の愛おしいものに 対する感覚が以前よりも深くなってきている気がします。 気持の距離に目覚めたのかもしれません。
そんな時に出会った作品が「記憶」だったのかもしれません。
映像で一番描きにくいのは匂いと温度かもしれません。
その二つがどうやったら感じられるか、いつも考えてきました。
男の匂い、女の匂い、子供の匂い、お互いの体温、 大切な五感(六感かな?)のその二つが欠けてしまうと、 もったいない気がするからです。
気持の距離を感じる時、 その二つが欠けてしまうからかもしれません。
実生活はまじめに、仕事はいい加減に・・・ これが僕のモットーです。
しっかりリサーチした上で、 いい加減に考えないと遊べないんです。
役が自分の発想を超えてくれない。
自分の観念や、自分の人生観や、人間観を越えられない。
もっと言えば、自分の体を越えられない・・・。

糸井重里→渡辺謙

家族というやつは、 それぞれの「わたし」の思惑に関係なしに、 「わたしたち」として動きます。 これが、いわゆる「正しい」方向に動くとは限らないし、 いわゆる「正しさ」なんてものがナンボのもんじゃ、 というくらい愉快な軌跡を描きます。
渡辺さんが、「しっかりリサーチしたうえで、いい加減に」 仕事をするというのは、わかる気がします。
(ぼくは、どうやら、いい加減の上にいい加減なんですけど)

渡辺謙→糸井重里

「明日の記憶」は海外で配給できないかと考えています。
そのことも含めた、 エグゼプティブ・Pということでもありました。
海外での配給ということになると、 当然字幕の問題が出てきます。
やりました。
さっきのと逆のことを・・・。
現代の日本の社会のスピードと、 広告代理店の専門用語、病気の専門用語、 更には、精神的な微妙なニュアンスと 問題山積みでした。
ベースラインの字幕を作っていただいて

糸井重里→渡辺謙

先日も、映画会社の方々に、 「これは当たっちゃうよ」と、つい断言してしまいました。
その理由は、「関わった人が、手伝いたくなるから」という なんだかわかったようなわからないようなものでしたが。
海を越えても、同じような反響があるんですね。
もちろん、1200ものセリフを、いちいち 肉体をつかって発した俳優をまじえて考えていくという ものすごい時間があったからこそなのかもしれませんが、 「そりゃ、そうだろうな」と、妙に納得しました。

以下は毎日イトイ新聞の「明日の記憶と付き合う」

二人の対談に納得するところがあったら→

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