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山頭火と庄内・湯平・由布院

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山頭火著作集1(あのを越えて)(潮文社)の中の大分県由布市庄内町・湯平・由布院に関ると思われるところを紹介します。
庄内町には私の父母がいます。
p104
昭和5年11月9日 晴。曇。雨。後晴。天神山。阿南屋(30、中)
・ ・・
今日の道はよかったが、下津留附近が最もよかった、これについては別に昨日の赤岩附近景勝といっしょに書く、それはそれとして今朝、湯ノ平から湯ノ平へ山越えしないで幸だった、道に迷ふばかりでなく、こんな山水を見落とすところだった。

ホイトウとよばれる村のしぐれかな


しっとりと濡れて岩もわたしも

剃りたてのあたまにぞんぶん日の光

宿までかまきりついてきたか


等25句
・ ・・
11月10日 雨。晴。曇。行程3里。湯ノ平温泉。大分屋(40、中)
夜が長い、そして、年寄は眼が覚めやすい、暗いうちに起きる、そして「旅人芭蕉」を読む、井師の見識に感じ苦味生さんの温情に感じる、ありがたい本だ。(これで三度読む、6年前、そして今日)
 冷たい雨が降ってゐるし、腹具合もよくないので滞在休養して原稿でも書こうかと思ってゐたらだんだん晴れて青空が見えてきた。十時過ぎて濡れた草履を穿く、少し冷たい。山国らしくてよろしい、沿道のところどころを行乞して湯ノ平温泉といふここへ着いたのは4時、さっそく一浴一杯、ぶらぶらそこらたりを歩いたことである。
 この湯ノ平といふところは気に入った、いかにも山の湯らしい、石畳宿屋、茶屋、湯坪、料理屋、等々もおもしろいね。・・・・

あんたのこと考へつづけて歩きつづけて

秋風の旅人になりきっている


他6句

人生の幸福は健康であるが、健康はよき食慾とよき睡眠との賜物である、私はよきーむしろよすぎるほどの食慾に恵まれているが、どうも睡眠はよくない、いつも不眠或は不安な睡眠に悩んでいる、睡られないなどはまことに横着者だと思うのだが。
 此温泉はほんとうに気に入った、山もよく水もよい、湯は勿論よい、宿もよい、といふ訳でよく飲んでよく食べてよく寝た。ほんたうによい一夜だった。ここの湯は熱くて豊かだ、浴して気持ちがよく飲んでもうまい、茶の代わりにがぶがぶ飲んでゐるようだ、そして身心(ママ)に効きさうな気がする。など、すっかり温泉気分になってしまった。

11月10日 晴。時雨—初霞。滞在。宿は同宿
山霧が早く暮れて遅く明ける、9時から11時まで行乞、かなり大きな旅館があるが、ここは夏さかりの冬がれで、どこにもあまりお客さんはいないらしい。
 午後は休養、流れにはいって洗濯する、そしてそれを河原に干す、それまではよかったが日向癖でざっとしぐれてきた、私は読書してゐて何も知らなかったが(略)宿の娘さんが、そこまで走って行って持って帰って下さったのは、じっさいありがたかった。ここの湯は胃腸病に効験いちじるしいそうなが、それを浴びるより飲むのださうな。田舎からの入浴客は一日に5升も6升も飲むそうな、土着の人も茶の代用としてがぶがぶ飲むらしい、私もよく飲んだが、もしこれが酒だったら・・・と思ふのも上戸の卑しさからだろう。
(略)
暮れてから、どしゃ降りとなった、初霞が降ったさうな、もう雪がくるだろう、好雪片片別処に落ちずー、
今夜は飲まなかった、財政難もあるけれど、飲まないでも寝られるほど気分がよかったのである、それでもよく寝た。
 くり返していふが、ここは湯もよく、宿もよかった、よい昼であり、よい夜であった。(それでも夢を見ることは忘れなかった)

しぐるるや人のなさけに涙ぐむ

ひとりあたたまってひとりねる


等10句

11月12日 晴。曇。初雪。湯布院湯坪。筑後屋(25、上)
 9時近くになって草履をはく、ちょっと冷たいもう冬だなと感ずる、感ずるどころじゃない途中ちらちら雪が降った。南由布院、北由布院、この湯の坪までは四里、あまり行乞するやうなところあなかった、それでも金十四銭、米七合いただいた。
 湯の平の入口の雑木林もうつくしかったが、このあたりの山もうつくしい。四方なだらかな山に囲まれて、そして一方はもくもくともりあがった由布岳—所謂豊後富士—である、高原らしい空気がただよってゐる。由布岳はいい山だ、おごそかとしたしさとをもってゐる。
中腹までは雑木紅葉(そこへ杉か檜の植林が割り込んでゐるのは経済的と芸術的との相克である、しかしそれはそれとしてよろしい)中腹からは枯草、絶頂は雪、登りたいなあと思ふ。
此地方は驚くほど湯が沸いている、至る所湯だ、湯で水車のまはっているところもあるさうな。
 由布院といふところはー南由布院、北由布院と分かれてゐるが、それは九州としては気持のよい高原であるが、ここは由布院中の由布院ともいふべく、湯はあふれているし、由布岳は親しく見下ろしてゐる、村だからそこここにちらほら家があって、それがかなり大きな旅館であり料理屋である、−とにかく清遊地としては好適であることは疑はない。山色夕焼時といふ、私は今日幸いにして、落日をまともに浴びた由布院岳を観たことはほんとうにうれしい。
 この宿は評判だけあって、気安くて、親切で安くてよろしい、殊に、ぶぐぶぐ湧き出る内湯は勿体ないほどよろしかった。

寝たいだけ寝たからだ湯に伸ばす
等7句

この日記の直前の11月8日の湯ノ原温泉(ここは私の曾祖母の出身地)の日記の一節を紹介してこの記事を終わります。

とにかく私は入浴するときはいつも日本に生まれた幸福を考へずにはゐられない。入浴ほど健全で安価な享楽はあるまい。

種田山頭花(wikipedia)

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