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M男さんの映画評論、今回は先日のアカデミー賞で外国語映画賞を受けた「 善き人のためのソナタ」です。

ドイツの秘密警察から日本の公安警察に思いが及んでいます。

「約5千人いると言われる現代日本の諜報機関、公安警察(*)の情報収集能力はシュタージをはるかに超えているに違いない。」とか

私もサダムフセイン治世下のイラクで秘密警察を付けられたことがある。
なぜわかったかと言うと自分がお前の担当だとクルド人に教えられたから・・・
(イラクの話は前に行った講演のペーパーがありあます。)

日本の誰かにお前の担当だと言われる時代にはしたくないな・・

では・・・・

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シネマぶらり観て歩き(97)

善き人のためのソナタ
                                     ドイツ

1984年、冷戦下の東ベルリン。ドイツ民主共和国の国家保安省(STASI、シュタージ、秘密警察)に勤めるヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)は、文化部長から劇作家のドライマン(セバスチャン・コッホ)と舞台女優である恋人のクリスタ(マルティナ・ゲデック)が反体制的である証拠を手に入れるよう命じられる。成功すれば出世が待っている。早速、ドライマンの部屋に盗聴器を仕掛け、屋根裏から二人の言動を監視する。ある夜、ドライマンの誕生パーティが開かれ、多くの友人が集まった。国家から芸術活動を禁止されていた演出家イェルスカもそのなかの一人だった。彼は、ドライマンに誕生祝いとして楽譜「善き人のためのソナタ」を送る。
クリスタの初舞台を観て一目ぼれしたヘムプフ大臣は権力を利用して、関係を持つ。クリスタは大臣とドライマンの間で悩む。一方、盗聴を続けるうちにヴィースラーに変化が起こった。彼は国家を信じ、一筋に仕えてきが、盗聴器を通して知る「向こう側」の世界が彼のなかで閉じられていた感覚を開かせていった…。
ドイツといえば思い出すのは1989年のベルリンの壁崩壊である。群衆がブランデンブルク門そばの壁に上り、歓喜の声を上げながらハンマーを打ち下ろす映像が今でも脳裏に浮かぶ。この年は内外にて様々な事件が起こった。1月に昭和天皇が死去し、元号が平成に変わった。4月には消費税(3%)がスタート。6月に天安門事件が発生し、テレビで多くの日本国民が広場の学生に向かって発砲する中国人民軍を見た。同じ6月、戦後最大のスター、美空ひばりが死去。12月にはルーマニアのチャウセスク首相が公開処刑された。こうした事跡を改めて振り返ると一つの時代の区切りであったことが分かる。時代はとうに独裁権力による支配の終焉を告げていたのだ。
東ドイツは翌1990年、西ドイツに吸収される形で統一される。しかし、東ドイツの秘密警察シュタージについては、長い間タブー視されていた。17年を経て、ようやく人々は冷静に見つめることができるようになり、作られたのが今作品である。
付けられたタイトルはロマンスのような甘美な響きを持つ。抱くイメージはヒューマンドラマである。しかし、映画を観ての印象はサスペンス小説の読後感に似ている。観客をある種の怖さが襲う。しかし、その向こうに仄見えるものがある。絵で言うと一面をダークグレー色に厚く塗り込めたキャンバスの下から明るい色が滲む抽象画の世界だ。
ヴィースラーは二人の監視を続ける。盗聴器から聞こえてくる自由な会話、二人の間に揺れる愛、心が洗われるような「善き人のためのソナタ」の旋律。彼はある日、ドライマンの部屋からブレヒトの詩集を盗み出し、読む。すべてが、新鮮な驚きであった。徐々に彼は文学や劇や音楽の世界に魅かれ、「社会主義の敵」達が憎むべき人間ではないことを知っていく。
しかし、観客はこうしたヴィースラーの心の変化を台詞やそれと分かる行動で知ることはできない。映画の宣伝に使われているほどにこの部分は際立って描かれてはいない。観客は彼の心の変化を微妙な顔の表情から推し量ることになる。そう、彼は諜報機関のプロなのだ。真実は深く心の奥に仕舞い込まれている。そして、見物は上司に気づかれないようにどうやって二人の安全を保つか、寡黙な男とシュタージの(?)知恵比べだ。互いに相手の手の内を知り尽くしたプロ同士のたたかいは緊張とスピード感に満ちており、最後まで手に汗を握らせる。サスペンスとハードボイルドが融合したようなこの映画は第一級のエンターテイメントにも仕上がっている。
138分間の殆どが東独崩壊前のドラマで占められているが、観客が少しでもホッとするのは崩壊後を描くラストの一コマである。
主役を務めるウルリッヒ・ミューエは女優である前妻に10数年間、シュタージに密告されていたと言う。統一後の情報公開制度で知った。監視社会は密告によって人間を互いに疑心暗鬼に陥らせ、怯えさせ、精神文化の自由な発展を阻害する。これは過去の東独の話ではなく、体制を問わずどこでも起こりうることである。約5千人いると言われる現代日本の諜報機関、公安警察(*)の情報収集能力はシュタージをはるかに超えているに違いない。
 監督はフロリアン・ヘンケル・ドナースマルク。2007年アカデミー外国語映画賞受賞。

                                  (M男)
* Wikipedia「公安警察の問題点」
「捜査の段階で通信傍受(「盗聴」)やいわゆる盗撮を行っている可能性が指摘されている。公安捜査における盗聴・盗撮はかなり昔から行われており、人権侵害として訴えられる場合も多かった。最近では通信傍受法が制定されたので、警察が捜査上必要な場合、通信傍受や盗撮は法的要件を踏まえたうえでならば合法とされている」

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