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2007年7月17日 (火)

サン・ジャックへの道

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M男さんの映画評論です。
今回はフランス映画「 サン・ジャックへの道 」です。

M男さんのコメントはいつもこんな風に深みがある。

 

人はタテ軸時間のなかでのみ生きている訳ではない。家族愛や友情、人の成長は経済効率とは関係がない。また、人の命には限りがある。だれでも、日常のいとなみのなかで喜びに出遭った瞬間に「時よ、止まれ」と思ったことがあるだろう。私たちは時々、時間を止めているのだ。

映画は人間にまとわりついたタテ軸時間を剥いで、内奥に潜む人間的自然(人間性)を浮かび上がらせる。そこには、もう一つの時間が流れており、もう一つの世界への入り口でもある。

さあ!

時間を止めよう。

タテ軸時間を剥ごう。

映画って本当にいいものですね。

さいなら さいなら さいなら


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シネマぶらり観て歩き(101)
               サン・ジャックへの道            
                                   フランス


険悪な仲の3兄姉弟が亡き母親の遺産を相続するため、旅に出る。兄のピエール(アルチュス・ド・パンゲルン)は会社経営と家庭のストレスで薬が欠かせない。頑固教師のクララ(ミュリエル・ロバン)は失業中の夫の分まで働かねばならない。弟のクロード(ジャン=ピエール・ダルッサン)はアルコール依存症で家族にも見放されている。3人はフランスのル・ピュイからスペインの聖地サンティアゴ(サン・ジャック)まで1500kmの巡礼路を一緒に歩くことになった。
 このツアーには以下の同行者がいた。ツアー・ガイドのギイ、楽しいウォーキングと思って参加した若い女の子、エルザとカミーユ、カミーユを追って参加したアラブ系移民の少年サイッド、サイッドにだまされてイスラムのメッカへ行けると思って参加したラムジィ、物静かな女性マチルド。この9人の男女が、それぞれの思いで歩き続ける…。
フランス版お遍路の旅。典型的なロード・ストーリー。観終わった後、こころが温かくなる。
今の日本、周りにものは溢れているが、暮らしはぎすぎすして幸せ感が薄い。フランスも似ており、経済的停滞、移民問題、EUとの関係など悩みは深い。2006年3月のCPE(初回雇用契約)制度をめぐる顛末は記憶に新しい。これは若年層にかぎり契約後、2年以内は自由に解雇できるという法律だが、学生、労働者が猛反発。フランス全土でデモ行進を繰り広げ、終には施行中止に追い込んだ。
2007年5月にはアメリカ的新自由主義をかかげるニコラ・サルコジ氏がフランス大統領に就任した。国民は閉塞した状況の突破を彼に託したのだろう。右派の大統領はフランスでは珍しい。こうしたお国事情を背景にこの作品を観るといろいろと考えさせられるものがある。
映画はのっけから兄姉弟3人の罵り合いで始まる。いつもイライラし、何かと他人を見下すピエール。荷物は何一つ持たず参加して周りに依存する呑んべぇのクロード。威圧的で喧嘩っ早いクララ。3人以外の参加者もそれぞれ会社や家族のしがらみをずっしり背負っている。おまけに、ひたすら歩く旅だ。日頃、歩き慣れない体に大きなリュックは拷問に近い。スクリーンから放たれる不快感が館内に充満し、観客は映画の選択を間違ったかなと思ってしまう。
しかし、ツアーが進むにしたがって、集団に変化が起こる。ぎすぎすした関係にまるみが出てくる。
ラムジィはメッカにいくためにツアーに参加している。彼は「失読症」(失語症ではない)であり、字が読めない。旅のなかで克服し、母親に喜んでもらうことを楽しみにしている。ガミガミ教師クララはサイッドからラムジィに読み方を教えてくれと頼まれるが、冷たく断る。しかし、カミーユがいい加減な教え方をしているのを見て、みんなに隠れて教え始める。丁寧に、愛情一杯に。長い教師生活で忘れてきたような時間だった。
行き先がメッカではないと気落ちしていたラムジィは字が読めるようになり、旅や生きることに意欲的になっていく
もっとも変わったのはピエールだろう。彼は旅を始めてまもなく、重いリュックに閉口して、要らない荷物を棄てる。その時、常備薬まで棄ててしまい、パニックに陥るのだが、道中、何事も起こらなかった。ウォーキングによる体質変化や旅仲間との精神的つながりが薬を不要にしたのだろう。
旅はピエールの心をも変化させた。ツアーは宿の予約をしていない。ピレネーを越え、スペインへ入ったある日、修道院に宿泊を頼んだがイスラム系であるラムジィたちの宿泊を拒否された。それまで、差別的な言辞を吐いていたピエールは怒り、自腹をきって全員をパラドール(ホテル)に連れていった。彼は人一番勤勉な会社人間の重たい鎧を脱ごうとしていた。実は彼だってアルコール依存症の妻で悩んでいたのだ。
彼らに起こった変化はなんだろうか。最も変わったのは気持ちの“ゆとり”であり、そこから来る他人を思いやる態度だろう。ツアー開始時、参加者はそれぞれ世間の垢にどっぷりと浸かっていた。ピエールは会社経営者であり、「何時までに、何を、どうする」という西洋的タテ軸時間のなかで生きている。この世界の共通言語は経済効率であり、人と人の関係もその言語に置き換えられる。そして、経営はゴーイング・コンサーンと言われるように、永遠に続くことを前提にしている。
しかし、人はタテ軸時間のなかでのみ生きている訳ではない。家族愛や友情、人の成長は経済効率とは関係がない。また、人の命には限りがある。だれでも、日常のいとなみのなかで喜びに出遭った瞬間に「時よ、止まれ」と思ったことがあるだろう。私たちは時々、時間を止めているのだ。
映画は人間にまとわりついたタテ軸時間を剥いで、内奥に潜む人間的自然(人間性)を浮かび上がらせる。そこには、もう一つの時間が流れており、もう一つの世界への入り口でもある。       
ロード・ストーリーは大きな事件が起こらず、映画的要素を発揮しにくいので作品づくりが難しい。しかし、初めはバラバラだった9人が泣き笑いし、気持ちが一つにまとまっていく運びには無理がない。
監督は「赤ちゃんに乾杯」や「女はみんな生きている」のコリーヌ・セロー。ル・ピュイからサンティアゴに至る山岳の風景が美しく、客席に爽やかな風が吹きぬける。そして、旅の終わりの意外な結末は観てのお楽しみに。                                                  
(M男)

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「M男の映画評論」カテゴリの記事

コメント

京都さん
コメントありがとうございます。
しかし意味が良くわかりません。
わかるようなご説明をお願いします

全て組合のせいにするのはためにする宣伝だと思います。
すべて自治労の責任やろ 当たり前やないかい、あほが!

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