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2007年10月16日 (火)

湖水地方の自然はわが身と一体(改)

少し紹介が長すぎると指摘があったそうで短くし、連番も間違っていたので訂正しました。

M男さんの映画評論です。
今回は「ミス・ポター」
すでにこの映画については私も書いていますが私が言い足りなかったことを書いています。
それは

芸術を愛し、自然を愛するが、単に愛好家ではない。それを妨害する者とは断固としてたたかう、繊細にしてスケールの大きい「革命家」ともいえる彼女の生き様、葛藤が映画でもう少し描かれていたら、さらに深みのある作品になっただろう。  人に優しい人は自然に優しい。自然を大切にする人は人に優しい。もし、彼女がノーマン死後、世捨て人となってコテージで暮らしていたら、今日の湖水地方は日本で見るようなけばけばしい観光施設で埋め尽くされていたことだろう。ビアトリクスにとって湖水地方の自然はわが身と一体だった。1943年に彼女は亡くなるが、遺言には遺骨を湖水地方に散骨すること、その場所は「絶対、秘密にしておくこと」とあったそうだ。

ということです。
いかに彼女が湖水地方の自然の保全に貢献したかは湖水地方に行けばわかります。

記事詳細は次に

シネマぶらり観て歩き(104)
  ミス・ポター
                                  アメリカ

1902年のロンドン。上流階級の家庭に育ったビアトリクス・ポター(レニー・ゼルウィガー)は、子供の頃から夢であった絵本を出版しようとしていていた。主人公は、青いジャケットを着たうさぎのピーター。出版を持ちかけたウォーン社は乗り気ではなかったが、末っ子ノーマン(ユアン・マクレガー)がビアトリクスの絵を気に入り、彼の最初の仕事になる。絵本はたちまちイギリス中の子どもをとりこにした。二人は自然に愛し合うようになったが、ビアトリクスの両親は労働者階級との身分違いの結婚を許さなかった…。
ヨーロッパ旅行から帰国して気付くことがある。湿った空気、ピカピカに光る車、うつむいて歩く女性。それ以上に感じるのは景観の違いだ。車や電車で移動すると、どこまでも無秩序な家並みやビル街が続く。遥かな歴史を蓄積したヨーロッパの街並みの空気を吸った旅行者はそれを体内に留める間、雑然とした日本の景観に溜息をつくことになる。日本の建物は安直に建てられ、期限が来ると壊される。ヨーロッパでは古い建物を繰り返し、修復して使う。彼らは悠久の歴史とともに暮らしている。
一時、イギリスに憧れたことがある。1993年に湖水地方を旅した。宿だけを予約しての旅だったので、よく歩いた。ハプニングもあったが親切も受けた。その年はビアトリクス没後50年(1866〜1943)ということで彼女が後半生を送った湖水地方は各国からの観光客で賑わっていた。
私には子どもがいないので、「ピーター・ラビット」のお話を読んでやったことはない。私にとってビアトリクスは絵本作家であるよりは「ナショナル・トラスト」で湖水地方の自然を残した自然保護運動家であった。トラストに寄付するワッペンを求め、8年間自家用車に貼っていた。そのような視点で作品を観たということを断って感想を述べたい。
映画はビアトリクスの前半生を描く。中心はビアトリクスとノーマン・ウォーンのラブロマンスと言っても良いだろう。(もっとも、1905年、ノーマンは婚約した1ヶ月後、リンパ性白血病で死ぬので悲恋に終わるのだが)
映画はリアリズムを基調にしつつ、ファンタジー的要素を加味している。うさぎのピーターやあひるのジマイマがアニメとなって、本から飛び出し、ビアトリクスと話すあたりはディズニー映画を見るようだ。(監督は「ベイブ」のクリス・ヌーナン)ポター家の晩餐会に招かれたノーマンをビアトリクスに接触させまいと見張る付添女にノーマンが酒入ドリンクを飲まして酔い潰す場面は思わず笑いを誘う。こうして、あっという間に終わり(93分)、観客はほのぼのとした余韻に包まれる。
しかし、何か違和感が残った。ビアトリクスが遺言で残した広大な4,300エーカーの土地と可憐なビアトリクス像が頭の片隅で小さな不整合を起していた。イメージの差を埋めるため、数冊の本を読んだ。
それらのサマリーだが、すこし、彼女の時代背景を紹介しよう。
父ポターは綿織物で一財を築き、法廷弁護士の資格をもっていたが豊かな資産のおかげで働く必要がなかった。労働者階級が市民権を拡大する途上にあったとは言え、イギリスは階級の国である。彼女はヴィクトリア時代の封建的な空気が色濃く残る時代に上流階級の娘として育てられた。当時、貴族階級の子弟は学校には通わず、お抱えの家庭教師が学問を教えた。当然、同世代の友達はいない。終生、気持ちが通うことがなかった厳格な母は「黴菌がうつる」と友達とつき合うことを禁じたそうである。幽閉されたような少女時代、6才離れた弟以外に友達と言えばうさぎやカメ、こっそり持ち込んだとかげなどの動物たちだった。彼女の絵の実力は彼らをデッサンすることで磨かれた。やがて、娘となり、両親は上流階級の子弟との見合い話をもちこんだが、心を動かされる男性は現れなかった。
36才になり、彼女は夢だった子ども向け絵本「ピーター・ラビットのお話」を出版する。本は瞬く間にベストセラーとなったが、「職業」をもったビアトリクスに両親は複雑な思いを抱いた。さらに、やっかいなことが起こった。ビアトリクスは出版を手がけたノーマン・ウォーンと恋に落ちたのだ。両親は「商人」風情に娘をやれないと身分の違いを理由に反対した。あきらめないビアトリクス。しかし、1ヵ月後予期せぬノーマンの死が襲う。この時、ポターは39歳、少女のときめきとはおよそ異なった恋だったろう。彼女は悲しみを断ち切るように、新たな生活を求めてヒルトップの農場を買い、移り住む。
長い解説をお許し願いたい。映画では比較的、淡々と描かれているいくつかの「非常識」を示したかったからである。見合いを断り、結婚を自分の意思として貫いたこと。絵本作家として収入を得たこと。身分の違いを超えて婚約したこと。一人、家を出て、湖水地方に住んだこと。これらのことだけで、ビアトリクスは常識を打ち破っている。
この確固たる意思の持ち主はその後も活動が衰えることはなかった。ローンズリー牧師と出会い、ナショナル・トラスト運動に共鳴することになるのだが、1912年、ウィンダミア湖に当時としてははしりの水上飛行機が爆音を轟かしていることに怒り、飛行反対運動を起し、止めさせている。そして、翌年、湖水地方の購入を援助した弁護士ウィリアム・ヒーリスと結婚。しあわせな暮らしのなかでも無医村である湖水地方に「看護協会」を設立して、看護師を常駐させたり、牧羊の品種改良に取り組み、受賞したりなど常に社会とかかわっていた。
芸術を愛し、自然を愛するが、単に愛好家ではない。それを妨害する者とは断固としてたたかう、繊細にしてスケールの大きい「革命家」ともいえる彼女の生き様、葛藤が映画でもう少し描かれていたら、さらに深みのある作品になっただろう。
 人に優しい人は自然に優しい。自然を大切にする人は人に優しい。もし、彼女がノーマン死後、世捨て人となってコテージで暮らしていたら、今日の湖水地方は日本で見るようなけばけばしい観光施設で埋め尽くされていたことだろう。ビアトリクスにとって湖水地方の自然はわが身と一体だった。1943年に彼女は亡くなるが、遺言には「遺骨を湖水地方に散骨すること」、その場所は「絶対、秘密にしておくこと」とあったそうだ。
                                     (M男)
参考文献 「素顔のビアトリクス・ポター」(ヘリザベス・バカン著、吉田新一訳、絵本の家)
     「ビアトリクス・ポター―描き、語り、田園をいつくしんだ人」(ジュディ・テイラー著、吉田新一訳、福音館)
     「ピーダーラビット紀行」(新井満、新井紀子著 河出書房新社)


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コメント

junさん
こういう書き方があってもいいのではないですか?
ネタバレありと書いた方がいいのかもしれませが・・
感想文に法則はないと思います。

「シネマぶらり観て歩き」は本になるそうです。
このブログでは一部しか紹介していませんので本が出たら買ってあげて下さい。

お互いにM男さんのように出版できるようなものを書きたいですね。

>このコラムはM男さんのもので私のものではありませんのであしからず・・・

存じております。  が!
整理しても、この長さですか・・・?
粗筋紹介は短めに!
感想や思いをネタバレしない程度に書くのが、この手のレビューの常識です。
ノーマンと結婚に至ることや、そのノーマンガ早逝することなどをレビューで書いてはいけません。
これからどうなるかの展開を楽しむのが小説や映画の醍醐味なのです。
肝心なこと(それは、見た人が最も話したがることでもありますが)は書かない!
 これ常識
今から見る方たちが興ざめしてしまいます。
尤も、この映画は大抵の映画館では終了しているかも知れませんが・・・

M男さんに改めて「ネタバレ禁止!」の件、よろしくお伝えください。

JUNSKY さん
このコラムはM男さんのもので私のものではありませんのであしからず・・・

レビュー長すぎ!

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2007年9月23日 午後2時から ミス・ポターを見た。 シネ・マイレージで無料鑑賞。 出会いと別れで涙する場面もあるにはあったが、久々に心温まる映画だった。 「ミス・ポター」は、映画の原題そのまま。 ... [続きを読む]

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