「続・夫婦善哉」の未発表原稿
行きくれてここが思案の善哉かな
1月27日のETV特集は面白かった。
禁じられた小説~7千枚の原稿が語る言論弾圧~という番組タイトルだった。
去年、鹿児島の文学館で、作家・織田作之助の代表作『夫婦善哉』の続編、『続・夫婦善哉』の未発表原稿が見つかった。
その小説の舞台は私の父親の出身地大分県別府市
柳吉と蝶子のモデルは、作之助の次姉千代夫妻で、下寺町に開いたカフェ「サロン千代」が道路拡張で立ち退きとなり、別府で小料理屋をしていたという。
従って、作之助としては当初からの予定通り展開だったのだろう。
問題は夫婦の日常生活を描いただけのこの必ず売れたであろう続編小説が何故掲載されなかったのか?
それはこういうことのようだ。
「夫婦善哉」は、同人雑誌「海風」(昭和15年4月)に掲載の後、改造社の第1回「文芸推薦」受賞作品として、昭和15年7月号の「文芸」に再掲された。この経緯からすれば、続編も同誌に掲載されるのが自然であるが、その形跡はない。つづいて作之助は同誌9月号に短編「六白金星」を送るが、検閲にかかって削除となり、そのため頁が「129頁から162頁へ飛んで」(「編集後記」)しまうという結果になる。さらに、単行本『夫婦善哉』(昭和15年8月創元社)も、風俗紊乱を理由に編集者が警告を受けている。これらをあわせてみると、続編の掲載はむずかしかったであろう。
検閲は自己規制となって文学を蝕んで行った。
そして冒頭の俳句に戻る
法善寺横町の「正弁丹吾亭」の前に、「行きくれてここが思案の善哉かな」と記した作之助の句碑が立っている。 「続夫婦善哉」の出現で「行き暮れて・・・」の意味がにわかに表情をかえるようだ。映画や舞台も含めて、人々の記憶に生きている「夫婦善哉」のイメージは、この原稿によって、間違いなく変わるだろう。続編が変える「夫婦善哉」像より
この俳句には深い思いがあったのだろう。
俳句は奥が深い。
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以下ニュースより
去年、鹿児島の文学館で、作家・織田作之助の代表作『夫婦善哉』の続編、『続・夫婦善哉』の未発表原稿が見つかった。戦争中に執筆されながら、雑誌への掲載を見送られ、埋もれていたと見られる。戦時下の夫婦の日常生活を描いた『続・夫婦善哉』。それがなぜ、掲載されなかったのか?
織田の原稿は、雑誌“改造”の出版社に寄せられた7000枚の原稿の中にあった。
大正8年(1919年)に創刊された“改造”は、急進的な社会批評と人気作家の登用で売り上げを伸ばし、日本を代表する総合雑誌となる。しかし、出版法などによる明治以来の検閲制度の下、さまざまな形の言論統制を受けた。小説も例外ではなかった。
「当局の忌諱」に触れた原稿は掲載中止が命ぜられる。編集者は雑誌自体の発売禁止を避けるため、文章の一部を×印や空欄で置き換えた「伏せ字」を施した。それでも発売後にページごとの削除を命じられる「切り取り処分」を受けることもあった。昭和19年には改造社自体が自主廃業に追い込まれる。
織田の『続・夫婦善哉』を含む“改造”の7000枚の原稿は、そのほとんどが検閲前の生原稿。問題の箇所に何が書かれていたのか、何がどう削除されたのかがそこから明らかとなる。
日本が戦争へ向かう中でエスカレートしていった言論統制。
番組は7000枚の原稿を分析。編集者たちの証言や手記と共に言論統制の実態を浮かび上がらせる。
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