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2012年1月26日 (木)

「続・続 歴史の中の短歌」を学びました。

現代短歌研究会で水野昌雄さんの「続・続 歴史の中の短歌」を学びました。
1年かけて学んできたこの学習会も次回2月が最終回、3月は水野昌雄さんをお招きし、4月からは「続 歴史の中の短歌」を学びます。
定例日は最終木曜日です。
場所はいずれも柏駅西口の喫茶店コンパル、時間は18時半からです。

今日の学んだ中から一首づつ紹介し、水野さんの夫々に対する紹介キーワードを拾います。
あまり歌壇的には有名でない一人でが多く、ネット上では殆んど関連情報を拾えませんでした。
私の知る人も多く自分が発信者にならなければならないと痛感しました。

では今日学んだ所です。


久保太郎歌集
立ち上り思いきり作業衣ビシと着る外面一面霜と氷だ

「近頃の歌壇では小才のきいたものや、鼻唄めく軽薄体、あるいは思想的居直りのようなものが大手をふっており、それだけこの一冊のもつ実直な一徹なる実直さは輝きを増している」

「確執」黒住嘉輝
様々の人生我にもありしならん 可能性という語を用いなば

「確執」なる題名の由来については、あとがきによれば啄木の「時代閉塞の現状」の中の言葉であると記されているが、(中略)この歌集が、強権への確執の伝統を生かすべく生まれていることの意義は大きい。(中略)
誰がなんといおうと、黒住調で、ふてぶてしく確執してゆくことでよかろう。まだ一度も会ったことはないが、三十年来の友人と思っているのがここにも一人いるのだ。

「オーロラは呼ぶ」実藤恒子
オーロラにからめとられて去年ひととせ会わざりしゆゑオーロラは呼ぶ

しっかりとした描写で、あり表現力である。新鮮な作者像だ。日常風物だ。そして何よりも滋味豊かだ。どこかの総合誌上で作品評価の基準として、「高い技巧」「新しい試み」「構成力」などをまじめに掲げ論じあっているのを読んだが、そういう眼しか持たぬ手合いにはこの、滋味・気品の味わいは理解できぬであろう。
高い技巧や新しい試みなど感じさせるようでは文学水準として低いものだ。そうしたことは感じさせずに平明・簡素にうるおい深く表現することが大切なのである。
それは単なる日常報告歌と異なるものであり、出来上がったものは読者の心に親しみを与えてくれるものとなる。そして気品。これは作ろうとして出来るものではなく、作者のにんを深く見る眼、やさしく暖かな心、さらには生き方
卑俗を越えた高貴なる精神等々があって自らにじみ出てくるものなのだ。
写実精神とは本来そうあるべきものであろう。

(確かに北原白秋は技巧的に見えるものはまだまだ技巧が足らぬのだと言ってます。)

「もがりぶえ」青木ゆかり
夫も子も神も持たざるうつしみのかるがるとゆく春の巷

この前「現代歌壇総覧」という本を見ていたらアララギのリーダーのひとりを「優れた韜晦の美学を身につけた作家」と記しているのを見て、アララギ内部からそういわれる作家もあることに興味深く思ったが、わが青木ゆかりに韜晦の美学などはない。逃げたりしない。曖昧化などはない。
人間としてやり切れない思いは沢山あっても、人間を信頼して生きることを貫いているのである。
苦渋はあっても、虚無には陥っていない。深渕の空しさはあっても、それだからこそ愛することを支えとしているのである。
こうした情愛の歌集として、この「もがりぶえ」は戦後短歌史上においても、大きな特色のある歌集といってよいと思う。

「砕けざる鉱石」沢田貞治
落石の音を聞きつつ寝むとする閉山の町足尾はわれの故郷

超然となる必要もなければ、逃避したりする必要もない。現実そのものを平明にとらえることが文学精神のほとばしりとなるような生活であり、作者であった。(中略)
短歌は文芸としての芸のおもしろさがものをいうのではあるが、その根底にあるのは作者の現実に対する姿勢であろう。この歌集「砕けざる鉱石」を通して、これだけ徹底しているのはそれだけで貴重なものだと思わずにいられない。

「河口のある風景」中下熈人
脆き部分曳きずるわれをむしろ愛し赤き落日に向かいて歩む

特にわたしがこの作者に愛着を覚えるのは、作品全体に流れるやわらかなリリシズムである。(中略)
こうしたやわらかな予情は、どれだけ屈辱を味わうとしても、この現実に堪えながら生活を愛してゆこうとする民衆の知恵ともいえよう。それは、いわゆる非合理主義に居直った心情主義や、刹那主義とは異なった、健康な生活感情のリズムといっていいのである。

「噴水」水本幸子
亡き父が祝詞をとなえし古机にいま読みてゆくtheCAPITAL

わずか一首の中にも地球全体の視野が生きているのである。いわゆる女流のおおかたが、幻想風な心象に傾斜しているのに比べてこの巨視的視点のもつ豊かさはなじみにくいかもしれぬが、現代人としては、もっとも自然な生きている息づかいがあると思う。ただ、この作者の本質はむしろきめの細かな色彩感にあるのかもしれない。

「海峡の海」水本幸子
かたつむりいのち光りてのぼりゆく雨あがりたる葉がくれのなか

右翼的な教祖であった父のもとに育ち、深く影響をうけつつ反芻し、職場の組合運動の中で新しい生き方を見出してゆくひとりの女性の思想史が、厳しい韻律感によってまとめられた「噴水」一冊は女流歌集として出色のものであった。(中略)
作歌活動はまったく途切れていたけれど、人々の前に水本さんが再び姿を現したのは1980年になって、金丸辰雄さんと結婚することが披露されたからである。

(以後金丸さんの事が書かれているが私には思い出がある、1975年位に八丁堀の勤労福祉会館で行われていた新日本歌人の東京歌会で私が金丸さんの歌を「プチブル的」と揶揄したところ同席されていた当時新日本歌人協会の代表幹事だった佐々木妙二さんに「君は分っているのかね」と叱責された事である。
ここで小林多喜二とも交流のあった佐々木先生に叱られた事は私には今や財産となっている。
又、福田穂さんと金丸辰雄さんの丁々発止のやり取りが面白かった。当時の東京歌会の司会は日向勝さんであり、他に故大野静子さん等が居た。

この本にある金丸節はこんな感じである。

自分で自分を責めさえしなければ係長であり委員長であり共済会長でさえある

今はこの歌の良さがよくわかる

金丸さんには歌会の後に我々夫婦を浅草に案内して貰った。啄木の墓にも案内してもらった。
懐かしい思い出である。
金丸さんの歌は歌集を入手予定なので来月にでも詳しく紹介します。)

「向かい風」関屋さよ子
並び立つ公孫樹みどりの生き激しその日田ブルを恋いつつ仰ぐ

自己顕示型や絶望型、あるいは末梢神経ばかり研ぎすましていたり、個人的名声にうつつを抜かしているタイプでは、現代の社会的変革活動など堪えていけないし、またいやおうなしに長い時期には脱落していくものだからである。

(関家さんは新日本歌人佐賀支部の顔であり、今年は選者にもなって活躍されている。)

以上です。

来月2月23日で最後です。
「戦後埼玉万葉集」 「坪野哲久論」山本司 「旅は終わらず」水上良介 「木の芽のひかり」下村すみよ  「鳥の窓」秋元直子

3月29日には著者の水野昌雄さんをお招きします。

場所はいずれも柏駅西口の喫茶店コンパル、時間は18時半からです。

今回のテキストはこれです。


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