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「炎」第33号を読んで

短歌同人「炎」は今年で創刊26年になる。私は創刊2号から参加している。
新日本歌人協会の若手で作った同人誌でメンバーはあまり変化がないのでここも高齢化はしているがほぼ同じメンバーで推移している。

33号には8人が寄稿している。
私以外は歌以外に歌論も展開している。
順番に紹介する。

1.檜葉奈穂さんの久々湊盈子論(五)
既に「ミューズへの挑発」を出版している檜葉さんの次なる歌論集あです。
今まで陽の当たらなかった厨の歌に焦点を当てて分析的に書いている。
こんな歌です。

刺す焙る殺す吐かせる削ぐ締める荒事ならで厨の言葉
一塊の肉を煮ており草を食み空を仰ぎし記憶ある肉

又こんな姑への晩歌も紹介している。

「レナードの朝」という嘘 七年をかけて強ばり果てたる四肢は

「レナードの朝」は30年に及ぶ昏睡から醒め治癒する映画だが7年の昏睡から醒めない姑を前に「レナードの朝」は嘘だと叫ぶ久々湊盈子さんを優しくみている。

2.知ることは愛することー取材の楽しさ

下村すみよさんは取材する喜びを書いている。
新井冨士重氏の事を丁寧に取材してる。
新井は1911年埼玉県児玉郡大沢村(今の美里町)の出身で村長もやっている。
歌集「陣見の空」を発見しその序文を足立公平が書いていることも発見している。
一貫した自由律短歌の読み手でこんな赤木健介の名前が出て来る歌もあるという。

自転車で迷路のような所まで走った
いまも赤木健介氏らが住む川越の街

下村さんは埋れていた歌人を再発見され皆に見せてくれたと思う。

他に美里町の万葉歌碑の研究もされている。

こういう風に自分が住む町の文化人を発掘する活動はその人しか出来ない事であり貴重であると思う。

取材についてこう纏めている。

取材によって自分自身の発想の限界を飛び越える、これこそ私が今回の取材によって感じた楽しさであった。そしてこの楽しさは知る楽しさはであり、知ることはその対象への愛を深めてくれる。当たり前のことのようであるが私には大きな発見であった。

3.藤田幸江小論ー片翼の天使ー

柳原晶さんは1994年に短歌を始めたという歌人に焦点を当てている。
こんな若いお母さんの新鮮な歌がある。

子の好きな星形にんじん夢添へて今夜のメニューはシチューに決める

母への愛しさが現れている歌としてこれが挙げられている。

温もりに全て委ねて母体へと還るがごとく湯につかりをり

幼き日に別れた父への複雑な思いが具体を避けた表現でされていると言い挽歌の最後にはこの歌をあげている。

ハイライト供へし夕べ亡き父のマッチ擦る音微かに聴こゆ

4.険しい道を踏み越えて(1)-千葉東葛地方の民主的な文学者たち

この文で藤田貴佐代さんは詩人城侑を紹介している。
ここでは二頁に三つの詩が紹介されている。
きっと長い連載となることだろう。

5.新日本歌人協会の民主的短歌運動の足跡をたどってー4

藤田貴佐代さんのもう一つの連載である。
1953年には全国30箇所で啄木祭が行われているというのには驚いた。
これは啄木没後40年に当たり「啄木祭を国民運動に」という新日本歌人協会の方針で全国に渡辺順三や赤木健介や信夫澄子らが出かけて行って他の団体と共催で啄木祭を行っている。
(震災に関する歌人へのアンケートで新日本歌人は存在感を示しているが単なる結社ではなく運動隊としての長き、良き伝統を感じさせる。)

6.続・坪野哲久論(21)ーその反逆と美への詩魂ー

山本司さんの長期連載である。
前の連載は「初評伝・坪野哲久」として纏まり日本歌人クラブ評論賞も受賞している。
ここでは歌論なので多くの歌を紹介し解説している。
2首のみ紹介しておきます。

蟹の肉啖へばあこがるる生まれし能登の冬潮の底
荒涼たる死の豫兆におびえずときみひきつれて今日に至れりき

7.1首選
同人の歌を1首ずつ紹介します。

翔ぶための風と思いて受けてきし試練の風の止むことはなく
藤田貴佐代
前後左右影あるかぎり命あり炎天のもと影の短し
山本司
地震のことまして原発のことなどは知らず餓死したり牛や豚たち
大江初枝
白菊のひと枝机上に置きし時たまゆら寄りゆく孤独の心
柳原晶
死の灰を地下にうずめて計画をいかに思うや ねえむムーミンよ
下村すみよ
渇筆の上に重ねて書く文字のひりひりとして秋の心は
檜葉奈穂
木の葉なく切られし欅万歳す子ども風邪引くような形に
大津留公彦

伏屋和子さんは今号から「母親」という小説を連載開始した。
今後の展開に期待しよう。

以上です。
今後も年二回発行のこの雑誌の感想文を掲載したいと思います。

炎は一部千円で販売もしてます。ーバックナンバーもあります。
申し込みはこちらまで
kimihiko_ootsuruアットマークyahoo.co.jp
(アットマークを@にして下さい。)

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