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2013年6月12日 (水)

「新日本歌人」2013年6月号を読んで

「新日本歌人」2013年6月号を読んで

十三回目の「新日本歌人」誌の感想文です。
今回は次の8つについて書きます。

1.10首選
2.ピックアップ歌人
3.読者歌壇から
4.啄木コンクール発表から
5.石川啄木と杉村楚人冠(三)(碓田のぼる)
6.協会とともに六十余年<歌と時代と協会と>(六)(田中収)
7.短歌時評 「大学では、今」(有村紀美)
8.全国幹事会報告から

1.10首選
病む老いの無惨見るともいのちありなおいくばくを生きてゆくべし
p6 山形 斎藤武蔵
君と来た「学生街の喫茶店」饐えた匂いのあの日を思う
p13 大阪 辻井康裕
わが国は「慰安婦」問題他人ごと記憶に残せと他国で決議
p38 埼玉 古畑幸子
播磨灘を朱に染め音なく没りゆく陽ゆえなき哀しみ胸浸しくる
p42 兵庫 安武ひろ子
共に暮らした五十年
今、あなたに送る言葉はただ二つの
ありがとう!
ごめんなさい!
p61. 神奈川 相澤和子
太い指凛とした眉傘寿にして、
「原発零に」と言う
ー肩を抱く。
p63 神奈川 清水鉄次郎
うぐいすがないてますねと詩のような挨拶を受く今朝の散歩で
p96 埼玉 飯ケ谷るみ
君とわれ かく書きみればつくづくと「と」にて繫がりまた隔てられ
p97 千葉 伊藤青
厳寒に耐えて桜は咲くものと檄文書きゆく敗訴の友に
p98 東京 稲邑明也
平安の夜の闇にいてわれが負うこのかなしみの刃はとがず (特選)
p99 碓田のぼる

2.ピックアップ歌人
毛先より雫の胸につ・・・と落ちてまだオンナだと思う湯上り
p13 福岡 田村柚
題は「つ・・・」
この題には参った。
実年齢は存じないが一連の歌に若々しさが満ち溢れている。

3.読者歌壇から
春の日の温む机に改憲案鱶(ふか)の目ん玉ぎろりと動く
p107 山形 畝博
鱶が唐突ではあるがぎろりと動いた目ん玉の先が改憲案だというのが不気味で改憲案の気持ち悪さを共有できる。

4.啄木コンクール発表から
若い人の歌に感動した。
私は「恋人ごっこ」と「十九歳」を推す。

佳作のお二人と最終選考に残った五人の歌から一首と名前と題を紹介します。
一言も付けます。
佳作
荒るる手にクリームたんねんにすりこみぬ今日も三百冊の本整理して
p21 杉山多恵 (指のかじかむ)
学校図書館のパート労働が短歌の形でリアルに表現されている。
プラカード持ち寄りきたる母と子をデモの隊列優しく包む
p23 内田賢一 (芽吹きしもの)
歌を作り始めて二年とは思えない。身のまわりの事が表現力豊かに歌われている。
我が胸にヒットラー棲めりダウン症の吾子をゆえなく疎んずる日あり
p24 青木英夫 (ダウン症の吾子)
重いテーマでの連作は訴えるものがある。二十首であればこういう形でありたい。
亡き君を思い出してる遊園地よく似た声に振り向けば、負け
p24 澤邊裕栄子 (恋人ごっこ)
啄木の歌を思い出させる。若い人にしかできない感性と表現とテーマだ。
傾ぎゆく世とはかつてもかくありき歴史にそむく轍踏ますまじ
p25 高橋光弘 (草は萌え初む)
大状況を正面から歌い上げている。歌は必ずや作者の歴史認識を問う。
今いちど戦果をあげよの勅ゆえに今日ここに見る平和の礎
p25 長野晃 (平和の礎-復帰四十年の沖縄にて)
この勅が無ければ23万人の平和の礎は無かった。短歌は本質を一言で歌い上げる。
目に光る涙を見てもきっとまだこの鶯は恋を知らない
p26 道脇萌 (十九歳)
ここに並んだ19歳の少女の20首だけでも今年の啄木コンクールは満足だった。
(実は私も応募していたのですが最終選考にも残りませんでした。来年はせめて最終選考には残りたいと思います。これは小声のつぶやきです)

5.石川啄木と杉村楚人冠(三)(碓田のぼる)
昨日明治三十年生まれの世界最長老の日本の男性が亡くなったが啄木より11年後に生まれているので啄木と同世代の人はもうこの世には居ないという事になる。
私の曽祖母は啄木と同じ歳の生まれだった。私が結婚する時まで生きていた。
私が生まれてからも確実に時は動いている。
楚人冠の事は今回はさて置き碓田先生の言う啄木の歌の背景を幾つか紹介します。

啄木のこの歌は伊藤博文を暗殺した安重根への共感が伏せられている気配があるという。
誰ぞ我に
ピストルにても撃てよかし
伊藤のごとく死にて見せなむ
(作歌・明治43年9月9日夜)

大逆事件での処刑の4日前の明治44年1月20日に管野須賀子は23首の短歌を残している。
こんな歌が紹介されている。

やがて来む終の日思い限りなき生命を思いほほ笑みて居ぬ
強き強き革命の子が弱き弱き涙の子かとわが姿見る

啄木は明治44年1月26日に平出修に借りた幸徳秋水、管野須賀子、大石誠之助の獄中書簡を読んでいる。特に管野須賀子の分は選んで拾い読みしている。
そして「頭の中を底から掻き乱されたような気持ちで帰った。」と26日の日記にある。

明治44年6月10日前後に作られたという啄木のこの歌には管野須賀子のイメージがあるという。

やや遠きものに思ひし
テロリストの悲しき心もー
近づく日のあり。

もっと管野須賀子の歌や文を読んで見たい。

6.協会とともに六十余年<歌と時代と協会と>(六)(田中収)
田中さんの五冊の歌集から歌が紹介されていますのでそれぞれ一首づつ紹介します。

「夜の泉」(全て病気の歌)
結核と闘い抜くんだ
ぽたぽたつゆ落ちる 真っ赤なトマトに
かぶりつく 1954年
「扉」
麻酔さめぬ妻と
保育器の子と
かわるがわるみつめ、
一夜は過ぎた 1960年
「窓は新緑」
論文を書いている机に
「咲きましたよ」
妻がとってきて置く 1993年
庭の梅 二輪
「深夜の書斎」
かたときも ひとりではさびしく
二階の書斎に
本さがすそばに来ている妻よ 2005年
「春夜の門灯」
次回
(何年か前の順三忌で田中さんにお話をして頂いた事があるが、その時に奥さんから何度も電話がかかってきた事を思い出しました。)

7.短歌時評 「大学では、今」(有村紀美)
廃刊となった短歌新聞後継の現代短歌新聞に大学短歌会の紹介が連載で載っている。5月号で10回目である。
有村さんがこれを取り上げてくれて良かった。
ただこの紹介を全面的にするにはtwitterやfacebookの作品に触れなければならないがそれは皆さんに直接触れてもらいたい。
ここで紹介されている二つの歌の紹介にとどめます。

感情に名を一つづつつけながら外を眺めるスターバックス
京大短歌 阿波野巧也
みをつくしつくつくみをしとなく蝉の聲つと途切れて海があらはる
早稲田短歌会 家永楓

8.全国幹事会報告から
新たな人、特に若い人の獲得について議論が深まった会議だった。
報告と提案の中で啄木コンクールは50歳以下が多数で10代20代30代の応募が多かったのが今年の特徴と報告された。心強い限りである。
現在進めているホームページのリニューアルをはじめとしたIT利用の取り組みについて私の報告も掲載されている。
目覚しい会員・購読者の拡大をされた埼玉の秋元勇さんは欠席ではあったが会場で表彰された。
来年の総会までに1100名の新日本歌人にするように頑張りたい。

見本紙請求はこちらまでどうぞ→shinnnihonnkajinnsoshikibu@yahoogroups.jp
8月に変更予定ですが現在の新日本歌人のホームページはこちらです。→
http://www.geocities.jp/sinnihonkajin/


以上
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