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マスコミに載らない海外記事
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/
さんからの転載です。

オークランド大学法学部ジェーン・ケルシー教授から日本国会議員へのメッセージです。
氏はTPP交渉の今後について4つの可能性を予測している。

1.最初の、そして極めて可能性の高いシナリオ
は、政治家達が政治思想上の理由により、今年末までに強引にTPP協定を締結するというものです。これが実際に起こるには、相当大きな政治的圧力を要します。しかし、APECにおけるTPP閣僚・首脳会合の議長はアメリカなのです。オバマ大統領は他の交渉参加国の政治指導者達に対し、絶大な影響力を持っています。大企業ロビーは、急いで固めた妥協案では弱すぎると懸念していますがが、オバマ氏が、米連邦議会の承認が得られる協定しか受け入れないことは分かっています。


2.第二のシナリオは、政治合意には達するものの、一部の国は代償が大きすぎるとして撤退していくというものです。

マレーシア政府は、形ばかりの期限など設けるべきではないと主張し、いくつかの事項において交渉の余地はないとの立場を示しました。マレーシアはアメリカとの自由貿易協定交渉の早い段階において、アメリカの要求に譲歩することを拒みました。TPPにおける政治的・経済的な代償が大きすぎるということになれば、マレーシアは再び同様の態度を取るでしょう。

 

3. 第三のシナリオは、いくつかの技術的課題が未解決であるにも関わらず、首脳陣が枠組み合意に達したかのように取り繕うというものです。

それは面目を保つために他なりません。交渉は2014年に入っても継続し、各国政府は4つの重要な章に加え、繊維と農業の物品市場アクセスに関して自国の立場を固持することでしょう。そうして、WTOドーハ・ラウンド交渉と同様にTPP交渉は鈍化するものと思われます。これが4つの中で最善のシナリオと言えるでしょう。

4. 第四のシナリオは、日本だけに影響を及ぼすものです。アメリカは12カ国での交渉と並行しての二国間協議を日本に求めました。アメリカがTPPそのものの締結において妥協を強いられるとすれば、二国間協議においては日本により厳しい条件を強いることでしょう。二国間協議のテーマは農業の市場アクセス条項に加え、自動車の流通、財政上のインセンティブ及び排出量基準にまで及ぶものです。

 また、国有企業、投資、食品安全基準、知的財産及び政府調達といった様々な国内規制に関する議論も含まれます。これら全てはTPPの交渉課題でもあり、結果、日米間でTPP追加協定が締結されることになるでしょう。アメリカ通商代表部は、日本が国内規制においてアメリカの要求を満たさない限りはTPPが発効することはないとしています。上述した4つのシナリオのうち、どれが現実となるのかは、これから12月までの間に私達が12カ国の全政府に対し、いかなる圧力を加えるかによって決まると言えるでしょう。それによっては、TPPを「WTOドーハ・ラウンド交渉」化させることも可能です。

以下全文です。

2013年10月 4日 (金)

「TPPを考える国際会議」に向けたジェーン・ケルシー教授の日本国会議員へのメッセージ

オークランド大学法学部
ジェーン・ケルシー教授

2013年9月26日

 ニュージーランドよりご挨拶申し上げます。皆様が、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について健闘され、議論を続けておられることにお祝い申しあげます。本日の討論に、この文章がお役に立てれば幸いに存じます。

 交渉は危険な段階に入っています。TPP協定交渉参加12カ国の政治家達は、12月には協定締結を推し進めようとしています。8月にブルネイで開催された第19回交渉会合が、実質最後の会合であるとされています。今後、公式な交渉会合の開催予定はありません。しかし、未だ合意に至っていない事項に関して政治的決定を下す準備を整えるべく、北米では各分野についてこの一ヶ月間で数多くの中間会合が行われています。

 各国政府は今週バリで開催されるAPEC閣僚・首脳会議の合間に、政治的取引を開始するつもりです。首脳陣は、その直後にブルネイで開催されるASEANサミットの合間にも会合の場を設けることになるでしょう。協定締結の期日を12月に設定したのは、恐らくバリで開催されるWTO閣僚会議にて貿易担当大臣が一同に会する時期に合わせたものでしょう。

 このようなスケジュールは、日本にとって懸念材料であることと推察します。というのも、日本の交渉官は一度しか交渉の全日程に参加しておらず、他の交渉参加国が既に合意した条件を受け入れることを余儀なくされたという事情があるからです。私達に共通する疑問は、「果たして彼等がこれを実現することが可能なのか」ということです。これについて、想定しうる4つのシナリオをご紹介いたします。

 最初の、そして極めて可能性の高いシナリオは、政治家達が政治思想上の理由により、今年末までに強引にTPP協定を締結するというものです。これが実際に起こるには、相当大きな政治的圧力を要します。しかし、APECにおけるTPP閣僚・首脳会合の議長はアメリカなのです。オバマ大統領は他の交渉参加国の政治指導者達に対し、絶大な影響力を持っています。大企業ロビーは、急いで固めた妥協案では弱すぎると懸念していますがが、オバマ氏が、米連邦議会の承認が得られる協定しか受け入れないことは分かっています。交渉状況に関しては、ロリ・ワラック氏が説明してくれるでしょう。交渉参加国が政治合意に達した場合、協定は、多くの参加国にとって、政治的な危険を孕んだものになります。また、法秩序の混乱も予想されます。交渉官達は、政治的指示を法律文に転換する必要に迫られることとなります。殆どの条項について既に合意に達した章においてさえ、この作業は困難を極めることでしょう。そして、12カ国が具体的な文言について合意するにはさらに多くの歳月を要することになるでしょう。

 バリで開催される10月のAPEC及び12月のWTO閣僚・首脳会議において貿易担当大臣や首脳陣が直面するであろう更に大きな問題は、交渉が行き詰まっている6つの最重要分野がどのような方向に進むかが分からない限り、各国政府には交渉準備のしようがないということです。一つ目は、市場アクセスにおける関税の撤廃・削減の課題です。もちろんこの問題についてはご承知のことと思います。もう一つは衣料品と繊維の取扱についてです。これは、特にベトナムにとって重要な分野です。

 環境の分野も、どの取り決めを受け入れ、どの範囲において施行するかの議論が難航しています。その他、交渉の行き詰まっている2つの分野は、公的医療保険制度に関するもので、知的財産の章における特許ルールと、薬品の購入取り決めに影響をおよぼす製薬会社の権限に関する透明性の章です。

 最後の章は、国有企業の運営と情報開示に関して広範な義務を課すことを意図しています。現在、アメリカとオーストラリアが提示した2つのモデルが交渉のテーブルに並んでいます。日本における最も明確なターゲットは、日本郵政の保険、銀行及び郵便業務でしょう。しかし、国有企業の章は日本放送協会や、商業的機能を有する地方行政機関、地方政府所有の公益事業会社や国立大学、年金投資基金や日本政府が創設した政府系投資ファンドにも適用される可能性があります。その対象範囲によっては、JRグループや農林中央金庫、JA全中(全国農業協同組合中央会)にまで適用されることも考えられます。この分野については、交渉が始まったばかりです。未だ国有企業の定義すら合意に達していないのです。

 私が描く第二のシナリオは、政治合意には達するものの、一部の国は代償が大きすぎるとして撤退していくというものです。マレーシア政府は、形ばかりの期限など設けるべきではないと主張し、いくつかの事項において交渉の余地はないとの立場を示しました。マレーシアはアメリカとの自由貿易協定交渉の早い段階において、アメリカの要求に譲歩することを拒みました。TPPにおける政治的・経済的な代償が大きすぎるということになれば、マレーシアは再び同様の態度を取るでしょう。

 チリの場合も、TPPで失うものの方が多く、特段得るものがありません。チリは、2007年に日本と締結したものを含め、殆どのTPP交渉参加国との間で既に自由貿易協定を締結しています。チリの元首席交渉官は、特に知的財産に関するアメリカの要求は発展途上国にとって到底受け入れがたいコストを強いるものであると警告していました。チリは今年の末に大統領選挙を控えており、政権交代の可能性があります。政治指導者達が今年中に強引にTPP交渉を取りまとめるならば、政権交代が交渉に影響を及ぼすことはないでしょうが、チリが最終的に協定を締結するか否かに影響する可能性はあります。

 他の参加国もまた、交渉において自国の利益を明確に提示しています。オーストラリア労働党政府は、外国の投資家が国際仲裁裁判所を通じてオーストラリア政府に対し訴訟を起こす権利を認めることに反対しました。前自由党政権が、オーストラリアとアメリカ間の自由貿易協定においてこの特例を取り付けたのです。これは前例のないことでした。アメリカにとってこれは好ましくない事態ですが、他のTPP参加国もオーストラリアと同様の姿勢で交渉を進めようとしています。新たに発足したオーストラリアの自由党政府が、投資家の訴権を認めることをアメリカとの交渉材料にするのではないかとの懸念がありましたが、新たに就任した自由党政府の貿易大臣は、投資家対国家の紛争に関しては今後も投資家の訴権を認めない姿勢を貫くと表明しました。

 しかし、だからといってオーストラリアがTPP交渉から撤退するというわけではありません。オーストラリアはイデオロギー上TPPを必要としているのです。同じことが、私の国であるニュージーランド政府についても言えます。ニュージーランドもまた、何としてもこの交渉を取りまとめたいと思っているのです。ですから、アメリカと日本への乳製品輸出拡大が実現されなければならないと主張し、IT革命や医薬品の購買機関を保護する姿勢を取ってはいても、最終的には協定を締結する可能性が高いと言えるでしょう。

 日本の状況に関しては、私より皆様の方が的確に評価できるでしょう。しかし、他国が交渉から撤退した場合、日本のTPP協定締結に反対する政治的議論が加速するものと思われます。そうなれば、「TPPは、他のAPEC加盟国が皆締結を望んでいる主要協定である」という大前提が覆ってしまいかねません。

 第三のシナリオは、いくつかの技術的課題が未解決であるにも関わらず、首脳陣が枠組み合意に達したかのように取り繕うというものです。それは面目を保つために他なりません。交渉は2014年に入っても継続し、各国政府は4つの重要な章に加え、繊維と農業の物品市場アクセスに関して自国の立場を固持することでしょう。そうして、WTOドーハ・ラウンド交渉と同様にTPP交渉は鈍化するものと思われます。これが4つの中で最善のシナリオと言えるでしょう。

 第四のシナリオは、日本だけに影響を及ぼすものです。アメリカは12カ国での交渉と並行しての二国間協議を日本に求めました。アメリカがTPPそのものの締結において妥協を強いられるとすれば、二国間協議においては日本により厳しい条件を強いることでしょう。二国間協議のテーマは農業の市場アクセス条項に加え、自動車の流通、財政上のインセンティブ及び排出量基準にまで及ぶものです。

 また、国有企業、投資、食品安全基準、知的財産及び政府調達といった様々な国内規制に関する議論も含まれます。これら全てはTPPの交渉課題でもあり、結果、日米間でTPP追加協定が締結されることになるでしょう。アメリカ通商代表部は、日本が国内規制においてアメリカの要求を満たさない限りはTPPが発効することはないとしています。上述した4つのシナリオのうち、どれが現実となるのかは、これから12月までの間に私達が12カ国の全政府に対し、いかなる圧力を加えるかによって決まると言えるでしょう。それによっては、TPPを「WTOドーハ・ラウンド交渉」化させることも可能です。

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