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小学館のビッグコミック・スピリッツ掲載の美味しんぼと5・19号に掲載された「『美味しんぼ』福島の真実編に寄せられたご批判とご意見」から順番に鼻血問題を中心に簡単にコメントする第二回目です。
全ての意見が参考になります。
これを読まずに軽々しいコメントはやめた方がいいでしょう。
コンビニで340円で買えるのですから是非多くの方に読んで欲しいと思います。
学習の機会を我々に提供してくれた美味しんぼと小学館に感謝します。
今回は若干長く引用します。

5.小出 裕章氏(京都大学原子炉実験所助教/原子核工学)
原発事故後に知った存在だが今や脱原発運動の理論的支柱となっている人です。鼻血問題の解明はありませんが言われる事はもっともです。
引用します。

「今も帰れない地域が存在している、危険が存在するという事実を伝える必要はもちろんあります。国や電力会社、大手マスコミがその責任を放棄する、むしろ意図的に伝えないようにしている現状では、そうした活動は大切です。」
「『鼻血』が出ることについては、現在までの科学的な知見では立証できないと思います。ただし、現在までの科学的な知見では立証できないことであっても、可能性がないとは言えません」
「行政は、事故を引き起こしたことについてなんの責任も取らないままですし、むしろ現在は福島原発事故を忘れさせようとしており、マスコミもそれに追随しています。このような状況で、行政の発表に対して不信感を持たないとすれば、そちらが不思議です。何より放射線管理区域にしなければならない場所から避難をさせず、住まわせ続けているというのは、そこに住む人々を小さな子どもを含めて棄てるに等しく、犯罪行為です」


6.崎山 比早子氏(医学博士/元・東電福島原発事故調委員/元・放射線医学総合研究所主任研究官)
この方も被災者の立場に立つ著名な研究者です。
チェルノブイリ法では1-5ミリシーベルトの地域では避難の権利を認めていて、5ミリ以上は強制移住だそうです。
政府は今までの1mシーベルトという基準を「年間20ミリシーベルト以下なら大丈夫」といい、「100ミリシーベルト以下のリスクは科学的に証明されていない。」と言っています。チェルノブイリ法の4〜20倍のリスクを甘受せよと言っています。
以下引用です。

「なぜ、低線量被曝のリスクを無視しようとしているのでしょう。年間20ミリシーベルトなら安全だと言うことで、賠償負担をなくそうとしているのではないかと思えてきます」
「政府や専門家らは、100ミリシーベルトまでは安心だと、誤った情報を流し、福島をはじめ汚染地に住む人たちを“安心”させようとしている。このままでは数十年後、多くの人たちの健康に影響が出る可能性があります」


7.津田 敏秀氏(岡山大学教授/疫学、環境医学)

放射線と鼻血の因果関係はあり鼻血だけではなく、広島や長崎では脳出血が多いそうです。
以下引用です。

「チェルノブイリでも福島でも鼻血の訴えは多いことが知られています。(雁屋さんが)実際に対面した人が『鼻血を出した』わけですから、それを描くのは問題ないと思います」
「『低線量放射線との因果関係をデータとして証明しないかぎり、そのような印象に導く表現をすべきではない』という批判が多いとのことですが、『因果関係がある』という証明はあっても、『因果関係がない』という証明はされていません」
「20ミリシーベルトが安全だという話は、100ミリシーベルト以下は被ばくによるがんが出ないといううその情報にしたがって、20ミリシーベルトは大丈夫と言っているのでしょうが、それは間違っています。省庁や、原子力安全委員長の元委員長(松浦祥次郎氏)ですらそれを真に受けています。」
「『福島に住んではいけない』という表現がありますが、放射線管理区域というのは、厳重に管理されている場所で、普通そういうところに人は住んでいないし、住んではいけません。特にこどもや妊婦は放射線管理区域に相当するレベルの空間線量がある場所に住んではいけない。福島県内でそれに相当する地域に関して、『住んではいけない場所』という表現をつかって、場所をもっと特定しろと言う以外に、なにか問題があるのか、逆に私が聞きたい」

8.野口 邦和氏(日本大学歯学部准教授/放射線防護学)

この方の講演はお聞きした事があります。
放射線防護学の第一人者という認識はあります。
その講演でも断定的な言い方が気になりました。

「福島県内で被曝を原因とする鼻血が起こることは絶対にありません。」
という書き始めは気になります。そう断定出来る疫学的積み上げはあるでしょうか?
福島の何処かでそういう調査をされたのでしょうか?
あるのはチェリノブイリで2万五千人ぼ調査で5人に1人が鼻血を出したというデータではないでしょうか

「ごく短期間に全身が500〜1000ミリシーベルトを超えるような高線量の被曝をした場合、被曝を原因とする出血の起こる可能性があります」
とも書かれています。
自治体のアドバイザーをされているとの事ですが自治体の立場と共に住民の立場を考えて頂きたいと思います。
大阪で処理された瓦礫が岩手と宮城の物だった事を言ってないという指摘は正しいと思います。

9.野呂 美加氏(NPO法人「チェルノブイリへのかけはし」代表)
原発の再稼働に関係しているので低線量で身体症状が出る因果関係を政府が認める事は絶対にないと書いています。
以下引用です。

「今、日本で行われている被曝対策は広島・長崎のデータに基づいていますが、チェルノブイリの医師達は、広島の事例は使えないと言っています。特に、低線量内部被曝は、核実験などを頻繁に行っていた旧ソ連の科学者もそこまで被害が悪化すると思っていませんでした。適切で大規模な疫学調査をしなければ、鼻血の否定はできないと思います。低線量被曝で鼻血が出ること、それはチェルノブイリでは日常です」
「「鼻血が出た」と言ったらダメなのか?私は風評被害対策の生贄にされる国民がかわいそうでなりません。」


10.蜂須賀 禮子氏(元・東電福島原発事故調委員/大熊町商工会会長)
この人も従来の外部被ばく線量,つまり空間線量の値をもとに議論しているようである.そうではなく,鼻腔粘膜の局部的な線量,つまり内部被ばくを問題にしなければならない。
商工会長としてはこういう発言になるのは仕方ないのかも知れません。

「主人公の山岡さんは6回福島に入り、1回第一原発の中に入ったということですが、その程度の放射線量で鼻血が出るというのは、これはあり得ない話です」
「この作品を、放射線についての知識をもたない人が読むとどう思うか。とても腹が立ちました。」

11.肥田 舜太郎氏(医師)
広島の被爆者で被団協の活動もされて来た今や少なくなった広島の生き証人です。
長崎原爆の被災者で先頃亡くなった義母を持っていた私には共感する所が多かった人です。

「私は、原爆投下後の広島で被爆者の治療にあたり、内部被ばくを研究してきた医師として、震災後に日本各地から講演の依頼がありました。そして全国を訪ね歩いたのですが、行く先々でこんな相談を受けたんです。『あまり人には言えないけれど、実はうちの子は鼻血が出て困りました。大丈夫でしょうか』と。鼻血のほか、下痢の症状を訴える人もいました。事故を起こした福島第一原発の放射性物質はアメリカやイギリスにまで拡散したのですから、狭い日本のすみずみまで被害が及んでいてもおかしくありません」
「鼻血や下痢、疲労感には、放射線の影響が考えられます。作中では、放射線による人体への影響について松井英介さんが見解を述べていますが、この分野では、「ペトカウ理論」という学説があります。放射線で細胞膜が破壊できるのかを実験した、カナダのアブラム・ペトカウという学者の説です」
「ペトカウは、高線量の放射線を短時間放射するよりも、低線量で時間をかけてゆっくりと放射したほうが、細胞膜を破壊する率が確実に上がることを実験で証明しました。1972年のことです。しかし、低線量による内部被ばくを隠したいアメリカにとっては不利な学説だったため、アメリカはカナダ政府を巻き込んで、ペトカウの学説はインチキだという宣伝をしまくり弾圧してしまったのです。ですから、ペトカウのことは、ごく一部の専門家しか知らないでしょうし、一般には名前も知られていないでしょう」
「今の医学ではまだ、放射線による人体への影響を解明しきれていません。しかし、解析が進めば明らかになるだろうという意味を含めて、鼻血などの症状を訴える人がいるという事実は報道すべきだと思います。」

12.福島県庁
ここも内部被ばくを問題にせず国連の報告書の引用が中心です。

「県のみならず、県民や関係団体の皆様が一丸となって復興に向かう最中、国内外に多数の読者を有し、社会的に影響力の大きい『週刊ビッグコミックスピリッツ』4月28日及び5月12日発売号の『美味しんぼ』において、放射線の影響により鼻血が出るといった表現、また、『除染をしても汚染は取れない』『福島はもう住めない、安全には暮らせない』など、作中に登場する特定の個人の見解があたかも福島の現状そのものであるような印象を読者に与えかねない表現があり大変危惧しております」

13.双葉町
ここも内部被ばくを問題にしてない。
役場に取材が無かった事も指摘しています。

「町役場に対して、県外の方から、福島県産の農産物は買えない、福島には住めない、福島方面への旅行は中止したいなどの電話が寄せられており、復興を進める福島県全体にとって許しがたい風評被害を生じさせているほか、双葉町民のみならず福島県民への差別を助長させることになると強く危惧しております」

14.矢ケ崎 克馬氏(琉球大学名誉教授/物性物理学)
今回の美味しんぼの企画を高く評価されています。
曰く「事実を大切にし、健康に生きる権利について、きちんとした視点から報じている。」
以下の意見は説得力があります。

「放射能の健康への影響については、国際的に二つの潮流に分かれています。一つはICRP(国際放射線防護委員会)やIAEA(国際原子力機関)が主張する、放射能の影響は大したことがないという論調。100ミリシーベルトまで問題はなく、チェルノブイリ事故後の健康被害は甲状腺ガンだけというもの。もう一つは、事実をありのままに見つめ、率直に理解する考え方。こちらは、低線量の健康被害を重大視しています。日本政府は、前者のスタンスですが、事実を率直に見つめれば、それが誤りであることは分かります」
「現に、100ミリシーベルトどころか、その100分の1、1000分の1でも健康被害が出ています。欧州では年間0.1ミリ以下ですが、性比(男女の出生比)、血管系疾患、免疫力低下、死産、奇形、ダウン症、水晶体混濁、白血病などがチェルノブイリ事故が起きた1986年を境に急増。主として、食を通じての内部被曝によるものと考えられています。影響は数ミリシーベルトのレベルで増加しており、2056年までの癌の発生は全欧州で13万人余、死亡数は8万人余と膨大な被害が予想されています。100ミリシーベルトなどとんでもない数値なのです。こうした事実がチェルノブイリの調査報告で出ています」
「放射能と鼻血の関係ですが、放射線がモノにあたると、どういうことが起きるか。放射線は原子に当たります。すると『電離』が起きる。電離によって電子が吹き飛ばされる。放射線で電子が飛ばされると原子が離れ、『分子切断』が起きる。生命機能を果たしていた組織が、放射線の作用で切断されるのです。放射線が鼻粘膜に当たれば、粘膜で分子切断が起こる。放射線が沢山当たると、鼻血が出る。原発事故後、関東圏で多くの子供が鼻血を出したと伝わっています。私にもそうした情報は伝わりました」
「関東地方の常総生協は2012年11月、松戸、柏、つくば、取手など千葉、茨城の15市町に住む0歳から18歳までの子どもを対象に尿検査を実施。そうしたら70%の児童の尿からセシウムが検知されました。こうした調査結果があるにもかかわらず、国は内部被曝はないとしています。こういうことでは、行政の公表内容に不信感を持たれるのも当然でしょう」

15.山田 真氏(医師/子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク代表)
貴重な全国の千名の小学一年生の鼻血発生調査をやられています。結果は福岡が一番高く26%で福島は一番低く福島市が10%.いわきは2.3%です。
低線量被爆と鼻血の因果関係を示すデータは肥田舜太郎先生のデータしかないとされています。
チェルノブイリの広河隆一氏等の調査データはご存知ないようです。
何れにしても一言では片付けられない問題です。

「『美味しんぼ』の中で鼻血が出るメカニズムを説明していますが、無理があるように思います。活性酸素が出来て細胞を傷つけるという放射線の作用はあり得ますが、それで鼻の粘膜細胞がやられて鼻血が出るというのは、科学的に疑問放射線が体内のDNAを傷つけることはありますが、粘膜や毛細血管を直接傷つけるという説明は無理がある。低線量被曝では、身体の表面の症状は出てこないでしょう」
国としての疫学的調査の必要性を訴えておられます。

16.青木 理氏(ジャーナリスト/ノンフィクション作家)
美味しんぼの中身に触れたマスコミがない事を批判されています。そして問題の本質は原発事故だと正しく指摘されています。

「すでに単行本化(110集)されている部分も含めて作品全体をじっくり読めば、きちんと検査された食品は安全だと幾度も言及していて、『風評被害』や『不当な偏見』に苦言を呈するシーンがたびたび登場します。にもかかわらず印象の強い鼻血のシーンだけことさらに取り上げ、言葉尻をあげつらうかのように批判されている。これでは批判者を煽るようなものだし、作品への正当な批評がなされているとは言い難い。この問題は大手全国紙も軒並み取り上げていますが、大半が騒動仕立ての報道で、コミックの内容全体に触れている記事はほとんどありません。これも短絡的な批判の声をエスカレートさせている要因だと思います」

最後に編集部の見解が出ています。この部分はweb に出ていますのでお読み下さい。
この村山広編集長の文章は次の文で終わっています。
「この度の「美味しんぼ」をめぐる様々なご意見が、私たちの未来を見定めるための穏当な議論へつながる一助となることを切に願います。」
『美味しんぼ』と小学館はいい仕事をしたと思います。

編集部の見解はここに雑誌と同じものが掲載されています。

以上です。
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