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火を継ぐもの 回想の歌人たち(碓田のぼる著)を読んだ

火を継ぐもの 回想の歌人たち(碓田のぼる著)を読んだ。

先に感想を書いた「団結すれば勝つと啄木はいうー石川啄木の生涯と世界」は書き下ろしだったがこの本は過去に書いた文章を集めたものだがそれぞれ重要な文章である。
参考
碓田のぼるさんの「団結すれば勝つ、と啄木はいう」を読んだ。

新日本歌人に掲載された論文は読んでいるがこうやってまとめられると碓田のぼるという文学者の全体像が見えてくるような気がする。

各文章のタイトルは以下にある通りであるが名前だけ列記するとこうなる。
赤木健介/ 芥川龍之介/ レーニン/ 佐々木妙二/ 小林多喜二/ 岩間正男/ 渡辺順三/ 八坂スミ/矢代東村/山原健二郎

いずれも碓田さんの思い入れのある文章なので全体を読んで頂きたいが私のあまり知らなかった一人を紹介します。
その人は岩間正男さん
闘う教師、歌人そして政治家である。
小学校4年の時に以下の歌を詠んで担任教師をびっくりさせている。

こわごわとのぼるさやかの相山もきたりてみれば桜さきみつ

学校を出て、宮城で小学校教師となり上田庄三郎らの「綴方生活」に出会う。
成城学園小学部の教師となり白秋の二人の子どもを教える。
教師の追い出し問題を発端とする成城学園事件が起こり馘首される。
白秋は岩間ら全面的に支持し短歌144首を全校父母に送ったりしている。
岩間は白秋の「多磨」に入会し短歌を再開する。

ここで述べられている白秋と岩間の関係は短歌の師と弟子という関係を超えたものがある。
碓田さんはこう書いている。
「北原白秋という、すぐれた詩人の魂の中にある、はげしいたたかいの心にふれ、それを継承・発展させたところに、歌人岩間正男の真骨頂があった。」
白秋は1942年に亡くなるが前後3年間岩間は「多磨」を編集し選歌も担当した。
そして祖師谷の自宅から阿佐ヶ谷の白秋宅まで週三日自転車で通ったという。

2・1ゼネスト目前の1946年に出来た全日本教員組合協議会(全教協)の中央闘争委員長が岩間正男だった。
当時の歌にこれがある

闘争宣言手交し終えて炎群(ほむら)なす隊列のなかにわれら入り行く

当時の文部大臣に闘争宣言を手渡した時のものである。

全教協は1947年結成の日教組の母体となった。
同じ年に岩間は全教協に推薦され無所属で参議院全国区に立候補し当選した。

第二芸術論の桑原武夫は岩間の自然詠の歌を批判した。
しかし闘争宣言の歌に見るようにそれは「闘う短歌」であり、その批判は当たっていない。

戦前の「多磨」を通した岩間の発言は戦時中発表された唯一のものなのかもしれないという気がする。

岩間は1949年に日本共産党に入党する。

昂ぶりも逡(ため)らいもなしといわば言い過ぎんこの夜入党宣言ひとり書きつつ

1977年27年の議員生活を終えて退職し新日本歌人協会に入会している。
退職後病気がちになった時に見舞った碓田さんに岩間さんは死後読んでほしいと封書を渡された。
死後開封したら遺歌集や教職員組合や、病気のことが細々と書いてあったという。

上田耕一郎の岩間さんの葬儀での「送る言葉」ではこの歌が紹介されたという。

銃眼に身をふさぐごとき思いもて過ぎしたたかいのとき長かりき

葬儀の時白秋の子の隆太郎さんは碓田さんはこう言われたという。

「おやじが一番信頼していたのは岩間さんでしたよ」

岩間正男という人物に出会った気がする。

私は大学時代から社会人になる頃にかけて母と一緒にコスモス短歌会に属していた。
岩間が編集した「多磨」の後継誌である。
そういう意味では岩間さんに私自身も遠く関わっている。

私は大学時代から青年新聞を通して碓田さんの指導も受けてきた。
45年来の弟子である。

暑い夏に自分の二つの短歌のルーツに思いを致しました。

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今日はサラダ記念日

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日 の歌は実際にはサラダではなく、鶏の唐揚げをカレー味にしたら“いいね”と言われたからで、唐揚げでは重いのでサラダにして、初夏とサラダの音の響きから7月にして、何でもない日こそ記念日にしたいと考え、6日にしたそうです。

この時期この記事がよく読まれる。
サラダ記念日は何故7月6日?

2010年2月25日 (木)
サラダ記念日は何故7月6日?

こんな記事だ。

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日 たまたま七月六日のような感じがするが、この日は考えられた日だ。 7月7日の七夕の物語の日ではなくその一日前の日なのだ。 短歌をよむ (岩波新書) にはこの歌の作成過程が書かれている。 最初は 1. カレー味のからあげ君がおいしいと言った記念日六月七日 次に 2.「カレー味がいいね」と君が言ったから今日はからあげ記念日とする そして 3. 「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日 と変遷している。

実際の日付と料理メニューは、事実からは変更されている
七月六日という設定が巧みに考えられている。 何気なく作られたような万智ちゃんの歌には実は作歌の技術が散りばめられている。

朝日新聞デジタルによると、俵さんは『サラダ記念日』から30年が経った今、短歌に対してどのような思いを持っているかについて、以下のように話した。

歌はずっと作り続けています。生きることとずっと並行してありました。 短歌は日常の小さな感動や心の揺れに対応できる詩形であり、柔軟に対応してくれるのが魅力。年齢を重ね、住む場所が変わっても、歌に対するスタンスは30年前と変わりません。 (中略) 歌は誰かに頼まれて作るものでもない。歌人に限らず、何かでありつづけるのはたいへんですが、新作を楽しみにされる歌人でありたい。

新作を楽しみにしています。

この僕をいいねと君が言ったよね7月5日は君の誕生日 公彦

7月5日は妻の誕生日でした。

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赤塚堯歌集「仙人掌の話」を読んで

赤塚堯歌集「仙人掌の話」を読んで

十首選とコメントです。

p53 反原発の書名簿添えてフランスの美帆シボさんよりメール届けり
★原発の行方は日本とフランスにかかってますね。

p53 あいまいな日本のあいまいな一人になってはならず声たかく脱原発叫ぶ
★川端康成氏の「美しい日本の私」を意識して大江健三郎は、「あいまいな日本の私」という本を書いた。
「原発」にあいまいはない。

p75 不器用で枉げるを知らず生きてきし愚直もよろし仙人掌の花
★サボテンと読むことを知らずにこの歌の「愚直」を頂いたがこの歌はこの歌集の題になっており作者はこの愚直をこの歌集で言いたかったのだろう。

p99アレッポの石鹸愛用していたり入手困難となりて久しき
★ アレッポの石鹸とは
「オリーブオイルとローレルオイルで作られたシンプルな石鹸」で千年以上前から作られている特産品だそうです。
シリアの窮状に心を寄せています。

p124 庭先に埋めし球根を掘りかえすわが愛犬はのどかなりけり
★犬との暮らし振りが沢山読まれてます。犬が生きる支えになっている例は多いです。

p139 二十年まえサルトル ボーボワールの墓たずね語り合いたりパリの夕暮れ
★きっとサルトルと ボーボワールのようなご夫婦なんでしょう。

p158 批判され怒鳴りて妻をやり返すもっとも醜きわれが顕ちくる
★赤塚さんが激昂するのを見た事がありません。この自己反省に精神が人を寄せ付けるのだと思います。

p164 型破りの大統領を生みし国の複雑骨折のごとき社会のゆがみ
★日本もアメリカも「複雑骨折」してますね。直す医者も大変ですが患者の自覚が最も大事です。

p178 診断の結果を妻に知らせたり弾んだ話になるはずはない
★「弾んだ話」ではないだろうがちゃんとお二人に問題として話し合われているのでしょう。

p186 肝炎の患者会運動に三十年よくもまあ続けてきたものだ
★お疲れ様でした。
まだまだ人生はこれからです。上を向いて歩きましょう。

以上十首を選びました。

あとがきによると赤塚さんは現在79歳で「下垂体腺腫」と「髄膜腫」という病気の治療中のようですがどちらもさいわい良性という事で経過観察中だそうです。
肝炎患者会の全国組織の理事長を経験し、現在日本歌人協会の財政部長という重責を担っています。
これからも新日本歌人協会に貢献頂く事を期待し、更に良い歌を沢山発表頂く事と次の歌集に期待します。
2018年3月31日
大津留公彦

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新日本歌人2018年4月号10首選

新日本歌人2018年4月号10首選

p20 何回目の戌年なのと聞かれても正直忘れてしまいましたね
大阪 ぬのびき珠子
★記憶力が減退したんですね。

p21 故郷を襲いし恐怖の大地震「頑張るけんね」の友の逞し
東京 兵頭喜美代
★熊本・大分大地震の傷はまだ癒えてない。

p22 向井氏に続き逝きたる菊池先生辻堂歌会は又も淋しき
神奈川 平野博子
★向井さん亡きあとの助言者をお願いしたいと辻堂支部から要請があり菊池さんと決まったのはそう前のことではない。

p43 国民のレベルほどの政権とう、そう言われればそうかも知れず
大阪 向山潔
★世界史的に見ればそういう事でしょう。

p43 駅頭で「赤紙」令状手渡せば兄は戦死と涙の女性おり
東京 森山玉江
★こういう記憶が9条を今まで支えて来た。戦争体験を今後は間接的に継がねばならない。

p44 吠えもせず物憂げな目の犬は問う「who are you?」「I‘m sorry」と答えて過ぎ行く
埼玉 栁澤順子
★こういう目線での会話はよくある。英語ではあまりないが。

p53 お湯が出る、ストーブもある。
日本国憲法二十五条って
あったかいなあ。
青森 木村美映
★福祉は権利です。この歌を福祉事務所に張り出したい。

p54 おとうと いもうとの孫も集まって、
四十人こえたー
笑顔で乾杯。
清水鉄次郎
★素晴らしい人生の象徴のような歌ですね。

p65 「オシッコデタ」自信に満ちた大声で告げる一歳児 トイレ記念日
神奈川 臼井恵子
★「トイレ記念日」は「サラダ記念日」並みに有名になるかも知れない。

p73 世の中はみな猫好きと決めている子供の頃より私は嫌い
熊本 國宗黎
★今は空前の猫ブームだという。猫の方が犬より手がかからないし家で飼えるからだろうか。私は猫好きで「岩合さんの世界猫歩き」はよく見てます。

以上です。

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新日本歌人2018年3月号10首選

新日本歌人2018年3月号10首選

p4 聖地ゆえ闘いやまぬエルサレムどの神さまも殺すなという
大山友子 群馬

★確かにイスラム教もユダヤ教もキリスト教も殺すなという教えなのに殺しあっている。

p7 華やかなホテル勤めの息子なり食むもの大方コンビニのものらし
金子りえ子 東京

★現在の労働者の実態はこれ。企業栄えて民滅ぶ。

p7 本当の言葉の意味を
知らないで花占いをしていた、昔
椛澤真希 北海道

★読点の位置が面白い。若い。

特選 p8 これを機に生き方変えよと誰も言う歌への陥没やめよというか
故・菊池東太郎 静岡

★「歌への陥没」というのは菊池さんの言葉かどうか不明だが、そういう状態であった事は違いない。

p28 闘病の病にはあらず転倒の脳内出血に逝ける悔しさ
小石雅夫 東京

★菊池さんの死因はそうだったんですね。新日本歌人の巨星が落ちた。

p29 お前たちの母さんもここで笑ったよ孫たちもまた「バーバパパ」の本
小林加津美 神奈川

★どこで笑ったか想像がつきます。

p43 戦場とはかばかり悲惨なことならん囲碁で相手に殺されつつ思う
飛田佳恵子 静岡

★囲碁で戦争での死を思うという感性は初めてです。

p45 せっせっと拭きそうじするじわじわくる病の波にのまれぬ様に
長野洋子 大阪

★歌集「ハイヒール」の印象が強烈ですが、この人の得難い個性を大事にして欲しい。

p47 段染めのセーターひと目編むごとに逢いたい気持ち濃くなってゆく
乃木倫子 大阪

★若い感性が嬉しい。

p56 段ボール七箱分の
古書整理ーー
六畳二間はこんなに広い。
木村美映 青森

★行わけではこの歌を選びました。今後行わけはこの人が支えて行くのかも知れない。

以上です。

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新日本歌人2018年2月号10首選

新日本歌人2018年2月号10首選

p6 タテ糸をお茶に短歌はヨコ糸に吾位置づけて歌は「運動」
群馬 山田富美子
★表現が新鮮です。歌は「運動」というのも新鮮ですが通じるか。

p9 イエメンの民七〇〇万人飢餓のなか犇(ひし)めくテント母子(ははこ)ら戦(おののく)
茨城 井坂好江
★あまり触れられてないイエメンの問題です。三つのふりがなを振らなければならない表現はどうか。

p10 荒寥たる異星より来たるか少年ら声をはなちて校廊を行く
青森 市田勝一郎
★昔宇宙人という若者の形容詞が流行ったが今は異星人か。学校の先生の優しい目線も感じます。

p20 コスモスはひとつひとつ揺れ万に揺れ遠賀川原に風まきちらす
福岡 故・大山志津子
★頂いた歌集「白萩坂」の感想文をお送りしたのが十一月で十二月に亡くなったとこのアンダーラインが付いている号で知りました。優れた歌人を失って誠に残念です。合掌!

p 新しき明日の来るを信ずという啄木よ吾も然思うこと愛あるかぎり
静岡 故・菊池東太郎
★菊池さんへの挽歌は既に三十二首作りましたが初めてこの号にアンダーラインが付きました。啄木生誕地の隣村で生まれた菊池さんらしい最後の歌です。合掌!

p35 アンパンマンとなり自議席を減らしぬの論に見あぐる半月の空
愛知 小平考常
★アンパンマンは自分の顔をお腹の空いた子どもに食べさせた。昔我が家の長女は本を読んで涙を流した。

p36 十万を流浪の民にしておいて原発売りに行くわが首相
神奈川 榊原昭子
★何おか言わんやですが、これを歌う事が闘いです。

p46 母と子の会話弾んで
通学路を
大小の傘
揺らしながら行く
岐阜 伊東幸惠
★行わけ欄からの選は迷いましたがほのぼのとして楽しいこの歌を選びました。

p59 トランプの支配者意識隠し得ず「カルフォルニア州ヨコタ」から来る
茨城 奈良達雄
★初めて知りました。「アメリカ軍基地の中の住所はカリフォルニア州になる」そうです。新しい事実を伝えるのも短歌の意味です。

p65 何時しかに妻のいのちとわがいのちかく重なれる一つのごとく
東京 小石雅夫
★素晴らしい相聞歌だと思います。こう歌われる奥さんは幸せだと思います。
以上です。

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2018年順三・妙二忌報告

2018年順三・妙二忌は20数名の参加で無事終わりました。
午前中の順三墓参と講演と歌会で中身の濃い忌日になったと思います。近々赤旗にも掲載されると思います。
以下映像です。

渡辺順三について
藤田貴佐代
http://twitcasting.tv/kimihikoootsuru/movie/443908961

赤木健介について
下村すみよ
https://twitcasting.tv/kimihikoootsuru/movie/443913460

佐々木妙二について
大津留公彦
https://twitcasting.tv/kimihikoootsuru/movie/443918707
以下事前チラシです。
http://www.shinnihonkajin.com/wp/wp-content/uploads/2018/01/img20180103_20243273-2-768x1108.jpg

以上です。

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仕事着 佐々木妙二歌集昭和29年)から9首

仕事着
佐々木妙二歌集昭和29年)から9首
大津留公彦

手術台から抱えておろす
体重の、
ついに守りえた 一人の生命

こゝろよく金を貸してくれた順三の
店の灯に
送られて帰る。

技術と誠実が開業術だ と
答えつゝ、
そればかりでもない と、言葉にはいわぬ。

ゆたかだということは
こんなにもいゝ、
うごくと 浴槽から
湯があふれ こぼれる。

日本の
ある町隅の治療院にいて、
父のごとくに スターリンをおもう。

これはひどい 性病
米兵相手の
まだ肢体の伸びきらぬ 日本の小娘。

ま夜中の戸をたゝかれては
誰よりも先に眼をさます
町医者の俺の習性

冷えきってもぐり込むふとんの中に
ふれた妻の足も
まだ温もれないでいる

呼び売りの「ハタ」がまだあまり売れてないと思いながら
改札口の列に押されてゆく。
以上

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自由律歌集「診療室」 佐々木妙二著(昭和25年発行)より十首

自由律歌集「診療室」
佐々木妙二著(昭和25年発行)より十首

大津留公彦選

ひとの子を死なせた とおもう、夜の更けを遊びつかれて 子らの 寝息の深さ

種痘うける列の
つぎつぎ つきだす腕
どれも 逞しく 油に汚れた腕。

俺のどた靴と 行儀よく並んで
この靴も
もっとくたびれた 小さなどた靴。

巴里陥落の新聞きれが
小便壺に浮いている、
ごぼごぼ 小便する

ひと夜に降りつもった 火葬場の雪路、朝あけの雪路、父を送る

甕のなかに 父の御骨の 鳴る音は かける、地の底 ふかく

往診料だと
手に持たされた大根二本、
ぬいてきたばかりの 畑土がついて。

闘士赤木健介は よき友
医者われの言うことを よくきいて
今日は寝ている

徳球書記長も
今日は患者の一人であって
私のいうまゝに 背中を向ける

有楽座の人ごみの中で
ふとかいだ 自分の体臭
クレゾールのにおい。



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花芯 佐々木妙二歌集から 福田穂さんが「直截さ」と書いて選んだと思われる7首

花芯 佐々木妙二歌集から
福田穂さんが「直截さ」と書いて選んだと思われる7首

夜のふけを
アパートの階段降りるとき
どの部屋か ドアに鍵かける音

明日も 今日の悔いを繰り返すとも
明日あれば
枕元の明かりを消す。

枯笹原を
もみあい もみあい わたる風の
消えゆくあたり
もうなにもない 黄れ

遡る自分の血潮をかきまわし
癌の組織をさがしていた
ーーひとり。

傷の痛みのうすらぐ夜なか、
病室の壁に
足の影など うつしてみる

曝されていき生きぬく ふたり
あるを おもい
残された壺の 誇りを拭う。

癌病みの余命幾年と限られても
忘れておれば
今日のだ談笑。

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