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2007年3月30日 (金)

短歌と俳句の違いについて

20世紀に書いた文章ですが掲載します。

短歌の立場・俳句の立場からご批判ください。

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短歌と俳句の違いについての諸家の言葉

炎第8号に書いた「俳句+14音は短歌か?」について問題意識を持ち続けていますがまだ結論に至りません、先輩方のお知恵も拝借して短歌と俳句の違いについての諸家の言葉をいくつかの項目にまとめてみました。

表題の最初が短歌で次が俳句です。


無季と有季

「俳句は短い上に季語の負担があって窮屈であるが色々工夫して短縮造語を使って独特の表現をする。」(水原秋桜子「俳句の作り方」)

「俳句は普通、季語を含む。季語とは四季に関わることばである。それは「自然」を表すものが、ほとんどである。と、考えてみると、虚子のこのことば(花鳥諷詠)は普遍性を持っている。俳句の本質を示したことばであることが知られる。季語を含む事を必ずしも強制しない短歌に比べると、俳句はより多く、「自然」を素材としていると言ってよいだろう。」(小澤實「短歌・俳句同時入門」(以下「入門」)


流れと衝撃

夏氷鋸荒くひきにけり 川端茅舎

自転車のうへの氷を忽ちに鋸もちて挽きはじめたり 斎藤茂吉

誓子は「夏氷」と提示しその氷に「鋸荒くひきにけり」といどみかかった。「物と事とのぶつかりあいだ」「俳句が衝撃であるからだ」と結ぶ。

誓子はこれを「自転車のうへの氷を忽ちに鋸もちて」と一筋に流れる。その勢いに乗りつつ「挽きはじめたり」と読み続けばいつまでも挽き続けている様に思われる。短歌が流れであるからだ」と結ぶ。(俳句鑑賞入門「山口誓子」から)


主情と客観

短歌では感情の流れを表現できるが、俳句では、形式の短さゆえに、感情の流れを表現しにくいのだ。俳句で自分の感情を表現する場合、その思いを極力一点に絞り、凝縮し、切り詰めて、暗示的に言語化することが必要なのである。(中岡毅雄「入門」)

秋立つや川瀬にまじる風の音 飯田蛇忽

秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる 藤原敏行(古今集)


俳句は物の把握がきわめて定かである。「川瀬にまじる風の音」は明瞭に客観の輪郭を呈している。


短歌はリズムを主としており「風の音」はどこかおぼろげに主情化(理智よりも感情・情緒を重んじる)した趣のものである。


俳句は「秋立つや」で確固として切れる。この潔い切れの間合いに鑑賞の心を留めねばならぬ。「立秋の」と続けた場合とは全く異なる。切るとは精神を集中することである。(友岡子卿「俳句創刊40周年記念特別号」)


「流れるようなリズム」と「確かな物の把握」(同上)


抒情と美的秩序

「俳句は勿論抒情詩です。しかし俳句独自の抒情詩を生かすためには短歌抒情、抒情詩的抒情とは自己峻別する美的秩序を求めねばならないという心構えだけは何といっても必要だといえます。でないと俳句は短歌の上半分、抒情詩の一行となり下がってしまうからです。」(楠本憲吉「俳句入門」)


長刀と短

「短歌は流れる様に経過を語る事ができる長刀の様なものである。俳句は理屈や思いのたけを述べつくすことは出来ず結果だけを言い放つ短刀であると言える。猟犬で言うと短歌はセッターで俳句はポインターである。有無を言わせず急所をぐさりとつかみとる」

(毎日グラフ別冊「俳句」1988年)


機会詩と非機会詩

「日常的現実に即して、ある日ある時の事実とか感情を残しておきたいという動機から短歌が作られる場面も多い。身近な者の死や自身の病などの危機にあって、やむにやまれずうたうこと、個人的な悲嘆に客観的な表現を与えることで得られる慰めがけっして小さくないことも、多くの人が経験しているところだろう。そうした動機でしばしば短歌が作られる点もまた、俳句と少し違うようだ。」(米川千嘉子「入門」)

短歌は俳句に比べて、機会詩(儀式や出来事に当たってそれを記念するために作られる詩)としての要素が強いが、それにしてもたった三十一文字で表現するのはなかなか難しい。(小島ゆかり「入門」)


師系と一匹オオカミ

「短歌は心を述べる、あるいは物の場面を表現するという意識がとても強いものでしすから、百匹の一匹オオカミが自分なりの何かを遂げていけばいい、という気持ちがとても強くて、むしろ所属しないのが潔いという気持ちを持っている人も非常に多いのが特徴ですね。だれからも習わない、あるいは一人から習うということではなくて一遍に50人から習っちゃう、自分はその中で勝手に切磋琢磨してやっていきます。・・

俳句の方にはいまだに、いい作品やいい師匠に対する一種の謙虚さのようなものがありますよね。」

「俳句と短歌の体質の決定的な違いは、俳句は師系と結社というものをものすごく大切にすることね」(馬場あき子「入門」)

 

やはり私の疑問は続く「俳句+14音は短歌だろうか?」と………


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コメント

志村建世 さん

「短歌」ありがとうございました。
今後もよろしくお願いします。

松尾芭蕉

戯作ですが、俳句+14音の「短歌のようなもの」を作ってみました。

古池や 蛙とび込む 水の音
山の静けさ 深まりにけり

さまざまの事 思いだす 桜かな
あの人は亡し この人も亡し

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