「希望は戦争」
昨日書いた「それを乗り越えるだけの「技術」や「思想」を!」が取り上げた低気温のエクスタシーbyはなゆーの日本が戦争することを熱望するフリーター赤木智弘氏へのインタビューとささやかな思考の足跡の赤木智弘『若者を見殺しにする国』の両方に赤木智弘氏のことを教えて頂いた。
☆中島岳志的アジア対談:フリーター、「左派」or戦争--赤木智弘さん (毎日新聞11月22日)に対談が出ている。
北海道大准教授の中島岳志氏が対談するフリーターの赤木智弘さんは『論座』1月号の論文「『丸山眞男』をひっぱたきたい 31歳、フリーター。希望は、戦争。」で反響を呼んだ人物。
「希望は、戦争」というのはアイロニーとして言っているのではない。
状況は深刻だ。
中で中島氏も言っているように「自己責任や個人の資質に還元する言説」を批判しないと。90年代以降に行われた政府の経済政策で、今の不安定層が生まれた事の本質が明らかにならない。
しかし彼の問題提起は突き抜けている。
我々の常識的な社会変革の展望の手が届かないところがある。
ささやかな思考の足跡は2つの『若者を見殺しにする国』の読後印象を述べている。
1つは、どこまでも深い貧困の不可視性をどう受け止めるかという問題。いくらか貧困の問題について、理解が深まっているといっても、若者の貧困の問題はどこまでもその実態は不可視化されている。意識的ではないにしても、浸透した自己責任論の色眼鏡で、いろいろ若者の実相は、批評され、論評され、理解されきらない。ここから生じる若者たちの社会への絶望感、大人たちへの不信感にどう応えるかという問題である。これは若者に対してだけでなく、貧困一般に対して言えることでもある。格差の拡大のなかで不安感が広がる中で、こうした分断はメカニズムとして機能するまでに至っているかもしれない。その打破は、言うほど容易ではない。
もう1つは、こうした若者たちが、社会を変革することに参加する回路を私たちが提示できているのかという問題。社会変革を多数者の手でおこなうということは、私たちにとって核心的な命題でもあるが、実際に、そうした事業に参加する回路から、客観的に排除されている(正確には参加することがきわめて困難な状況におかれている)層が、実態的には存在する。ワーキングプアだとか貧困層と呼ばれる人たちの社会参加の運動は、さまざまに実践の面では、とりくまれているが、必ずしもその理論化にまで高められているわけではない気がする。
今後赤木さんの本を読むことにして若者問題をフォローして行きたい。
ーーーーーーーーーーーーーーー
☆中島岳志的アジア対談:フリーター、「左派」or戦争--赤木智弘さん (毎日新聞11月22日)
◇久々に論争起こした論文だ--中島さん
◇社会階層を流動化させたい--赤木さん
中島 赤木さんの「希望は、戦争。」は、論壇誌で久々に論争といえるような議論を巻き起こした論文です。しかも、いわゆる「左翼」による反論は、多くが赤木さんの主張を誤読していた。それが大きな衝撃でした。まず、あの論文の趣旨をお願いします。
赤木 「戦争がしたい」って要約すると単なる破壊願望だと思われるし、それを否定すれば「あれはレトリックであって、赤木の本心は別にある」と言われます。そうじゃなくて、本心は両方にあるんです。 自分たちフリーターは働き続けても、昇給はなく安定は望めない。何とか社会階層を流動化させたい、変えたい。でも、従来の左派が代表してきたのは正規労働者であって、つまり我々は左派からも見放されている。だから、階層が流動化する機会としては、戦争だって希望になるのではないか。本当は、戦争は回避したいのだが、というのが骨子です。
に始まる。
以下赤木氏の主張の部分のエッセンス部分を紹介する。
高度成長以後の労働者像はほぼ、終身雇用で働いて家族を養う標準型しかなかった。そこからこぼれる人の存在が表面化したのは、バブル崩壊以降でしょう。だから、言論界にはまだ、そういう人たちに関する蓄積がほとんどないのだとは思います。
赤木 そもそも、家族を持って安定した生活ができる正規労働者と、家族も持てず不安定な非正規労働者とで「連帯しろ」というのは簡単な話ではない。なぜそこに想像力が働かないのか。彼らは単に「富裕層対我ら」という構図を描くのだろうけど、その「我ら」の中にも断層があるのです。
赤木 若者を批判して上の世代が偉ぶるのは、彼らがこれから若者にはなり得ない、若返ることがないからですよね。安心してたたける。それは男性が女性を、白人が黒人をたたくのと同じ構図だと思います。
赤木 バブルまでの終身雇用は、本人が努力して得る身分というより、当然の仕組みだったわけです。バブル崩壊以後、そうじゃなくなったのに、自分たちの過去を「努力したんだ」と言って下の世代をたたけるようになった。赤木 自分たちの世代はうまく就職できた層と、そうではない人が友人間でも両方いますよね。だから、自分が上層でも、友達が下層なのはその人の性格や努力のせいではないと分かっている。その意味では、この世代内でなら上下層の連帯の可能性があるんじゃないかと思います。逆に今のように簡単に就職できる世代は、その可能性が低いんじゃないか。
でも、フリーターだってだいぶ頑張ってますよ。ピーク時間を過ぎたファミレスなんて、ホール1人、キッチン1人でやってたり。少しお客が増えたらてんてこ舞いになる。でも、そこで頑張ったことは努力と見なされない。コンビニバイトが努力しても店長や本部社員にはなれない。努力が結果に結びつかない層が、家族持ちの生活を安定させている側面がある。そこを変えたい。
赤木 一番効率的なのは、この世代が、ボーンと自殺でもしてくれることなんでしょう。だからこそ、戦争が起きて、あらゆる人が戦わざるを得ない状況に追い込まれれば、その方が今よりはまだましだと思うんですよ。自分が上がれないのなら、周りを下げるしか平等への道はないんですから。
◇戦争が「尊厳」回復する?--赤木さん
◇国や企業が危機自覚を--中島さん
赤木 それに、徴兵されるというのは「私が社会に求められている」ということですよね。それに応えることで、社会と私がつながる。このつながる感覚が人間の尊厳というものだと思うんです。今は、何をしたって「お前はフリーターのままでいい」「ただ死んでくれ」。応答ができない。でも、戦争が起これば自分が社会の中で生きていると感じられる。
赤木 ちなみに、「希望は、戦争。」に対して「何で希望がテロや革命じゃないんだ」と言う人もいたけれど、それは一人の人間に望みすぎ。自分はあくまでも普通の生活者でありたいんですよ。
中島は赤木さんの文章を読んだとき、朝日平吾という人を思い浮かべました。1921年に安田財閥トップの安田善次郎を殺した右翼テロの先駆け的な人である朝日平吾という人を思い浮かべたそうです。
太平洋戦争の始まりに若者の貧しさのはけ口に満州があった。
ヒトラーの政権奪取に若者の貧しさのはけ口があった。
ブッシュのイラク戦争開始に若者の貧しさのはけ口があった。
今日本の若者ははけ口を求めている。
ちなみにこの対談のテーマは「希望は戦争」ではなく「左派」or戦争となっている。
==============
編集者はこう書いている。
◇対談を聞いて
誰かが、赤木さんを「新・新左翼」と評していた。70年前後、新左翼は丸山を糾弾し、「革命戦争」を呼号した。確かに、字面が赤木さんの論文と似ている。小熊英二慶応大教授は、赤木さんと同時並行で存在する昨今のフリーター労働運動などを、70年代以降の左翼の延長上で読み解く。逆に、70年代を忘れたから今、彼らに衝撃を受ける人もいるのだろう。ただし、全共闘が団塊世代のごく一部だったのと比べて、赤木さんらフリーター層は分厚い。しかも、学生運動のように卒業はない。彼らの存在は、往年の新左翼のように、忘れ去られてしまうたぐいのものではないのだ。【鈴木英生】
==============
毎日新聞 2007年11月22日 東京夕刊
中島岳志的アジア対談:フリーター、「左派」or戦争--赤木智弘さん
http://mainichi.jp/enta/art/news/20071122dde014070009000c.html
どうぞ激励クリックをお願いします。
→人気ブログランキングへ
こちらもをお願い致します
→FC2ブログランキング
→こんなのも始めましたこれもよろしくお願いします。
BlogPeople
このサイトのあなたのレビュー!
« 微妙な差にも道理あり | トップページ | 若者が右傾化する理由 »
「ワーキングプア」カテゴリの記事
- 湯浅誠さんを都知事に!!(2010.03.28)
- 政府が貧困問題についてどういう方針を持つかによって決める(2010.03.07)
- 湯浅誠さんの「どんとこい貧困!」を読んだ(その2)(2010.03.06)
- 「権力の懐に飛び込んだ男 100日の記録」(2010.02.28)
- 日比谷公園で生まれた国会決議(2009.01.09)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 「希望は戦争」:
» 山田洋行 インド洋給油 [とむ丸の夢]
すごい。昨日23日付の「日刊ベリタ」に掲載された「山田洋行がインド洋給油に介在」。「自衛隊の退官者や現役隊員らで組織する非公式情報機関は22日までに、11月1日から停止されている海上自衛隊のインド洋での給油活動につ... [続きを読む]
» 「兵士」になれなかった三島由紀夫と「兵士」になりたい赤木智弘氏 [佐藤秀の徒然\{?。?}/ワカリマシェン]
池田信夫 blog丸山眞男をひっぱたけに紹介されていた赤木智弘氏の「丸山眞男」をひっぱたきたい 31歳フリーター。希望は、戦争。と、けっきょく、「自己責任」 ですか 続「『丸山眞男』を ひっぱたきたい」「応答」を読んで──を読んで、三島由紀夫の遺作である四部作「豊...... [続きを読む]
» 日本は金持ち国だが…… [とむ丸の夢]
私がよく覗くBBCのサイトで、数日前に大阪のホームレスが取り上げられていました。 ちょっと気になった、7枚の写真からBBCが見た日本のホームレス事情。ざっと読んでみます。 大阪のホームレス人口は、公式には7,700人。非... [続きを読む]
» 「自己責任」と自己の「社会的責任」を区別できない赤木智弘さん [アルバイシンの丘]
大津留公彦さんから戴いた記事で,赤木智弘,という名前を初めて知った.『希望は戦争』という衝撃的,というより挑発的なタイトルで論壇にデビュー?したお方のようだ.私の第一印象は,『ああ,内田樹とおんなじだ』であった.内田氏は『格差なんてないよ』だし,赤木氏は『格差社会の被害当事者からの告発』ということのようだから,立場的には正反対の形をなしている.『おんなじだ』というのはレトリック的なものがである.
そしてこの人の文章を少し読んで浮かんだのが,『石原慎太郎』.これは以前の記事,「慎太郎さんの『... [続きを読む]
» 「最後の選挙」と小沢氏は言った そして東国原「徴兵制」発言 [とむ丸の夢]
朝、何気なくテレビのチャンネルを変えると、画面には小沢一郎さんの大きな顔が。うん? と思ってなおも見ると、鳥越修太郎氏らを前に生出演でした。見逃した部分で何が話されたのかは分かりませんが、今、この時期のキーパー... [続きを読む]
» 日本と諸外国ではこんなにも選挙制度・行政システムが違うのか! 「目からウロコ」のお話 [平和への結集ブログ]
2007年11月23日に、「開かれた議会をめざす会」主催シンポジウム「『議会基本条例』を考える!!-そのあり方と活用の仕方について-」で、友人の田口房雄さんが選挙制度の話題を提供しました。その様子を収めたビデオです。
YouTube版もあります:
http://www.youtube....... [続きを読む]
アルバイシンの丘さん
ご紹介及びコメントありがとうございました。
記事読ませて頂きました。
納得できる内容です。
赤木さんが納得するかどうかです。
記事と貴コメント欄にも書きましたがご紹介頂いた土曜日の会には参加しようと思っています。
機会があれば赤木さんと話してみたいと思います。
今後ともよろしくお願い致します。
投稿: 大津留公彦 | 2007年11月29日 (木) 08時44分
こんばんわ.いつも興味深い記事,ありがとうございます.赤木さんのことについて記事を書きました.即席なので誤解が多いことを懼れています.ご指摘くだされば幸いです.
投稿: アルバイシンの丘 | 2007年11月29日 (木) 01時16分
JUNSKY さん
コメントありがとうございます。
ご指摘ありがとうございます。
心します。
あえて言いますと
この2つのブログを紹介する事が大事だというのが私の考えです。
投稿: 大津留公彦 | 2007年11月26日 (月) 00時46分
赤木智弘さんは、確か 雨宮処凛(あまみや かりん)さんの本「オールニート・ニッポン」にも登場していたけど、彼のオリジナリティは寧ろ左翼にあったが、現在の左翼の状況に飽き足らず、衝撃的発言(「論座」への投稿)を行って、世の人々を覚醒させようとしてような感じで読み取りました。
決して右翼的・靖国派的「自衛隊万歳・戦争万歳」では、無いようです。
ところで、相変わらず大津留公彦さんの考えが記事の中のどれなのかが良く解りません。
引用が多くて・・・
投稿: JUNSKY | 2007年11月25日 (日) 17時42分