米英経済の不振は10年続く?
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★アメリカ発の世界不況
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最近発表された12月期のアメリカの失業者数は、前年同月比13・2%増
となった。米経済はこれまで、失業者数が13%以上の増加になると、必ず不
況に陥っている。住宅着工は約30年ぶりの激減だ。アメリカの消費者は、
16年ぶりに消費を減らし始めた。経済統計から見ても、米経済は今後かなり
ひどい不況に陥ることが見通せる米政府は、消費と投資を誘発するため、減税を中心とした総額1500億ド
ルの財政的な景気対策を行うことにしたが、この対策は効果が薄く、時期的に
もう遅すぎるとも指摘されている。景気対策の発表後、米株は失望売りで下落
した。アメリカの今の政権と議会は、産業界や農民、医者などが作る各種の政治圧
力団体(ロビイスト)からの要請に弱いことで有名だ。911後のテロ対策や、
2005年のハリケーン復興など、特別枠の予算の多くは、本筋とあまり関係
ない業界への利益誘導に使われている。今回の景気対策も、議会で、各種の利
権のひも付きになっている議員たちにいじり回された挙げ句、景気対策とはほ
ど遠い予算の無駄遣いになる可能性が高い。
▼倒産が倒産を呼ぶ
シティグループの概算によると、高リスク債による資金調達ができないため、 アメリカの企業倒産率は、09年初には4倍の5・5%にはね上がると予測さ れている。20社に1社が倒産するということだ。しかも、シティグループの 概算には「不況」が勘案されていない。不況で倒産が2倍になったとすると、 倒産率は10%になってしまう。
▼米英経済の不振は10年続く?
この金融崩壊が続く限り、不況も悪化する。少なくとも今年いっぱいは、タ
マネギの皮を一枚ずつむくように金融危機が拡大していくのではないか。金融
崩壊が一段落した後、不況も一段落するだろうが、欠陥が露呈した以上、証券
化のシステムが復活して米英経済が昨年までの強い状態に戻る可能性は低い。
いずれ別の金融システムが構築されれば復活するかもしれないものの、米英経
済は下手をすると今後10年は不振が続く。
▼長期的にはデカップリング
アメリカは戦後ずっと、世界中から旺盛に商品を買い続け、大消費国として 世界経済を牽引してきた。牽引役が失われるわけだから当然、アメリカの不況 は世界の不況になる。日本もEUも、経済の減速が予測されるようになり、こ こ数日、ユーロの為替も下がっている。(日本は、米株の購入資金作りに使わ れていた円キャリー取引が清算され、円高になっている)
日欧も今年は不況に陥りそうだが、金融危機は併発していない。日本は、
90年代のバブル崩壊後の金融界の慎重さが幸いし、金融機関は高リスク債をあ
まり買っていない。欧州では損失を出す金融機関が出たが、全体として見ると、
たとえばドイツでは、企業の投資の90%は内部留保を使った自己資金であり、
イギリス以外では債券発行は少ない(フランスでは60%)。中国やインドなどの新興経済大国も、対米輸出が減って経済が減速するだろ
う。年明けからの世界的な株安傾向を見ると「アメリカが消費しなくなっても、
その分を新興大国が消費するので世界経済は高成長し続ける」というデカップ
リング説は、短期的には間違いだったことがわかる。昨年来の危機でアメリカの金融機関の株価が半値になり安値感があるので、
中東産油国や中国の政府投資基金(SWF)がさかんに米金融機関を買収して
いる。だが今後、金融危機はもっとひどくなり、金融株はもっと下がることを
考えると、彼らは高い買い物をしている。これらの問題はあるが、中長期的に考えると世界経済は、中国、インドやそ
の他の大小の新興国の人々が、貧乏人から中産階級へと上がっていく際の消費
力によって牽引されていくしかない。世界経済が今後、アメリカ発の世界不況
から立ち直れるとすれば、そのシナリオは、世界経済の中心がアメリカからア
ジアなどの新興市場に移ることになる。デカップリング説は、短期的には間違
っていたが、長期的には当たっている。
▼「新しいT型フォード」
先日、インドのタタ財閥が、10万ルピー(約25万円)という超安値の自
家用車「ナノ」の発売を発表した。フィナンシャルタイムス(FT)はこの車
を「新しいT型フォード」と呼んでいるが、この視点は示唆に富んでいる。1910年代に開発されたT型フォードは、世界初の大量生産の自家用車で、
当時アメリカに登場しつつあった中産階級が、世界経済を牽引する消費力の主
役になる転換点の時期に出てきた商品だった。FT紙がナノを「新しいT型」
と呼ぶ意味は、ナノがインドをはじめとする新興市場諸国で、中産階級として
登場しつつある人々が買う最初の自家用車になるかもしれない、ということで
ある。以前の記事( http://tanakanews.com/071225crisis.htm )に書いたように、
世界の消費を牽引してきたアメリカの中産階級は疲弊し、縮小しているが、そ
の代わりにインドや中国などで中産階級が登場し、彼らが世界の消費を牽引し
ていこうとしている。その象徴がナノであるというのが「新しいT型フォード」
の視点から読み取れる。ナノに対しては「途上国の人々がみんな自家用車を持ったら、排気ガスや地
球温暖化で大変なことになる」と、先進国の環境運動家が叫んでいるが、これ
は先進国の人間の傲慢であり、新興国の台頭を「環境保護」の名目で阻止しよ
うとしているにすぎない。「地球温暖化問題」が、イギリスなどの先進国が新
興国からピンハネするために誇張しているプロパガンダであるのと同じ構図で
ある。
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» 「死者冤罪のおそれ」--オーマイニュース・社会のトップ項目に [ペガサス・ブログ版]
オーマイニュースの「社会」のトップ項目に,ブロガー送信の記事が出ています.
物証を示さないまま犯人断定---佐世保の散弾銃殺人事件
死者冤罪のおそれ、ありませんか
http://www.ohmynews.co.jp/news/c/120
全文
http://www.ohmynews.co.jp/news/20080123/20039
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日本国憲法擁護連合 さん
メ-リングリストの記事を紹介しただけの記事に真正面からのコメントありがとうございます。
元々大学で経済学をまともに勉強しておらず「経済」なども読まず新聞しか読まない皮相浅薄の徒にはなかなか経済の分析は難しいです。
私に出来ることとしてはこれはと思う人の見解を紹介することだと思いますので今後も紹介して行きたいと思います。
投稿: 大津留公彦 | 2008年1月28日 (月) 08時34分
世界経済が結局ITバブル崩壊以降収縮過程にあるということではないでしょうか?
ITにせよ、バイオにせよ、サブプライムローンにしろ、何らかの投資先をもとめた過剰ドル(本質的にはインフレとドル暴落を意味する)を伴った一種異様な資金流動の本質は、実体経済の縮小にあるといっていいのではないでしょうか?
結局、2000年からずっと世界恐慌過程にあると表現してもいいのではないでしょうか?
70年代不況と似通っているだけではなく、1930年代の情況を参考にしたほうがよさそうな気配がします。
戦後体制はドル国際通貨体制とケインズ財政のもとで、相対的安定期を迎えていたがその終焉にきているといった感じがします。
ドル価値低下による国際通貨ブロックの破綻と通貨圏の分裂は、世界恐慌→世界大戦という歴史でも示されているように、あまりよいものではないというのが私の実感なのです。
私が下敷きにしているマルクス経済学は危機アジリっぽく聞こえかちなのですが、裏を返せば帝国主義の存亡をさぐる意味でも重要な糸口になりそうな気がしています。
九大OBの大津留さんには、久留間鮫造さんや向坂派や宇野派のマルクス経済学はきっと懐かしい感じがすることと思います。私は、今もマルクス経済学は有効だと考えています。
大津留さんは、『経済』などを読まれていることと思いますが、私もときどき『経済』を参考にすることがあります。
投稿: 日本国憲法擁護連合 | 2008年1月28日 (月) 01時43分