仲間たちへの責任感のセンスを育てよう(アインシュタイン)
ペガサス・ブログ版というブログがある。
いろんな事柄にどう見ているかが気になるブログである。
実は私がライブドア事件の野口事件の頃からwatchしてきたブログだ。
ファスレ-ン365の運動の提唱に応えてその運動に参加するようになってから実作者も存じ上げている。
そのブログの
アインシュタインのエッセイ「何故社会主義か」の全文を転載
という記事から
1949年の,アメリカの左翼月刊誌「マンスリー・レビュー」の創刊号に掲載された文章を読んだ。
その論旨の今日性に非常に感心した。
アインシュタインという人間をもっと知りたいと思った。
文章の後半の部分から紹介したいと思います。
現代の危機の核心を構成していると私が考える事を、簡単に述べておこう。それは、個人と社会の関係にかかわっている。各個人は、以前よりもずっと、自分が社会に依存していることを意識するようになった。しかしその依存の内容は、有機的な連帯や危険から守る力といったポジティブなものではなく、本来備わっている権利や経済的な生存をすら脅かすものと考えられている。さらに、その社会の中の位置は利己的な部分にますます力点が置かれ、元々弱い社会との連帯はますます弱められる。人間はみんな、社会の中の地位にかかわらず、社会との連帯が弱まりつつあることに苦しんでいる。気がつかないまま自分のエゴティズムに囚われて、人々は不安を感じ、孤独であり、ナイーブで簡単で持って回った様なものでない生活の楽しみを奪われている、と感じている。人間は、社会との関係に置いてのみ、短くて危険であるその生涯の意味を知ることができるのだ。
なかなか含蓄のある文章でライブドア問題やワーキングプア問題を読みながら思った。
私の意見では、今日の資本主義社会の経済的なアナーキーが悪の根元である。われわれの前には巨大な生産者の集団があって、その構成員は休むことなく ― 暴力的にではなく、法的に確立されているルールに概して忠実に従いながら ― 全体の労働の成果を互いに奪い合っている。この点から見ると、生産手段 ― つまり、消費財と余剰資本を生産するのに必要な全容量 ― が、法的にもまた大体において実際にも、各個人の私有財産である、ということが重要である。
簡単のために、以下の議論で私は「労働者」という言葉を ― 慣用とは少し違うけれども、生産手段を持っていない人という意味で使う。生産手段の所有者は、労働者の労働力を購入する。生産手段を用いて労働者は新しい財を生産し、それは資本家の所有となる。この過程の基本的なところは、両方を本当の価値で考えたときに、労働者が生産するものと彼が支払われるものとの関係にある。労働契約が「自由」である限り、労働者が受け取るものは彼の生産した財の本当の価値で決まるのではなく、彼にとっての最小限の必要と、資本家からの労働力の需要とその仕事に就きたいという労働者の人数との関係で決まる。理論的にも、労賃がその労働者の生産するものの価値で決まるのではない、ということを理解することは重要である。
これは私の理解するところの社会主義の基本的な考え方だと思う。
私的資本は集約されて、寡占状態に向かう。それは一つには資本家の間の競争により、また一つには技術的な発展と分業の増大が、小企業を犠牲にしながら生産単位を大きくするほうが有利であることによる。この過程の結果、寡占状態の私的資本の力は著しく増大して、民主的に組織された政治的な環境においてもうまくチェックすることができなくなる。立法院の議員は政党が選択するが、その政党は私的資本から財政的その他の援助・影響を受けていて、一方私的資本には選挙民を立法院からなるべく隔離しておこうと考える実際的な理由がある。その結果、市民の代表は特権を持っていない人々の利益を十分には守らない。さらに現在の状況では、私的資本が主要な情報源(新聞・ラジオ・教育)を直接・間接に操るということが不可避である。その結果、個々の市民が客観的な結論に達して、政治的な権利をうまく使うということは非常に難しく、多くの場合に全く不可能である。
これは現代の日本のマスコミの状況である。
こういうわけで、資本の私的所有に基づく経済社会で一般的な状況は、二つの主要な原則で特徴づけられる。第一に、生産手段(資本)が私的に所有されており、所有者はそれを勝手に使う。第二に、労働契約は自由である。もちろん、この意味で純粋な資本主義社会などというものは存在しない。特に、労働者が長く過酷な政治的闘争によって、あるカテゴリーにおいては「自由な労働契約」を改善された形に確保することに成功した、ということに注意すべきである。しかし全体としていえば、現在の経済は「純粋の」資本主義とそれほど違ってはいない。
生産は、使うためではなく利益を上げるために行われる。働く能力と意思のある者が全て、いつも職を見つけられるという保障はない。「失業者軍」はいつも存在しており、労働者は職を失う危険にさらされている。失業者・給与の十分でない労働者は利益の上がる市場を作らないから、消費財の生産には限界があり、その結果大きな困難が生じる。技術的な進歩はしばしば、全ての人の仕事を楽にするよりも、失業者を増やしてしまう。利潤のためという動機は、資本家同士の競争と共に、資本の蓄積と使用に不安定をもたらし、不況が深刻化することになる。制限のない競争は労働の巨大な浪費と、既に述べたような個々人の社会的意識の麻痺をもたらしている。/blockquote>国際的な投機でいかに世界の多くの発展途上の人々が窮乏に追いやられているか。
人々の社会的意識の麻痺は、資本主義の一番の害悪だと私は思う。われわれの全教育システムは、この害を被っている。過度に競争的な態度が学生に叩き込まれ、学生はその将来のキャリアの準備として、欲深い成功を崇拝するように訓練される。
私は、このような深刻な害を取り除くためには一つしか道はないと確信している。すなわち社会主義経済と社会の目標に向けた教育システムの確立である。生産手段は社会それ自体によって保有され、計画的に用いられる。社会の必要にあわせて生産する計画経済では仕事は能力のある全ての人々に分配され、全ての男・女・子供に生計のたつきを保証するだろう。教育は、各人が生まれつき持っている能力を花開かせるだけでなく、現在の社会が権力と成功に置いている栄光の代わりに、仲間たちへの責任感のセンスを育てようとするだろう。「社会主義経済と社会の目標に向けた教育システムの確立」
「現在の社会が権力と成功に置いている栄光の代わりに、仲間たちへの責任感のセンスを育てよう」
翻訳の問題もあるので性格にアインシュタインの意図が伝わっているかどうかがあるが経済と教育の関係を有機的に語っているのに感心する。
仲間たちへの責任感のセンスsense of responsibility for his fellow men という言葉が印象的だ。アインシュタインは立派な経済学者であり、教育学者でもある。
立派な学者とはそういうものだろう。
とはいっても、計画経済は社会主義ではないことを思い出す必要がある。計画経済は、個人の完全な奴隷化を伴うかも知れない。社会主義を実現するためには、非常に難しい社会―政治的な問題を解決しなければならない。 政治的・経済的な権力の極端な中央集中を考えて、官僚が全ての権力を収めて独善的になるのを防ぐことができるか。個人の権利をいかに守り、それによって官僚の権力に対する民主的なバランスを保つことができるか。
社会主義の目的と問題についての透明性は、この転換期において最も重要なことである。これらの問題についての自由で忌憚のない議論がタブーになりつつある現在の状況下で、この雑誌(Monthly Review)の創刊は社会的に重要なことだ、と私は考えている。ここについてはペガサスさんのこの指摘が参考になる。
このエッセイで古い点があるとすれば,計画経済に重点が置かれ,市場メカニズムの重要性が無視されていることだろう.今日,「市場原理主義」に反対する左翼であっても,市場メカニズムそのものの重要性,不可欠性について,これを否定する人はほとんどいないだろう.ここにアインシュタインの懸念に対する答えの一部が,もちろんごく一部だが,あるかも知れない.アインシュタインはルーズベルト大統領に原爆製造を進言した手紙を送っている
そしてそれへの深い反省から逆に原爆の廃棄を世界に訴えた「ラッセル・アインシュタイン宣言」を送っている。
科学者の探究心と良心とが上の文章を書かせたのだろう。
人間の知性とは何かを考えさせる文章だった。この文章を経済と教育の教材としたらいいと思う。
時間のある方は是非全文をお読み下さい。
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