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2008年10月24日 (金)

沢田五郎さんのご冥福を祈ります

沢田五郎さんが23日に亡くなった。

元ハンセン病患者でありその解決に指導的に努力した方だった。
又沢田さんとはお会いしたことはないが同じ新日本歌人協会に属する短歌の仲間だった。
最後の歌集となった「夜のほととぎす」を頂いていたが読んでいなかったので今日読んだ。
改めて無実の罪を着せられて生きてきたハンセン病患者の無念を共有した。
国と国民は意識は知識が足りないととんでもない不幸を作りだすことがあるという例証をハンセン病で作ってしまった。

沢田さんは1930年に群馬で生まれ10歳でハンセン病にかかり19歳から視力が減退し22歳で短歌をはじめ「アララギ」に入会し25歳で完全失明し35歳で新日本歌人に入会された。

歌集はこう出された。

第一歌集 37歳 風荒き中
第二歌集 50歳 朴のかざぐるま
第三歌集 59歳 その木は這わず(渡辺順三賞受賞)
第四歌集 66歳 まなうらの銀河
第五歌集 72歳 夜のほととぎす

「夜のほととぎす」はハンセン病という日本現代史の負の側面の意味を短歌という韻文で見事に芸術的に迫ってくる。

熊本地裁がらい予防法の強制隔離規定に「立法上の不作為の違法性」を認め、国に総額十八億円余の支払いを命じていたが、
地裁判決が示した「違法性」を認めない政府声明を発表しながらする国が控訴を断念したのは昨年12月の小泉総理の時代だった。

又この歌集の解説で沢田さんを赤木健介先生のあと支えた水野昌雄さんはこの歌集の魅力をこう書いている。

この歌集の魅力は何といっても人間沢田五郎の姿が率直に生き生きと示されていることだろう。
表現は率直にして端的、あるがままをとらえ、ほろ苦いユーモアを感じさせるものもあり、敬慕する土屋文明の発想を思わせるものがあるのだ。
小説家としての力量が示しているように、月々の作品はいつもテーマがあって、それをさまざまな角度からとらえて構成し、立体化して全体像を明らかにしているのである。
この歌集も小題毎にそうしたまとまりとなっていることがよく察せられよう。

「夜のほととぎず」から13首を選びました。沢田さんの思いを是非感じてほしいと思います。

      沢田五郎 第五歌集 「夜のほととぎす」

沖縄の気持ちはわかるが相手がある難しいだろうなあとはどこの国の首相

輪精管切除術看護生に見せつつなせしなり見つめつつ看護生なに思いけん

家族みな切れと言いたる園長あり癒さず絶やす政策のはて

嫌悪感かりたてきたるらい予防法撤廃し詫びただけではすまぬ

真っ白にきれいに焼けてるいい骨だ働いた骨だと言いつつ拾う

美しく歩みよき道あらんともためらわず我はわが道をゆく

暁闇にほととぎす鳴くこの日頃寝間にも山の香り漂う

疾病の一つにすぎぬに種を断ち人間を奪いし法ぞ裁くべし

「病気進まぬ治癒者も多いと聞きますよ」民雄宛て書簡に康成は書き

らい園に住み着くを見届けに来し母のついに畳に座らざりきという

特別病室に凍死させられし二十二人いまこの我に力貸せと思う

はかりがたくアジアを害し我が国を焼き滅ぼして滅びし思想

人間にこれで戻れたと湧きかえるテレビのなかの声にわが友がいる

沢田五郎さん ゆっくりとお休み下さい。過ちは決してくり返しませんから。


沢田五郎氏死去 歌人2008年10月24日(金)19:25

 沢田 五郎氏(さわだ・ごろう=元ハンセン病患 者、歌人)23日、自宅である群馬県草津町650の国立療養所栗生楽泉園で死去、78歳。群馬県出身。葬儀・告別式は25日午前10時から栗生楽泉園中央 会館で。葬儀委員長は入園者自治会会長の藤田三四郎(ふじた・さんしろう)氏。元ハンセン病患者として痛恨の生き方を暗示する歌集「夜のほととぎす」を 02年に出版した。


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