サラダ記念日は何故7月6日?
俵万智さんのこの歌について書きます。
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
たまたま七月六日のような感じがするが、この日は考えられた日だ。
7月7日の七夕の物語の日ではなくその一日前の日なのだ。
短歌をよむ (岩波新書)
にはこの歌の作成過程が書かれている。
最初は
1. カレー味のからあげ君がおいしいと言った記念日六月七日 次に 2.「カレー味がいいね」と君が言ったから今日はからあげ記念日とする そして 3. 「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
と変遷している。
実際の日付と料理メニューは、事実からは変更されている
七月六日という設定が巧みに考えられている。
何気なく作られたような万智ちゃんの歌には実は作歌の技術が散りばめられている。
万智ちゃんの「考える短歌」という本にはその奥義がある。
目次だけでもそのポイントがわかる。
[目次]
第1講 「も」があったら疑ってみよう; 第2講 句切れを入れてみよう、思いきって構造改革をしよう; 第3講 動詞が四つ以上あったら考えよう、体言止めは一つだけにしよう; 第4講 副詞には頼らないでおこう、数字を効果的に使おう; 第5講 比喩に統一感を持たせよう、現在形を活用しよう; 第6講 あいまいな「の」に気をつけよう、初句を印象的にしよう; 第7講 色彩をとりいれてみよう、固有名詞を活用しよう; 第8講 主観的な形容詞は避けよう、会話体を活用しよう
万智ちゃんのホームページである俵万智のチョコレートBOXの「万智の交遊録」の第20回の丸谷才一さんの項に
七月六日とサラダ記念日についての記事がある。
松尾芭蕉の「文月や六日も常の夜には似ず」という句(明日が七夕だと思うと、六日の今晩もいつもと趣が異なり何となくしっとりした感じがすることだ)を引用して、「七月六日はサラダ記念日」という歌は、この句を踏まえていてなかなかよろしい、と書かれていたようです。
万智ちゃんはこの句を知らなかったようですが七月六日を選んだ理由は、まさに芭蕉と同じ気分だったようだ。
「恋人同士の記念日に七夕というのでは、芸がない。けれど前日というのなら、その香りを分けてもらえる程度で、グッドなんじゃないかと考えた」
そうです。
また、この歌は、小田島雄志先生からは「シェイクスピアをふまえていて、なかなかよろしい」と褒められたこともあるそうです。
これも万智ちゃんは知らなかったそうですが、シェイクスピアの中に「我が青春の日々よ」といった意味で「salad days」という表現があるらしいのです。
これは アントニーとクレオパトラ にあるこの台詞のようです。
▪ My salad days, When I was green in judgment ありゃわしの、まだ分別の青かった生葉の頃ぢゃ(クレオパトラ、第1幕第5場)
ちなみにこの交友録は現在40人が登場しているがなかなか面白いです。
この40人です。
第40回=中西進さん
第39回=荒木とよひささん
特別編 =安原顕さん
第38回=竹内義和さん
第37回=鹿島茂さん
第36回=立松和平さん
第35回=一条ゆかりさん
第34回=柳美里さん
第33回=東儀秀樹さん
第32回=山本容子さん
第31回=小泉純一郎さん
第30回=福島敦子さん
第29回=加賀美幸子さん
第28回=安野光雅さん
第27回=江國香織さん
第26回=松尾スズキさん
第25回=永作博美さん
第24回=田崎真也さん
第23回=ドリアン・T・助川さん
第22回=林真理子さん
第21回=鷺沢萠さん
第20回=丸谷才一さん
第19回=北杜夫さん
第18回=星野富弘さん
第17回=平地勲さん
第16回=南こうせつさん
第15回=岩城宏之さん
第14回=野田秀樹さん
第13回=鴻上尚史さん
第12回=吉永小百合さん
第11回=森啓次郎さん
第10回=黛まどかさん
第9回=小林恭二さん
第8回=松本侑子さん
第7回=辛島美登里さん
第6回=稲越功一さん
第5回=森雪之丞さん
第4回=新井満さん
第3回=岡本真夜さん
第2回=椎名桔平さん
第1回=岡部まりさん リンク・引用について
現代短歌研究会「ミューズへの挑発」勉強会第二回は
2010年2月26日(金)俵万智 報告者 藤田喜佐代
場所
柏駅西口 喫茶コンパル 18時半から
です。
見学を歓迎します。
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