湯浅誠さんの「どんとこい貧困!」を読んだ(その2)
湯浅誠「もやい」「反貧困ネットワーク」事務局長
喜八ログより
「どんとこい貧困!」の感想文第二回目です。
前回は前半の自己責任論について書いたので今回は後半の活動家論を書きます。
(ご参考前記事 2010年3月 4日 (木)湯浅誠さんの「どんとこい貧困!」を読んだ。)
まず「活動家って誰?」というセクションから「活動家」の紹介です。
——
活動家って誰だろう?
「活動」とは、これかな?と思ったことについて掘り下げ、いろんな人たちに呼びかけ、仲間を集め、広く社会に訴えること、「私たちはこういうやり方がいいと思うんだけれど、皆さんはどうですか?」と問いかけること。そしてそれを社会的に、みんなに関わる仕方で、進めようとするのが「活動家」だ。
——
皆さんはどうですか?
更に「背中の当たりがゆったりと」というセクションから紹介です。
—
自分の意見には、自分の人格の一部が乗っかっている。自分の人格と完全に切り離された意見に迫力は無い。でも、その意見が人格のすべてじゃない。(中略)
私たちの社会は、意見にその人の人格の全てが乗っているように考えすぎるのかもしれない、と思う。だから、意見が違うと仲違いにしちゃうし、間違った意見は言えないと感じるし、それにもかかわららず意見を言う人たちに対しては、意見を言っているというただそれだけのことで、とても重く感じてしまう。現在の活動家が煙たがられる理由も、ここらへんにあるのかもしれない。(中略)
同じ状況下でも、どこかでそれが自分の全部じゃないという留保がかかっている人がいる。「私もいいかげんですけどね。へへ」っていうところが残っている。それを比喩で言うと「背中のあたりがゆったりとしてる」ということになるんだろうと思う。
——
湯浅さんの言葉を使うと「態度にも“溜め”を」という事でしょうか?
少し話は違いますが
小説や戯曲を書く時の心構えとして井上ひさしさんの執筆机の前に貼られているメモにこんな物がある。
むずかしいことをやさしく
やさしいことをふかく
ふかいことをおもしろく
2009年5月20日 (水)
ふかいことをおもしろく
「背中のあたりがゆったりとしてる」とはこういうやさしさや、ふかみや、おもしろさに通じるものがあるのではないだろうか?
——
それは真剣じゃないということとはちがう。真剣だし、大まじめだ。でも「こうだろう」という意見をいいながら、でもどこかで「そうじゃない意見もあるでしょうね」ともう一歩引いた視点をもっている。我を忘れてはいない。反対意見を受け入れる余地(“溜め”)がある。
——
本当のインテリジェンスを持った人というのは自分自身を客観的に見れる知見を持っている人の事だろう。
——
黙らせること。それが自己責任論の目的だった。私たちの目的は逆だ。しゃべってもらうこと。モノ言える社会にしていくこと。自己責任論と同じになっちゃいけない—— 反論をむしろ引き出し対話し問題意識を共有する事が大事なのだ。
この本に日比谷の派遣村で大声を出す人のことが書かれていたが、湯浅さんが話を聞く事で彼が話を聞いて欲しい為に大声を出していた事がわかり、段々普通になり、最後には彼は派遣村のスタッフになってみんなを助ける側に回る。
派遣村の経験の中で助けられた人が助ける側に回ったという話を何度か聞いた。
これこそが「助け合う社会」なのではないだろうか?
(ブログ論壇でもこの事は全く同じだ。私はコメントもトラックバックも引用も一切フリーにしているがこれはこの考え方と同じだと思う。双方向でなければ問題は切り捨てる事は出来ても解決は出来ない。)
(このブログでも「北の友人」のように激しい論争の中で「友人」になった人もいる。(よね))
(この問題は人間は性善説か性悪説かという議論にも発展するかもしれないが、ここでは言わない。)
最後の方で湯浅さんは市民社会のルールをこう提案している。
——
① 自分の意見に自分の人格を埋没させない。真剣に意見を主張しながら、でもどこかで「反論をどうぞ」という余地)“溜め”)を残しておく。
② 意見を交わす相手の“溜め”を増やす。一方的に説き伏せても相手の“溜め”は増えない。“溜め”が増えれば関心が広がる。それが、自分が大切にしているテーマに対する尊重につながる。
—
ここでも“溜め”を増やす事を言っている。
しかも相手の“溜め” を増やすと。
その中から幅広い合意が形成されるのだろう。
この本の最後のパラグラフを紹介します。
この本の総まとめとも言える部分です。
——
そのルールを守るのが「市民」で活動家(アクティビスト))や「プチ活動家」たちは市民の中の市民だ。そうして初めて試合が成立する。
そのフィールドが「市民社会」—私はそんな社会を夢想する。それはきっと、いまよりもずっと、生きやすく暮らしやすい社会なんじゃないか、と。もっとずっと貧困の少ない社会なんじゃないか、と。“頑張り地獄”から“ずるさ狩り”へ、そんな生きずづらく暮らしにくいルールは、もう変えちゃったほうがいい、と私は思うんだけれど、あなたはどう思うだろうか?っして、あなたのまわりにいる家族や友人は、どう思っているいるだろうか?ますは話してみて、そして相手の意見も聞いてみないか?「反論をどうぞ」と促してみないか?反論してもらって、考えを深めてみないか?
私たちの社会は、そこからはじめて立ち上がる。
——
あなたもアクティビストを一つ如何ですか!
湯浅さんには「問いかける」アクティビストとして是非都知事になって欲しいと私は思っています。
以上
参考
● 紙屋研究所_湯浅誠『どんとこい、貧困!』
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