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2010年7月14日 (水)

いづこにも貧しき道がよこたはり神の遊びのごとく白梅(哀悼玉城徹さん)

歌人の玉城徹さんが亡くなった。

短歌のことはお詳しくない方が多いでしょうから少し説明します。

玉城徹さんは北原白秋の弟子で「多摩」という歌誌に参加し「多摩」解散後はどの結社にも属さず、78年に歌誌「うた」を創刊した歌人です。
毎日歌壇の選者を長年やられていました。

(私も学生時代から数年「多摩」を継ぐ短歌結社である「コスモス」に参加していました。玉城さんとは白秋の流れをくむ仲間だった事になります。又、今手元にありませんが私の属する短歌同人「炎」の創刊直後の号にすばらしい激励の言葉を寄せて頂いた事も記憶にあります。)

玉城徹の歌集『香貫』(短歌新聞社文庫、2000年)にはこんな歌があります。

濃緑に樅の木をゑがきその枝に若き一人の女立たせつ  

この寺や不動明王を置く堂に梵鐘釣れりしら梅の花

森を来て歩みとどめつ常磐木に紅き巻き芽の立ちのぼるへに

鳴り出づるものの音(ね)のごと人の声めづらかなればわれは聴きつつ


一貫して「我」というものの存在が強烈に意識されている歌人でした。


また良い歌とは何かに付いてこう書いています。
短歌実作者には参考になるでしょう。

「よい歌とは何かと問われたならば、私は、それは一口に言って、『使用に耐える歌』だと答えたいと思います。茶碗を毎日使うように、歌を毎日使ってごらんなさい。すぐに納得がいきますよ。毎日おなじ歌を口に唱えてみるとよいと思います。よい歌は何べん誦してもいやな気がささない。いやな気がささないだけでなく、読むたびに私達に何かを与えてくれます。その何かを生きる上での力とよんでもいいし、あるいは生きることについての理解とよんでもかまいません。もしくはもっと簡単に勇気とか、力の更新とよんでもよいでしょう」
(短歌実作者の部屋)

啄木の「食らうべき詩」(青空文庫 弓町より)という文章に通じるものを感じます。

『木香薔薇』2007年第18回 斎藤茂吉短歌文学賞受賞した花山多佳子(はなやま・たかこ)さんは長女、『屋上の人屋上の鳥』で2008年の第16回 ながらみ書房出版賞を受賞した花山周子さんは孫です。(娘や孫がこういう風に同じ路線を行っている事が誠に羨ましい)
いずれも塔短歌会に属しています。

玉城徹さんの仕事はこのお二人によって立派に顕彰されて行くでしょう。
合掌!
各ニュースから

玉城徹氏死去(歌人)
 玉

城 徹氏(たまき・とおる=歌人)13日午前11時、肺炎のため静岡市の病院で死去、86歳。仙台市出身。葬儀は15日午後1時30分から静岡県沼津市下香貫前原1495の1のセレモニーホール平安香貫斎場で。喪主は長男男志等(おしと)氏。
 北原白秋らに師事。作歌の傍ら、正岡子規や白州らを研究した。歌集に「樛木(きゅうぼく)」「われら地上に」、評論集に「近代短歌とその源流」など。歌人の花山多佳子さんは長女。
(2010/07/13-20:50)

時事ドットコム
(白州は白秋の間違いだと思われる)

玉城徹さん=歌人
 

歌人の玉城徹(たまき・とおる)さんが13日午前11時、肺炎のため死去した。86歳。
 告別式は15日午後1時30分、静岡県沼津市下香貫前原1495の1セレモニーホール平安香貫斎場。喪主は長男、男志等(おしと)氏。
 仙台市生まれ。北原白秋に師事し、東大卒業後、教員生活のかたわら、正岡子規や白秋を研究した。1978年に歌誌「うた」を創刊して主宰。84年から2008年まで毎日歌壇の選者を務めた。
 歌集に「樛木きゅうぼく」(第24回読売文学賞)、「われら地上に」(第13回迢空賞)、「香貫」(第24回現代短歌大賞)など。歌人の花山多佳子さんは長女、花山周子さんは孫。
 代表歌に〈いづこにも貧しき道がよこたはり神の遊びのごとく白梅〉。

(2010年7月13日23時15分  読売新聞)

最後に短歌雑誌「歌壇」に嘗て掲載された小池光氏との対談の中の玉城さんの明確な文章を紹介します。

「いかに高度であろうとも、資本主義であるかぎり、ブルジョワとプロレタリアという階級関係は存在しないわけにはいかない。

それを把握するのは理論の力であって、日常生活実感ではない」「短歌の作者とは、こうした理論に対する熱意をもって生き続ける知識人であるべきだ。

結論は、自分をプロレタリアの側に置くべく心掛けるという一事につきる」

^^^^
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コメント

hamhamさん

本記事と短歌に興味を持って頂いてありがとうございます。
新日本歌人(月刊・月850円)と炎(年二回・1000円)の購読をお勧めします。

是非短歌を作って送って下さい。

大津留さん。今日は。

本記事で、短歌に関連しいろいろと貴重な示唆を与えられました。有難うございます。短歌の三十一文字 という形式には大変魅力を感じます。人は、「表現」を媒介として、直感を磨き、論理、理論をより深く形成し、自分を成長させ、歴史を創っているのではないかと勝手に思っております。私達現代人は優れた先達を沢山持っているのですね。いろいろと彼らの価値あるものを吸収させていただきながら、成長出来ればいいなぁと念じております。折角、人間は「豊かな感性に裏打ちされた理性」を有している存在ですから。

後になってしまいましたが、玉城徹さんのご冥福を心よりお祈りいたします。合掌

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