渡辺順三+矢代東村
我が現代短歌研究会の「続・続 歴史の中の短歌 水野 昌雄 (著) 」の第二回目の学習会が今夜終わった。
1月はこれで
第一回 2011年1月27日(木) (済)
短歌論(「奴隷の韻律」考、写実の今日的意義、「アララギ派」のこと、新短歌の歴史的寸評、「アララギ」終刊をめぐって)
報告者 大津留公彦
今日はこれだった。
第二回 2011年2月24日(木) (済)
歌人論(渡辺順三、矢代東村)
報告者 藤田貴佐代
水野昌雄さんの渡辺順三本人との交流秘話も紹介され、渡辺順三という人の人間味溢れる人物像を彷彿とさせるものがある。
特に「転向」についての順三の柔軟な話は現業労働者としての立場から出る真実を含むものなのだろう。
以下引用です。
詫び状を書いて釈放されまた活動すると捕まるといった話の後こう続く
「人間の思想を器用に変えてゆく人も中にはいるが、普通の人間なら変わらないよ、とも言ってのけた。これは観念的な転向論とは異なったしぶとい抵抗力であり、そうした信念を正直に自分の弱さとともに述べているところが順三らしさであった。」
こんな歌です。
ポケットの中で 握りしめている手が汗ばんでいる。 烈風をつきぬけ つきぬけ 僕は歩いている。
てのひらに堅きタコあり あわれわが 十六年の錐もむ仕事
順三はポケットの歌のような口語自由律から錐もむ仕事の歌のような口語定型に歌い方を変えている。
水野さんは順三の数多い著作の中から三点をあげるとするならこの三点だという。
1。歌集「烈風の街」
2。「定本近代短歌史」
3。短歌的自伝と名前を付けた「烈風の中を」(「新日本歌人」に1950年から10年間連載されたもの)
短歌愛好家には充分学ぶ価値のある本である。
ーー
順三の命日は2月26日です。
今年の順三忌は
日時:2月27日(日)13時〜
場所:東京都港区元麻布3-5-16の長玄寺
参考
2009年順三忌
ーー
口語自由律短歌を生涯作り通した八代東村の歌を紹介しよう。
飛行船が 来たと言って騒ぐ。 百年もたって こんなこと話したら どう思うだろう。
(どう思いますか?
この歌は大正4年に作られていますからほぼ百年前です。
今はfecebookが来たと言って騒いでいますが。。。)
広いー 広いー 小麦畑だ。コンバインだ。 快走するコンバインだ。 空は青いんだ。(順三さんの教えを受けた藤田喜佐代さんによると順三は東村のこの歌を再三引用して自由律の代表的な歌として褒めていたという。)
検束。
検束。
また検束だ。しかし思へ。検束しきれないものを
みなが持っている。
(小林多喜二の小説「1928年3月15日」で描かれた共産党弾圧事件を短歌で弁護士の東村は表現した)
二月の
風の強い街だった。
夜だった。
別れて来た手にのこる
うつり香だった。
(東村にはポエジーがある。こんな歌を作る東村の人間的な幅を水野さんは感じている。)
ーーー
2007年日本民主法律家協会の法民賞を柳沢尚武さんの
「矢代東村短歌で治安維持法体制に抵抗した弁護士(上・中・下)」
が受賞した。
裁判例と短歌をこれほど見事に融合させた論文は見た事は無い。
弁護士さんが短歌を使って論文を書くという事がユニークだと思う。
庶民弁護士だった矢代東村も草葉の影で喜んでいるだろう。
以下参考
柳沢尚武殿
あなたは、「法と民主主義」2
006年5月号、6月号、7月号で、
あの暗黒の戦時下において短歌で
もって治安維持法体制に抵抗した
弁護士矢代東村を発掘・紹介され
ました。
日本国憲法第9条2項などが危
機にある今日、あなたの論稿は、私
たちの平和憲法擁護運動の展開に
豊かな示唆と大きな励ましを与え
るものです。
本賞を授与して顕彰いたします。
◆柳沢尚武弁護士
矢代東村との出会いは、「名歌選」という文庫の中に、
6~7人のプロレタリア作家の歌と一緒に東村の歌がのっ
ていた。また、昭和51年に出た弁護士100年という
写真集の中に、人民戦線事件の紹介とともに、東村の歌
の短冊が掲載されていた。そんなことから、興味をいだ
き、書きためていました。当初「自由と正義」に掲載を
依頼しましたら、3000字に縮小せよとのこと、「法
民」に泣きついた結果、この受賞となり、大変名誉に思っ
ています。
東村の歌の「旗だちょうちんだみんな小学生
の思考になる」と、大岡昇平の言葉に「戦争をしらない
人間は半分は子供である」という言葉に戦争を見る確
かな目を共通に感じます。戦争は、ものを考える力を人
民から奪うものだ、東村が歌に託したものは、きっとそ
ういうことだったように思います。
ここで全文が読めます。
ーーー
来月の勉強会の予定はこれです。
第三回 2011年3月24日(木)
歌人論(佐々木妙二、「渡辺順三・坪野哲久・矢代東村・浅野純一)、赤木健介、岩間正男)
報告者 本田幸世
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» 「TPP」 (環太平洋経済連携協定) に反対する声を一般紙もようやく [JUNSKYblog2011]
2011年2月25日(金)
【赤旗】が3カ月キャンペーンを組むと世論になると言うが、
「TPP」 (環太平洋経済連携協定) に反対する声を一般紙もようやく
取り上げ始めた。
今日の朝日新聞では、共産党の動きは無視しながらも、
党としては推進派である民主党の国会議...... [続きを読む]
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