わかぬ
昨日友人から現在左のハイクブログに掲げている。
椿落つ
咲き盛るとも
わかぬ間に
という俳句の意味が分からないと言われました。
わかぬという言葉があるのかとも言われましたので解説します。
【わかぬ間に】というのは「見分けがつかないうちに」という意味です。
源氏物語で有名な紫式部の新古今集の歌にこういう歌があります。
めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に
雲がくれにし 夜半(よは)の月かな
この歌は小倉百人一首の(57番)にあり『新古今集』雑上・1499にあります。
意味は
せっかく久しぶりに逢えたのに、それが貴女だと分かるかどう
かのわずかな間にあわただしく帰ってしまわれた。まるで雲間に
さっと隠れてしまう夜半の月のように。
この末尾の「つきかな」が、本来の紫式部集では「つきかげ」だったようだ。
井上宗雄「百人一首を楽しくよむ」(笠間書院)には「流れやすい詠嘆の「かな」より、きらめく月光を示す「月影」のほうがよい」と書いてあります。
変体仮名の「な(奈)」と「け(个・介)」を写し間違えた可能性もあるのではないかと指摘している意見もあります。
「わかぬとは」で検索していて、面白かったのはこの歌の一部が堺利彦の「獄中生活」の中で使われていたことです。
折角看守から返してもらった眼鏡が折れてしまい嘆く場面です。
こうです。
「「見しやそれとも分かぬ間に、雲かくれにし夜半の月」「たまたま会いは会いながら、つれない嵐に吹きわけられ」失望落胆、真にたとえるにものがなかった。」と書いている。
それくらいこの歌が流布していたという事だろうし、また堺利彦には百人一首の歌の知識があったという事だろう。
なお
この椿の俳句に込めた私の思いは全く個人的な思いであり説明すべきものではないことです。
参考
長岡京小倉山荘
『ちょっと差がつく百人一首講座』
http://www.ogurasansou.co.jp/site/hyakunin/057.html
参考
堺利彦「獄中生活」
yahoo知恵袋
紫式部の和歌 百人一首で唯一、紫式部の歌だけ空んじることができます
夜に追記)
今日の新日本歌人協会全国幹事会で一緒になった人とこの「わかぬ」の話をしていたら、すらすらとこの百人一首の歌を諳んじた。
百人一首をやった人はこの歌は知っているという。
なぜなら「め」は「決まり字」で最初が「め」で始まる歌はこれしかないという。
「一枚札」というそうです。
ちなみに決まり字は以下7つのようです。
村雨の 露もまだひぬ 真木の葉に
霧立ちのぼる 秋の夕暮れ
住の江の 岸による波 よるさへや
夢の通い路 人めよくらむ
めぐりあひて 見しやそれそれとも わまぬ間に
雲がくれにし 夜半の月かな
吹くからに 秋の草木の しをるれば
むべ山風を 嵐といふらむ
さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば
いづこも同じ 秋の夕暮れ
ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば
ただ有明の 月ぞ残れる
瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の
われても末に あはむとぞ思う
文の最初をつなげて
「む」「す」「め」「ふ」「さ」「ほ」「せ」
と覚えるそうです。
参考
百人一首の本番で使える覚え方教えてください。
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» TPPと農業再生/情報も説明も足りない [JUNSKYblog2011]
2011年2月27日(日)
今日も【TPP】 (環太平洋連携協定) についての続報です。
私がメルマガを購読している(購読といっても実は無料だが)
【河北新報】が、このブログ記事の表題にした社説を本日掲げている。
内容の全てが賛成できるという訳ではないが「情...... [続きを読む]
JUNSKYさん
コメント有り難うございます。
「分かぬ間に」のようですね。
分んないけど。。。
投稿: 大津留公彦 | 2011年2月28日 (月) 00時20分
「わかぬまに」を漢字混じりに置き換えると
「解ぬ間に」 解らないうちに・・・
となるんでしょうね。
投稿: JUNSKY | 2011年2月27日 (日) 11時52分
斐山さん
初コメント有難うございます。
又毎日読んで頂いているとの事有難うございます。
毎日読むに耐える記事を書かねばと思います。
どしどし御指摘下さい。
投稿: 大津留公彦 | 2011年2月26日 (土) 18時26分
最近、貴男のブログを毎日見るようになりました。「わかぬ間に」、勉強になりました。 万葉集、百人一首も好きで、最近短歌にこりだしています。叙情歌好で古語をもっと勉強して作歌します。
投稿: 斐山 | 2011年2月26日 (土) 13時35分