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2012年2月15日 (水)

福田穂 歌集 「海・街・工場」

福田穂 歌集 「海・街・工場」を読み終ったので気になった歌を紹介します。

「ここに 俺がいる」
そう叫びたい気持ちで
ぐっ ぐっ と
人を 追い抜く

"ブル新"と言いきりながらも
生活をささえてくれる
この割りきれなさが
"ハタ"をひろげる

黒板に
メーデーばんざい と書いてあり
寮の食堂に
早起きの顔があつまる

馘首状
封筒のまま つき返し
局長の眼の おきどころ
見極める

非合法紙の製版をし
「アカハタ」の題字もつくった
ある日の仕事を
ーひそかに かみしめ

言い放つ"死刑"の声は
抑揚もなく
裁判長 あなたは感情を
どう、おし殺すのか

いたいほど冷たい氷片を
口にうけ
妻のくちびるの
しろさを みつめる

君の、胸の、
厚いふくらみにひそむもの
安保阻止と知れば 組む
深夜の隊列

一九六一年四月
「ガガーリン」
「衆」 うまれたり
新しき時代を 生きる名

家を出た俺の生き方を
憎んだままか
骨となっても父は 崩れて
箸に つかませない

この歌集は1946年から1973年までの人民短歌と新日本歌人などに掲載された歌でなっており私の新日本歌人入会前であり歌の背景は共有していない。しかしレッドパージや松川事件や安保闘争などの戦後生まれ世代が同時代では知らない戦後の日本史を当事者の歌でなぞる感じがある。

啄木から始まる口語行わけの短歌は新日本歌人始め現在に引き継がれて居り、俵万智などの現代の口語の歌も広く言えばその流れの中にある。
福田穂さんはその流れの中に確かな位置を占めていると思う。

朝日新聞を解雇された福田さんのこの歌は朝日歌壇に掲載された歌として「レッドパージ」という本に引用されている。

 いささかの自負持ちて生きて来し顔ぞ伏せることなしレッド・パージ三十周年

古い事件であり最近の学校教育ではちゃんと教えられてないことだろう。
だからこそこの歌集の文学的及び歴史的意味がある。

この本は横長の形をしている。
会社で読んでいたら「長唄の教本ですか」と言われたが正にそういう感じの本だが、この行わけの形にはこの体裁が最も相応しいと思う。

福田穂は亡くなりました。
私の個人的な思い出を書きます。

私が新日本歌人の歌会1970年代の東京歌会での金丸辰雄さんとの軽妙なやり取りが強く印象に残っています。
又、蝶ネクタイを締めてバリッとした姿で丸の内の丸ビルの近くでばったり出会った事がありました。歌謡曲の作詞なんかをやっていると笑って言ってました。
後で八代亜紀さんの歌の作詞などを福田みのるの名前でやっていた事を知りました。

私は「新日本歌人」誌上で自由律と定型を毎月交互に出していた事がありますがそれを「大津留君はいろいろ模索をしているようだ」と選後評に書いて頂いた。きっと自由律の歌を作るように励まして頂いたのだと思っている。

私は昔、母がワープロ打ちをし私がコピーし今はなき父が製本した母子歌集「産後三日の母」を50冊作ったが手元には一冊も残っていなかった。
しかし福田さんが亡くなってから奥様から藤田喜佐代さんを経由して私の手紙が付いていたからと届けられた。
その歌集を福田さんが大事に保管して頂いていたことに感謝し、亡くなられてから私の手元に戻って来た事にも感謝したことである。

ふくだ・ほさんこと福田みのるさんこと福田穂さんの冥福をお祈り致します。

「ふくだ•ほ」が
 自由律に賭けた熱い思い
  私も少し感じてみたい  公彦


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