「前向きに人生の秋」(俵万智)
「俵万智3.11短歌集 あれから」(今人舎)を読んだ。
一大ブームとなった「サラダ記念日」のヒット以来半世紀となる彼女の新境地を開く最新歌集だ。
彼女は地震の時に仙台に住んでいたが8歳の子どもを連れて地震後沖縄に飛び、今は石垣島に住んでいる。
3月14日付けの読売新聞に「前向きに人生の秋」という彼女のインタビュー記事が載っていた。
彼女は震災前にtwitterを始めたが南に逃げて行く行動に「自分だけよければいいのか」などと批判されたがこのインタビューで「自分にとって一番大事なのは息子を守ること」と言い切っている。
彼女の行動には説得力がある。
シングルマザーであり身軽である事と、短歌で食える唯一に近い歌人である事がなせる技とも言えるが彼女の行動と短歌はこの震災後に日本人が取ったアクションの典型一つとして記録されるだろう。
この歌集から二首引用しよう。
<子を連れて西へ西へと逃げて
ゆく愚かな母と言うならば言え>
<まだ恋も知らぬ我が家と思う時「直ちには」とは意味なき言葉>
母の立場の高らかな宣言とそれを遮る者への怒りが作者らしい口語表現で形象化されている。
このインタビューの最後は先月刊行した彼女の歌集「風が笑えば」の文章を引用しこう結ばれている。
リアリズム短歌の真髄のような文章である。
「前は短歌で自分をどう表現するか考えていたけれど、今は自分が何者かはあまり考えなくなりました。自分の窓がどんな形をしているかじゃなくて、自分の窓からみえる世界をうつしていけば私の歌になるんだろうな、って」
最後の行の短歌はこれである。
<秋の陽に淡く満たされ野菊らは自分探しの旅を思わず>
彼女からは現代短歌研究会で彼女を取り上げた時に激励のメールを頂いた事がある。
同じ短歌実作者として大津留公彦は俵万智を今後もフォローする。
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