新日本歌人2012年3月号を読んで
新日本歌人2012年3月号を読んでの感想文です。
6つに分けて紹介&コメントします。
1.<特別企画>歌人78人に聞く「東日本大震災」
2.「選のあとに」から
3.今月の注目歌人
4.10首選
5.「全国幹事会への報告と提案」について
6「支部の息吹」の中で
です。
1.<特別企画>歌人78人に聞く「東日本大震災」
この企画はクリーンヒットだと思う。
いといろと勉強することが出来ました。
ある意味では短歌結社ではなく短歌運動体を標榜する新日本歌人協会にしか出来ない企画かもしれない。
幾人かのアンケートのポイントのみに抜き書きします。
短歌は機会詩である。新聞やテレビの映像などからではなく、作者の実体験から詠まれた作品は何れも重く生命の意義、短歌表現の可能性などを考えさせる。
(波濤)市村八洲彦
作る動機には喪失する虚無への抵抗がある。次に無念の死者を代弁したい思いも重なってくる。それらを表現する手段として、多くの人が短歌を選んだということには、改めて驚かされる。
(路上)佐藤通雅
震災後における己の内面の心理的変化について、時間をかけて詠むという、個の力を試したい。
(まひる野)篠弘
制作物としての映像がポータブルで手に入る時代、自分の目に見たこと耳に聴いたことと、できあいとのへだたりに、無関心でない方がいい。
(月鞠)辰巳泰子
社会的な出来事を詠うには「内面をくぐらせて、醸成させて」などと「新日本歌人」誌上で強調されていたことを、あらためて思い起こした。が、最も重要なのは「くぐらせて、醸成させ」得る内面の構築だろう。
福留フク子
期待にも絶望にも安易に思いを傾け過ぎず、今を生きる自分の有り様に震災の事実を重ねた時に、何を感じるのか何を伝えたいと願うのか、そんな思いに素直になりたいと思います。
(原型歌人会)目黒哲朗
最後に有名歌人のこんな旧態依然とした素朴な意見もあったことを紹介します。
原子力発電については、出来れば全廃したいものです。
資源の乏しい日本では、それを出来るかどうかは疑問です。
太陽光、水力、波力などではとてもまかないきれません。
また火力では地球温暖化に拍車をかけることにつながりかねないからです。
(日本歌人)前川佐重郎
2.「選のあとに」から
奈良達雄が「選のあとに」に存続・完了を表す助動詞「り・たり」の使い方に誤りが無くならないと苦言を呈している。
「り」という助動詞は、四段活用の動詞の巳然形とサ行変格活用の動詞の未然形に接続すると決められている。
3.今月の注目歌人
福岡 田中柚
若々しさが煌いている。
4.10首選
ケータイの電池が切れてアナログの私の愛が届かずにいる
福岡 田中柚
線量のじわじわ上がる東京に時差のあるような気がしてならぬ
福岡 田中柚
生きる力津々浦々に伝えつつ一本松は立ち枯れ逝けり
熊本 上田精一
階級のたたかいの中のながらえて尚生きゆくも今日のたたかい
千葉 碓田のぼる
<抑止力>いづれは人を殺すため高江へリパッドも辺野古のv字も
熊本 大畑靖夫
住所録全部流したと被災者は年賀一枚出せずと話す
東京 折井澄江
報道がつくる既視感 夢のなか原発の浜に茫と立っていた
北海道 檜葉奈穂
ヨオーツと手をかざして微笑む向井さんの遺影に緊まりし心の和む
滋賀 佐藤靖彦
白き歯にいのちの分秒とどめしか眠るがごとき君のかんばせ
静岡 菊池東太郎
啄木が切り開いた行わけを
「短歌評論」が継ぎ
俺たちが、いま継いでいる
愛知 田中収
5.「全国幹事会への報告と提案」について
既に全国幹事会で議論され私も発言したので略すしますが
「1000名の協会」維持していることは評価される。
常任幹事会などの体制整備が課題
思い切ったネットの活用を!
6「支部の息吹」の中で
「支部の息吹」の中で滋賀の佐藤靖彦さんが亡くなった向井鞠夫さんの次の手紙を紹介していた。
故人の教えを噛み締めたい
「褒めるだけではだめで、歌は文芸ですから、表現の巧拙、語の滴不適、発想の独自性について評さねば歌評とは言えないと思っています。」
新日本歌人協会元代表向井鞠夫さんの冥福をお祈りします
以上です
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あれから1年−私たちの震災歌集
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