「新日本歌人」2012年6月号を読んで

「新日本歌人」2012年6月号を読んで

四回目の「新日本歌人」感想文です。

今回は次の4つに分けて書きます。

1.ピックアップ歌人
相川雅信

2.10首選

3.短詩交流から１
東日本大震災一周忌を迎えて　新俳句人連盟　飯田史郎

4.短詩交流から２
辺見庸詩集「眼の海」を読む　詩人会議　南浜伊作

1.ピックアップ歌人

相川雅信

元新日本歌人協会常任幹事で私は一緒に活動していた。
この数年病に伏せられていたが近頃残念ながら亡くなられた。

共産党の歌人後援会の活動も長くやられていた。
この雑誌の歌が絶詠となった。

大空襲の火の海のがれし姉逝きて戦時を識るもの身内に絶えぬ

「連続講座」の最終回きりぬく「赤旗」に友と似しひと前列に坐す

病みて老ゆれば詮なきことを「赤旗」の記者募集の記事載るたびによむ

合掌！

2.10首選

1.大空襲の火の海逃れし姉行きて戦時を知るもの身内に絶えぬ　東京　相川雅信

2.嘘ばかり信用できずその言葉ステマときう新手の出て来　東京　黒木暮空

3.餓死者のニュース終わればアイパット新発売買い替えあおる資本うるさし　佐賀　古賀紀伊子

4.三回忌迎えいまなおひとを恋う一億二千万の中たったひとりを　東京　滝沢晟子

5.四歳の子も唱和する澄む声の「げんぱついらない。ちきゅうをまもれ」　岐阜　竹中トキ子

6.重厚なる文旦の皮煮詰めれば照りて輝き春の香」満ちる　東京　あまみちゑ

7.雪を割る目の音がする本の間ゆき春がこんなに待ち遠しいとは　北海道　檜葉奈穂

8.思想調査をゲシュタポみたいと断じたるピーコの言冬空を衝く　熊本　上田精一

９．障害を持つ四歳の子が餓死したり病死ノ母ノ傍らにいて　東京　赤塚堯

10.地主の威をしめして永き我が成果を町に寄贈す活用願いて　東京　稲邑明也　

3.短詩交流から１

東日本大震災一周忌を迎えて　新俳句人連盟　飯田史郎
最後のパラグラフを引用します。

「俳句人」４月号自選欄では309人中62人が被災地を詠んでいる。小川軽舟は＜花鳥諷詠の季語の世界から大きくはみ出すものの存在を実感した。私もいつか季語を手放すかもしれないとさえ思った＞と。＜「タスケテクレ」股間あらわに女座す　田中陽＞この臨場感に季語は無用だ。

同感です。
有季俳句を毎朝作っているものにとっては刺激的です。

4.短詩交流から２

辺見庸詩集「眼の海」を読む　詩人会議　南浜伊作

高見順賞を受賞した作品詩集「眼の海」から以下引用し

”砂いっぱいの死者にどうかことばをあてがえ 水いっぱいの死者はそれまでどうか眠りにおちるな 石いっぱいの死者はそれまでどうか語れ 夜ふけの浜辺にあおむいて わたしの死者よ どうかひとりうたえ”

以下解説する

「死者に言葉をあてがえ」の中間部分であるが、マスコミによって「死の無化と数値化」「屍体の隠蔽、死の意味の希釈」がはかられる中で詩人の抵抗が詩として語られる。3.11以前から、破局への予感・予覚を書き、また言葉の表現力が貧しくなっていることを指摘しつづけてきた人だ。
　ことに3.11以後、言葉の多くが「いきなり集団化」し、私個人抜きで「われわれ化」し、しかも…「すべき化」がすすむならば、それはファシズムへの傾斜を強めると怖れているのだ。責任ある主体として個の確立や「視えない死をも視ようとする」想像力を彼は強調する。
　散文作家でもある辺見庸の言語表現への絶望感と、それでも灯される希望の光は私たちに共通した課題を提起しているように思われる。

短歌の雑誌で俳人や詩人のエッセイを読めるとは思わなかった。
編集部の労に感謝します。

以上です。
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陸前高田戸羽市長のご了解を得て奇跡の一本松から作られた三体の仏像の写真を表紙に使わせて頂いてます。
あれから1年−私たちの震災歌集


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