「新日本歌人」2012年8月号を読んで
五回目の「新日本歌人」感想文です。
「新日本歌人」2012年8月号を読んで
今回は4つに分けて書きます。
1.10首選
2.協会の歌人たち④宮前初子 戦争と平和を問い続けた女性歌人 から
3.短歌時評 地震・津波・原発災害への歌人アンケート から
4.ピックアップ歌人
1.10首選
親子より長い年月他の人とくらし続けて人は繋がる
大阪 正木信
原発も普天間も今対峙の時失われし命無駄にはさせぬ
京都 松田礼子
不当解雇に挑みて勝てるSST十一人写真切り取る
山口 松野さと江
生きる力失せし人を報ぜず 壁に「原発さえなければ」と
愛媛 石井和美
慰霊碑に向かいて朗す詩の一篇声詰まらせり「うましめんかな」
三枝史生
敵機去り命拾いの兵士らはただ抱きあえり静寂のなか
故北沢三郎(渡辺進)
50億の生活うごめく惑星に影をおとして眉月が浮く
熊本 大畑靖夫
咲くごとに歌に作ってきて、
こでまりはいい。
しだれて、風にゆれる。やさしく
愛知 田中收
財務省が刷りまくる
紙クズ国債
買いまくる円札
いつか
紙クズになる
福岡 高原伸夫
列島を東西、表裏、南北と移転されし「旅」いま問う、苦く
大阪 高島嘉巳
2.協会の歌人たち④宮前初子 戦争と平和を問い続けた女性歌人 から
大杉香代子さんの故・宮前初子さんの名評伝である。
何度かお会いした宮前さんの面影が伺えた。
最後に夫君が建てた歌碑の前で2000年に碓田のぼるさんと歌人三重の方たちが映った写真がある。皆さんに慕われていた宮前さんが彷彿とする。
大杉さんの最後の文章を引用する。
没後五年程の時、碓田のぼる氏が歌碑と墓参をしてくださり、初子の故郷の家で歌会をした楽しい思い出がある。
ふくよかで優しい表情を思い出す時、その内にひめたしなやかで強靭な叙情を持った尊敬してやまない歌人であった。
水いろの夜明けしんしんととき流れわが終焉のかく静かなれ
(勿論初子の歌である)
3.短歌時評 地震・津波・原発災害への歌人アンケート から
連載物だがこのアンケートの傾向の分析としてこうまとめている。
1.安全神話に乗せられてきた自身の不甲斐なさ
2.白日の下に曝された不合理や不条理への憤慨
3.マスメディアの有害な役割への正当な批判
4.歌人の健全且つ積極的な対応
何れも今世間で言われている事であり歌人はまともだと思う。
4.ピックアップ歌人
神奈川の清水鉄次郎さんが再入会された。
横浜支部で私がお世話になった事もあるがこの復帰は新日本歌人としても大きな意味があると思う。何せ生前の宮本百合子を知る人であり、ある時期新日本歌人を代表する人だったのだから。
今後の御健詠を期待します。
清水さんの歌を紹介してこの稿を終わります。
姿も見えない音もしない
針だけが動く線量計を
凝視している
神奈川 清水鉄次郎
今月もお読み頂き有難うございました。
以上です。
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陸前高田戸羽市長のご了解を得て奇跡の一本松から作られた三体の仏像の写真を表紙に使わせて頂いてます。
あれから1年−私たちの震災歌集
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