「新日本歌人」2012年7月号を読んで
「新日本歌人」2012年7月号を読んで
五回目の「新日本歌人」感想文です。
今回は5つに分けて書きます。
1.10首選
2.♢震災詠・原発事故詠♢ わたしの心をうった十首をから
3.各啄木祭から
4.作品月評から
5.ピックアップ歌人
1.10首選
茫漠たる荒野となりし津浪跡まだ霰散る弥生半ばに
土谷ひろ子(茨城)
広辞苑抱えてはこべば息切れて吸入器の弁を全開にする
故・相川雅信(東京)
生きているゆえと幾度思いしが諍いのあとに澱む心は
堤智子(宮城)
右半身麻痺のからだになりしゆえ神の試練と受け止め左手で書く
鶴野佳子(大阪)
天災はこの後も来ん一年を過ぎて私が在ることの意味
檜葉奈穂(北海道)
年の内に入社と退職させられて非正規職員は調整弁か
福井隆夫(徳島)
弟の死のわかりしや姉の目に涙あふれぬひと時なれど
安武ひろ子(兵庫)
反戦の吾を支うは戦線の骸骨の如き餓死兵なりき
若林義文(神奈川)
月集に載ったを誰かに話したいでもこも歌は秘めておきたい
芦田美代子(岡山)
東村に
口語歌集なく、さびしかった。
原稿は戦災に焼けたのだ。
ーーーあの戦争に
2.♢震災詠・原発事故詠♢ わたしの心をうった十首をから
各選者が選んだ10首から1首を選びました。
井上啓選
「原子力で明るい未来」のアーチ抜けて町民は事故の土地離れゆく
故・相川雅信
大江初江選
死の灰を地下にうずめる計画をいかにおもうや ねえムーミン
炎33号 下村すみよ
大川史香選
知らされぬことのひとつはフクシマの発癌率か予報なき雨
まひる野 篠弘
小杉正夫選
屋根に鎚るカーテンに鎚る樹に鎚る畳に鎚るいのちの<鎚る>
田之口久司選
放射能のしんしん染みる五月雨に紫陽花咲きて命ことほぐ
歌人年鑑2012岡貴子
土井道子選
放射線量のホットスポット散在し三十年を怯え暮らすか
新日本歌人 大杉香代子
原田徹郎選
草の実のびっしり刺さり防護服に玄関開くる一時帰宅は
朝日歌壇 渡辺良子
宮田哲夫選
「頑張ろう・・・」
私は言わない
悲しみに耐えて
被災者は佇んでいる
新日本歌人 笹ノ内克己
ーーーー
3.各啄木祭から
東京
啄木コンクール 入選 辻井康祐 佳作 佐藤靖彦・西山桧尾さんも参加
新歴の森山晴美さんの「改めて読む啄木の歌」と題した講演が行われた
参加者130余名
第三回かすがい啄木祭
記念講演は青木美智雄さんの「啄木と一茶」
共に社会を真剣に見つめ思いを歌に句にたくした。
参加者35名
静岡啄木祭
記念講演は小森陽一さんの「啄木没後100年と今日の日本」
幸徳秋水の「陳述書」を啄木はいかに読んだか
「時代閉塞の現状」を詳しく論じ文学に求めるものは批評とした。
4.作品月評から
生きているゆえと幾度思いしが諍いのあとに澱む心は
堤智子 宮城
右半身麻痺のからだになりしゆえ神の試練と受け止め左手で書く
大阪 鶴野佳子
広辞苑抱えてはこべば息切れて吸入器の弁を満開にする
東京 相川雅信
5.ピックアップ歌人
花野二美(徳島)
新鮮な感性で独特の表現で歌われている。
最後にその作品を一首挙げて終りとします。
君も吾も泣き出しそうに耐えている うわーと時雨のようにいかぬか
お読み頂き有難うございました。
陸前高田戸羽市長のご了解を得て奇跡の一本松から作られた三体の仏像の写真を表紙に使わせて頂いてます。
あれから1年−私たちの震災歌集
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