貧困問題の現場から
マガジン9条という九条の会のメーリングリストの配信を受けています。
伊藤塾の法律家講義レポートの雨宮処凛さん船崎まみさんの対談を紹介します。
と貧困問題の現場から
〜私たちに何ができるのか講演者:
雨宮処凛氏(作家、社会運動家)
船崎まみ氏(弁護士、「北千住法律事務所」所属)
貧困は、単なる「経済問題」ではなく医療や福祉、家庭、教育、につながる問題であり、すべからく政治、社会問題です。
昨日の記事の湯浅誠さんの話と通じ合うものがあります。
併せて読んでいただくと関連性がはっきりすると思います。
【雨宮処凛氏プロフィール】1975年北海道生まれ。作家・活動家。新自由主義のもとで不安定さを強いられる人々=「プレカリアート」問題、脱原発問題などに取り組み、取材、執筆、運動中。『反撃カルチャー プレカリアートの豊かな世界』(角川文芸出版)、『雨宮処凛の「生存革命」日記』(集英社)、『プレカリアートの憂鬱』(講談社)など、著書多数。2007年に『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。「反貧困ネットワーク」副代表、「週刊金曜日」編集委員、フリーター全般労働組合組合員、「こわれ者の祭典」名誉会長、09年末より厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員。
【船崎まみ氏プロフィール】東京都出身。中央大学法学部卒業。早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了。2007年弁護士登録。東京弁護士会の都市型公設事務所、愛知県岡崎市の法テラス三河法律事務所と公設系事務所に約4年半勤務後、2012年1月より北千住法律事務所勤務。東京弁護士会所属。日本弁護士連合会貧困問題対策本部委員。
★8月10日に成立した社会保障制度改革推進法とは?
消費税増税法案とセットで国会に提出されたこの法案は、第一章・第二条の「基本的な考え方」の一項で「自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していく」としています。船崎さんはこれを「つまり、社会保障は自助、自己責任が基本。それができない人を支えるのはまず家族・親族などによる"共助"であり、国や自治体による"公助"は、あくまでその後方支援、ということ(すなわち国の主体的な責任を放棄しようとしている)」と説明。「このように憲法の理念を真っ向から否定する、こんな法律ができてしまえば、社会保障のあり方そのものが覆されてしまう」と批判しました。
★ある芸能人家族の生活保護受給が明らかになったことに端を発する「生活保護バッシング」の影響は?
船崎さん自身も、弁護士が同行していてさえ生活保護の申請がなかなか受理されないというケースを何度も体験したといいます。「一時は少しましになっていた福祉事務所の対応に、今回のバッシングを機に"揺り戻し"が来ているという感じ。今の時点でもこれだけ困っている人がいるのに、その中で今回のような法律ができたら、もっと困る人が増えるのではないでしょうか」との問いかけに、雨宮さんも「非常に危ないと思います」と頷きました。
★生活保護の不正受給ってどれくらいなの?
「生活保護バッシング」の中では、生活保護の不正受給額が過去最高に、といった報道も目立ちますが、実際には不正受給が生活保護全体に占める割合は、金額ベースで0.3%、人ベースで1.5%程度。逆に言えば、全体の98%は適正に使われているということになります。
★生活保護ってどれくらいの人が受けているの?
「生活保護受給者全体の数も、210万人で過去最高といわれていますが、一人当たり月額約93000円以下で暮らす"貧困層"は日本の人口の16%、数にすれば約2040万人。つまり、貧困層の1割くらいしか生活保護を受けられていないわけで、だからこそ餓死・孤立死の事件が相次いでいるんです。そういう状況なのに、社会保障を切り下げる、生活保護の水準を引き下げるといった動きがあるのはとても危ない」。雨宮さんはそう指摘します。
★貧困は、単なる「経済問題」ではない?
「さかのぼっていくと、背景には本当にいろんな問題があるんですよね。例えば、北九州で2000年代に餓死や孤立死が増えた原因は、炭鉱閉山による失業者の増加で受給者が増えて、厚労省が『受給者を減らせ』という指示を出したことでしたが、札幌の姉妹のケースも、亡くなった父親は炭鉱労働者。閉山で姉妹の地元の町はすたれてしまい、それで滝川や札幌に出てきたけれどなかなか安定した仕事は見つからなかった、ということのようです。その意味では、産業構造の変化や産業政策も背景の一つなんです」
★「女性の貧困」?
職を転々としながら暮らしてきた40代の姉が、知的障害のある妹の世話を1人でこなしていたという事実からは、非正規雇用の問題、そして障害者福祉の問題も透けて見えてきます。加えて雨宮さんが指摘したのは、男性と比べても厳しさが際立つ「女性の貧困」の問題でした。
「今、単身女性の3割が貧困ライン以下で暮らしているという数字が出ています。65歳以上では52%。結婚していない、単身で暮らす女性に日本の社会福祉制度はとても冷たくできている。終身雇用の正社員や、正社員と結婚している専業主婦などに対してはいろいろ制度があるけれど、そこには該当しない人への受け皿がないんです」
★貧困は、単なる「経済問題」ではない。
また、雨宮さんからはさらに、生活保護を受給して経済的にはある程度落ち着いたとしても、そこからどう主体的に生きていくかの道筋が見えず、苦しんでいる人も多い、との指摘も。「使い捨て」のような、人を大事にしない労働の現場で働いて人間不信になってしまっている人、若くして路上生活を経験して身体も心もボロボロになってしまっている人…。軽度の知的障害や精神疾患を抱えていながら、医療や福祉にアクセスする機会がなく、そのことに気づかないまま生きてきていたという人も多いといいます。
船崎さんも、「国選弁護人として弁護を担当した刑事事件の被告の中にも、軽度の知的障害のある人がかなり多かった」と指摘。「ただ、知的障害も社会において『つまずいてしまう』原因の一つだけれど、家庭環境によってもそれがどう作用してくるかは大きく違います。貧困というのは、『お金がない』ことだけではなく、家族関係やどんな教育を受けてきたかなど、すべての要素が関係するのではないでしょうか」と、「貧困」が単なる経済的な問題ではないことを強調しました。
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