« 田中優さん講演 「原発のない社会へ」を聞いた | トップページ | おは!Twitter俳句(鵙の贄)(10月9日から10月15日) »

2012年10月15日 (月)

「新日本歌人」2012年10月号を読んで

「新日本歌人」2012年10月号を読んで

七回目の「新日本歌人」感想文です。
今回も4つに分けて書きます。

1.10首選
2.渡辺順三の歌論・評論の一考察(一)(碓田のぼる)
3.渡辺順三短歌の批評と鑑賞(一)(菊池東太郎)
4.短歌時評 些事を見る目
5.ピックアップ歌人

1.10首選
20首位から絞りましたが結局7首は原発関係の歌になりました。
首相官邸前行動の歌が前号まで殆ど無かったが今回は多くあった。
それと7.16の代々木公園での17万人の集会の歌が多かった。
以下の10首です。

原発は再稼働するな声あげる八分音符のリズムにのせて
岐阜 竹中トキ子
もめるかもしれぬ会議が今日はある 厨に大根スパッと切りぬ
群馬 田島久美子
君からの頼りは「つづく」で終わっている いつまでも待つよねつづきの便り
東京 たなせつむぎ
抵抗と自立のいまのあたらしき象と思う官邸前集会
愛知 津田道明
三十年を月曜ごとの島のデモ千回を越え犬も加わる
山口 松野さと江
渡良瀬もラムサール条約に認めらる正造の闘い引き継がれ来て
茨城 倭三千子
活断層をまたぐ原発ーー、
強震に身の毛もよだつ
今日かもしれぬ
神奈川 清水鉄次郎
「つらい日々を 被災者は過ごし」
「昼食もままならない」という
双葉町の町長の町長眼の光
長野 宮田哲夫
炎天下うちわで乳児に蔭つくり母親は叫ぶ「原発反対!」
東京 稲邑明也
観光地ハウステンボス此の島はかつての特攻"震洋"艇基地
鹿児島 寺本保廣

2.渡辺順三の歌論・評論の一考察(一)(碓田のぼる)
1934年の「新らしき出発への道標」で自らの自己批判として以下の3点について書いているという。
第一 思想や世界観と作品創造の区別と関連
第二 作品批評における態度の問題
第三 「詩への解消」論をめぐる自己検討
それぞれについては触れないが第三について順三が「短歌から詩へ!」のスローガンは「絶対に正しいと信じてゐるし、またそのことが歴史的に事実をもって証明されてもゐる」と言っているのは自己批判が不十分と述べている。
この論文は連載のようなので続編に期待しよう。

3.渡辺順三短歌の批評と鑑賞(一)(菊池東太郎)

第一歌集「貧乏の歌」における啄木の歌との類似性と相違性について論じている。
歌だけ紹介する

手のひらに堅きタコあり
あわれわが
十六年の錐もむ仕事
順三

はたらけど
はたらけど猶わが生活楽にならざり
じっと手を見る
啄木

金槌をー
振り上げし右手ふと休め
何やらむ思ふことのあり
順三

手套を脱ぐ手ふと止む
何やらむ
こころかすめし思ひ出のあり
啄木

二首目はよく似ているが「概念のもつ自由と実態をもつ限定の効果の違い」を見ている。

第二歌集「生活を歌う」からはこの歌を引用して歌集の背景を分析している。

どうにでもなるようになれと
捨鉢な
気持ちで今夜も布団をかぶる

4.短歌時評 些事を見る目
この雑誌には珍しく「些事」を扱っている。
引用したこの歌が考えさせる

原爆を知れるは広島と長崎にて日本という国にはあらず 竹山広

竹山は「小さくまとまった歌は作るまい」
といいこう歌う

うたふ何もなき日常と侮るな何もなき明日ゆうべこそうた 竹山広

竹山の言を借り「些事を歌いながらもその背後に大きな世界を暗示してみせる。」という。

小池光の言を借り「日常の些事が、物事の本質を鮮やかに照射」するという。

奥村晃作の言を借り「生きている、生活していると言うことは、時々刻々に事物と出会っているわけで、その都度心は動いている。感動している。それを短歌で現わす。歌の面白さは、表現の適否にかかっている。」という。

5.ピックアップ歌人
東京 小石雅夫
意外な人を紹介してきたのがこの項だが編集長の歌を紹介するのはこれまた意外かもしれない。
「あらためて」と題された奥さんを介護する歌8首は読んでいても辛いものがあった。介護の歌として新日本歌人史上に残るだろう。
この歌1首のみを紹介しておきます。

「おとうさん、大変だったでしょ。お芝居だった」ある朝妻よ舌出して言え

今月は以上です。


新日本歌人協会のホームページ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
来年2月のみさとシティーハーフマラソンで10km完走する
あれから1年−私たちの震災歌集
どちらもクリックして陸前高田と大津留公彦にご支援を!

参考になりましたらこちらのクリックお願いいたします。

CoRichブログランキング
人気ブログランキングへ

良ければこちらもお願い致します

FC2ブログランキング

更によければこれもお願いします。

ブログランキング・にほんブログ村へ

更にこんなのも

« 田中優さん講演 「原発のない社会へ」を聞いた | トップページ | おは!Twitter俳句(鵙の贄)(10月9日から10月15日) »

新日本歌人」カテゴリの記事

コメント

小山さん

朝日の長田裕子さんは新日本歌人の長田裕子さんとは同姓同名の別人のようです。

shinihonnkajinnには会員用の mlがあります。

utabito-subscribe@yahoogroups.jp

に申し込みください。

初めまして。埼玉の小山尚治です。新日本歌人の仲間の何人かとメールで情報交換をしていますが、ここで大変刺激を受けています。この輪をもっと広げられないでしょうか。この歌が良かったよ、こんな歌もあるよ、と多くの人が自由に参加できる広場のような場所を作れないか。インターネットに親しんでいる人も多いと思いますし、協会の課題である歌を若い人に広げる場としても役立つのではないでしょうか。54歳の僕が、自分より若い会員にほとんど出会った事がないという状況も異様です。大津留さんのブログは時折拝見しておりますが、失礼ですが、あまり知れ渡っているようには見えない。「新日本歌人」誌上でも紹介してはいかがでしょうか。今朝の朝日新聞「天声人語」に長田裕子さんの歌が引用されていました。そのような情報もすばやく発信できると思います。ブログを立ち上げるこまめさを持ち合わせない僕が言うのもおこがましいでしょうか。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「新日本歌人」2012年10月号を読んで:

« 田中優さん講演 「原発のない社会へ」を聞いた | トップページ | おは!Twitter俳句(鵙の贄)(10月9日から10月15日) »

無料ブログはココログ

逆アクセスランキング

" href="">FC2SEO
2024年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

カテゴリー

アクセスカウンター