徐京植さんの啄木発見
私が新日本歌人代表の幹事である文化団体連絡会(文団連)主催の「生きる権利と文化フェスティバル」が土日の二日間行われた。
土曜はナターシャ・グジーさんのコンサートが、日曜は東京経済大学教授の徐京植さんの講演があった。
徐京植さん私達が学生時代その救援運動に関わった徐勝・俊植さんの弟だ。
NHKのeテレの心の時代で「フクシマを歩いて」という番組徐さんは紹介されて講演依頼が殺到しているという。
会場で三つの詩が読み上げられた。
何れも3・11前に作られたものだがフクシマに送られているエールのようだった。
(このフェスティバルでは我が新日本歌人の短歌群読「憲法を詠む」をはじめ各団体からの出し物があったが、「うたごえ」の「原発下請け労働者の歌」はなんと31年前に作られたものだという。
それを聞くまではてっきり最近作られたものだと思った。
こういう歴史の事実は発掘と顕彰と伝承されなければならないならないと思う。)
この集会では私はプロジェクターの担当だったのでメモがありません。
しかし、文団連の会議で頂いた「うたごえ新聞」2月18日号に昨年末の詩人会議創立50周年記念祝賀会での徐京植さんの講演「詩が映し出す東アジア近現代史」の概要が出ていたので紹介します。
昨日の講演とダブるものもあるが詩に焦点を当てていたようだ。
そこで紹介されている詩は
茨木のり子の「六月」
石川逸子「娘・私たち」の中の「黒い橋」
滝口雅子「男について」
そして
小林多喜二が虐殺された時の魯迅の次の文章を紹介している。
「同志小林の死を聞いて 日本と支那の大衆は元より同志である。資産階級は大衆をだましてその血で界を描いた。しかし、無産階級とその先駆者たちは血でそれを洗っている・・・われわれは固く同志小林の血路に沿って前進し、握手するのだ」
([魯迅全集]の付録「魯迅案内」所収・中野重治「ある側面」
そして我が啄木も登場する。
その部分を引用しよう。
[古本屋が並ぶ京都・丸太町通りでの古本屋で、石川啄木の「ココアのひと匙」に出会う。センチメンタルな詩人という認識だった啄木のその詩は
・・・
はてしなき議論の後の冷めたるココアのひと匙を啜りて、そのうすにがき舌触りに われは知る、テロリストの かなしき、かなしき心を。
・・・
「これは1910年の韓国併合の翌年に書かれています。この詩は大逆事件の被告たちをうたったとも伊藤博文を射殺した安重根のことをうたったとも言われていますが、啄木はただ泣き濡れているだけの詩人ではなかったと知りました。」「"出会い損ねた"日本の周辺アジア諸国と言いましたが、反戦・平和、アジアの友好という立場から発信つづけた人たちがいた。そのことを知ったことは私にとって大きな財産となりました。そのことが在日朝鮮人である少年の私に何かを与えました」。]
「この詩は大逆事件の被告たちをうたったとも伊藤博文を射殺した安重根のことをうたった」という説は確か碓田のぼるさんも書かれていたような気がする。
啄木を正しく継承する事を標榜し来週14日に啄木祭を主催する我が新日本歌人協会の一員としては東アジアの近現代史を正しく学び伝えたいと思います。
以上です。
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コメント
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山姥さん
コメント有難うございました。
>あらためて「徐兄弟 獄中からの手紙」を本棚から見つけ読んでいます。私にとっても詩人啄木を知ることが出来ました。
というのは凄く嬉しいです。
このことだけでもこの記事を書いて良かったと思います。
徐兄弟の事を知っている人は少なくなっていると思います。
まして管野スガの事を実際に知っている人は既に居ませんが名誉回復させる事は意味があると思います。
今後ともよろしくお願いします。
投稿: 大津留公彦 | 2013年4月15日 (月) 18時10分
徐京植さんの啄木発見を読ませてもらい、あらためて「徐兄弟 獄中からの手紙」を本棚から見つけ読んでいます。私にとっても詩人啄木を知ることが出来ました。
先日大阪で「管野スガを顕彰し名誉回復を求める会」が結成され、入江春幸さん(日本文芸学会)の講演を聞いてきました。何も知らなかった大逆事件、聞くにつけ国家権力と対峙して
一歩も引かず信念をまげなかった彼女の名誉を回復したいものです。
昨日は「ストップ!ハシズム市民大集合」の集会参加、その中で「朝鮮高級学校生無償化を求める連絡会」の発言にまたまた、朝鮮学校差別から見る日本社会を知ることが出来ました
投稿: 山姥 | 2013年4月15日 (月) 12時25分