「新日本歌人」2013年9月号を読んで
十六回目の「新日本歌人」誌の感想文です。
今回は次の5つについて書きます。
1.10首選
2.ピックアップ歌人
3.読者歌壇から
4.夏のセミナーへの報告について
5.「提言評論ー行分け短歌のゆくえ 新しい未来を拓くために」について
1.10首選
1.死してなお「靖国神社」に集められ歴史を偽る役目負わされ
山形 斎藤武蔵
2.浅尾、上田、金沢、小杉等いま田老防潮堤の残骸に立つ
岩手 小杉正夫
3.職場内「自己責任」の横行す残業すれば電気代引かるる
大阪 佐野映子
4.君を乗せしお迎えの車の弔笛に悲鳴をあげて孫等泣き出す
神奈川 竹内佳子
5.無窮花は韓国の国花「日帝」は植えること愛でること禁じしという
埼玉 寺島萬里子
6.握りしめひらく手のひらまじまじと見入れば不意に近し啄木
北海道 檜葉奈穂
7.遠方を見るまなざしで故郷の五島を語る友なり今日も
大阪 秋沼焦子
8.鶯の谷渡りの声響きいる森も地面もおそろしき緑
奈良 秋山千恵子
9.古語歌をめざし行分けに挑みたる啄木・順三の道つぐという
群馬 伊藤仁也
10.誰を恃むものにもあらずわれのみのこの短か歌にながくこだわる
千葉 碓田のぼる
2.ピックアップ歌人
そのまま
おとぎの国のような
チロルにも
山野を愛しんだ人々の
労働の歴史がある
福岡 高原伸夫
3.読者歌壇から
幾たびか死刑裁判席に立ちこれが正義と思いたるなし
大阪 小林つとむ
4.夏のセミナーへの報告について
・「自然詠」を考える 菊池東太郎
短歌の基本の一つは心を物で表わす事だがそのためには「自然詠」が良い素材を提供しているとしているにはその通りだと思う。
「自然詠」も時代の影響を受けるとして時代にからんだ幾つかの歌を紹介している。
そに中に現実主義リアリズムの目という分類でこういう歌がある。
無産派の理論より感情表白より現前の機械力専制は恐怖せしむ
土屋文明
この歌を「自然詠」の代表としてあげる事に新日本歌人メーリングリスト上で議論があった。
確かに「自然詠」の代表として相応しいかどうかは疑問があるが菊池氏には「自然詠」と「社会詠」のクロスオーバーする境目をあえて提起したのだろうと私は思う。
・短歌の社会性について 山本司
歴史的に短歌の社会性を万葉集から述べている。異論は無いが如何せん二ページでは言い尽くせない。
私が脱原発の集会で引用したこの俵万智の歌が挙げられている。
子を連れて西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え
山本さんの言う社会詠作歌上の7項目を例歌を外してあげておこう。
社会詠と限らなくても大変参考になります。
1.客観的描写力でインパクトを与える
2.主情的・意思的描写力でインパクトを
3.作者の真情や思いを表明する
4.暗示的な批判精神の表出
5.諧謔性や揶揄的表出での批判精神を
6.比喩法等で暗示性や迫真性を創造する
7.あらゆる表現方法を駆使した連作を
・「評論」について考える 津田道明
短歌の場合は実作と鑑賞と批評は三位一体であるという。
故向井毬夫氏のこの言葉を引用している。
「創作の過程で、どう作者の思念が高められ、深められて形象化され<詩>になっているかの細部までの判別・享受が評にはどうしても欠かせないと私は思う。」
津田さんの結論はこうである。
(鑑賞と批評を豊かにしていくこと、それが「評論」の条件である。)
5.「提言評論ー行分け短歌のゆくえ 新しい未来を拓くために」について
宇月鳥三さんの寄稿論文である。
行分け短歌は絶滅危惧種となっておりこのままでは10年で誌上から消えるという。
時々行分け作品を出している私も同じ認識を持っており新日本歌人誌上の行分け作者の数を今年の月別に調べてみたらこうでした。
(月 投稿人数)
10 12
9 15
8 17
7 12
6 12
5 14
4 11
3 12
2 14
8月が17人と多いが基本的には10人を切りそうな勢いである。
新日本歌人協会は会員・購読者千名を達成してから今まで維持しており作者は昔より増えているはずなので行わけ作者が新たに生まれていないということだろう。
宇月さんの新日本歌人への提言を紹介します。
1.新人の発掘、行分け短歌の奨励
2.定型作者と行分け作者による討論の輪を広げる
3.行分け短歌の歴史と魅力の追求
頑張ってきた行分け作者の健在なうちに討論の場を持つ事は必要でしょう。
あるいは夫々の作者に文章を書いて貰うのもいいと思います。
今回ピックアップ歌人に取り上げましたが福岡の五行歌作者の高原伸夫さんが最近参加され行分け欄に新しい風を吹かせて頂いているのがひょっとすると一つの可能性かもしれないと私は思っています。
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