宮森よし子著「海へ向う椅子」を読んで
新日本歌人奈良支部「うたの坂歌会」代表の宮森よし子さんの第一歌集「海へ向う椅子」を読んだ。
なかなか厳選されたと思われる歌372首が並ぶ。
現在の新日本歌人には稀な主題と感性の歌が並ぶ。
テーマ別に私が付箋を貼った歌十一首をコメントを付けて紹介します。
夫婦間の機敏
或る日ふと頭に落ちきし果梨なり あやまちの愛などあるや
( 思わず「うまい!」思った。「あやまちの愛」とは思わせるぶりだが。)
どれほどの仕事に耐えて来たものか夫の寝言は数字の羅列
(夫の仕事は数字を使う仕事だったか その事を記録することが愛情だと思う。)
わが母の言葉なりけり「夫知るに塩一トンを舐めねばならず」
( この母の教えはすごい。自分の塩一トンとはどれ位の量なのかはわからない。)
わがものと夫を思うは驕慢ぞスーツ干す手の少し震えぬ
(確かに夫婦はそれぞれの持ち物ではない。持ち物のように思っている事も往々にしてあるが、、)
戦争のこと
傷痍兵のハモニカの節恐ろしく幼きわれは泣き濡れていき
(小さい時の記憶は幾つになっても忘れない。 )
合唱おうと軍歌の音頭とる人の「ハイッ」に皆の口動かない
(「グアムの道」とタイトルがあるので旅行詠だが戦争に対する批判がある)
炎天に柘榴わななき砕けいるイラクの少女の自爆の朝
(イラクの柘榴は真っ赤で美味しい。その柘榴がわななき砕けるというのは全く異様な風景であり独自な捉え方と言えるだろう。 )
戦時中食べし水団煮えるまで原爆の話に孫の手をとる
(孫にこういう形で戦争体験を伝える事が確かな日本の未来に繋がる。孫にはきっと残る。)
心境詠
池の辺の皇帝ダリアの三、四本じりじりと老ゆ嗄れながら
(子規の鶏頭の句を思い出させる。自然詠ではあるが心境詠と言えるだろう。心境詠という分類があるかどうかは知らないが。)
急がぬと心に決めて立ち止まる信号いまだ青ではあるが
( 信号が青でも遅めの青は渡らない方がいい。それほど急ぐ用事は多くはない。無いこともないが、、、)
君はまだマルクスなのと肩叩くデモに出会いし古き友がら
( 奈良のマルクスはきっと健在なのだろう。)
宮森さんの御健詠と第二歌集の発行を願います。
以上
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