短歌群読「ヒロシマ・ナガサキの歌人から」
2015年5月23日文団連主催「NPT再検討会議参加代表団報告平和のつどい」にて新日本歌人の5人で短歌群読「ヒロシマ・ナガサキの歌人から」 を行いました。
私は3人の歌人の紹介の部分を読みましたが皆さんの朗読を聴きながら短歌の訴える力を感じました。
今回は正田篠枝さんと深川宗俊さんと竹山広さんの3人のみを取り上げましたがもっともっといろんな歌人をこういう場で紹介する意味を感じました。
会場で啄木祭に参加したいという声もあり励まされました。
以下本日のシナリオです。
五・二三文団連「NPT再検討会議参加代表団報告平和のつどい」
短歌群読「ヒロシマ・ナガサキの歌人から」 (抄出大津留公彦)
ヒロシマとナガサキの歌人から三人各8首計24首を抄出致しました。
被爆後七十年で大きな転機となりつつある今年味わうべきものが多いと思います。
ヒロシマの歌人・ナガサキの歌人からその遺言とも言うべき歌群れの訴えをどうぞ受け取って下さい。
正田篠枝 さんは1945年(昭和20年)8月6日、広島市への原子爆弾投下の際、爆心地から1.5キロメートルの距離にあった広島市中区平野町の自宅で被爆した。
1947年(昭和22年)、『不死鳥』掲載の歌を原歌とした歌集『さんげ』を極秘に出版。GHQの検閲を受けず、手渡しで親類や知人に配布された
正田さんの短歌の師である杉浦翠子(すいこ)は以下のように絶賛した。
私はこの歌を読むのに眼がいくたびが曇った。すヽり泣いて。これまで原子爆弾の実況はいくたの散文で読んだ。しかしこの歌ほど私を泣かせるほどの力はなかつたのである。思ふにこの歌はいかなる名文もなし能はざる精をもつた短歌文学といへよう。こヽに至つて、私はこの作者の偉業を讃へると共に短歌そのものが時に散文を凌駕する偉大な文学であるといふことをさへ認識するものである。しかして、この歌は日本短歌史に於て古今絶無の作品である。
ヒロシマから
正田篠枝 『さんげ』、より
ピカッドン 一瞬の寂(せき) 目をあけば 修羅場と化して 悽惨 のうめき
大き骨は先生ならむそのそばに 小さきあたまの骨あつまれり
筏木の如くに浮かぶ死骸を 竿に鉤をつけプスッとさしぬ
奥さん奥さんと 頼り來れる 全身火傷や 肉赤く 柘榴(ざくろ)と裂けし人体
混沌の さなかにありて 敗因に 思ひをいたし ざんげに痛む
史の上に この混沌の 今の世が 昭和改新と 呼ばるる時ぞあれ
武器持たぬ 我等国民(くにたみ) 大懺悔の 心を持して 深信に生きむ
死ぬ時を強要されし同胞の魂にたむけん 悲嘆の日記
深川宗俊さんは広島市生まれ。病気で兵役免除となり、原爆投下の前月に徴用工の指導員として広島市の旧三菱重工業に入社。韓国人徴用工の指導員をしていて被爆する。
戦後、峠三吉らと反戦詩歌人集団を結成し「われらの詩」や「反戦詩歌集」を発行。
73年から1人で韓国人徴用工の調査を始め、補償問題に取り組んだ。
新日本歌人協会広島支部の会員で峠三吉の碑の設立に関わっています。
肺炎と心不全のため広島市の病院で2008年87歳で死去。肺炎と心不全のため広島市の病院で2008年87歳で死去。
深川宗俊「連祷(れんとう)」より
山を越えはるかなるヒロシマの声聴けり ふぶきとなれるソウルに
加害者の一人にて被爆者となりしこと 問いつつ生くる秋より冬へ
戦争の加害被害に立ち会えり いずれを問うや戦争の罪
語りつつ君は泣けるや朝鮮への 加害の立場さびしくあれば
サルビアの真紅の炎の滴りに 長崎投下をしめす碑文は
聖者さえ逃れえざりき浦上の 上空に十字を切りしは誰ぞ
被爆死の数さえさだかならずという 島の浜辺にさわ蟹の群
かさなりて折りかさなりて水槽に 死にし少女の見分けつかぬに
竹山広さんは1945年、肺結核で喀血し、長崎市浦上第一病院に入院した。退院予定日の8月9日、長崎市に原子爆弾が投下され、爆心地から1.4キロメートルの地点にあった病院にて被爆した。
奇跡的に軽傷で済むが、退院する竹山を迎えに来るはずだった兄を目の前で喪った。
原爆歌人として名高いが、格調高い自然詠、エスプリの効いた社会詠、身の周りのことを題材にしたユーモラスな日常詠も数多く詠んでいる。
また、詠んだ短歌を基にした合唱曲がつくられたことでも知られている。第一歌集を出版したのが61歳というかなり遅咲きの歌人である。
2002年、『竹山広全歌集』にて、第13回斎藤茂吉短歌文学賞、および、第17回詩歌文学館賞を相次いで受賞。
さらに、同全歌集に含まれて発刊された第6歌集『射禱』(しゃとう)が、第36回迢空賞を受賞している。
ナガサキから
竹山広「とこしへの川」より
逃げよ逃げよと声あららぐる主治医の前 咳入りざまに走り過ぎたり
血だるまとなりて縋りつく看護婦を 曳きずり走る暗き廊下を
傷軽きを頼られてこころ慄(ふる)ふのみ 松山燃ゆ山里燃ゆ浦上天主堂燃ゆ
くろぐろと水満ち水にうち合へる 死者満ちてわがとこしへの川
米長 阿部
這伏(はいふく)の四肢ひらき打つ裸身あり 踏みまたがむとすれば喚きつ
米長 阿部 青木
人に語ることならねども混葬の 火中にひらきゆきし手のひら
米長 阿部 青木 宮地
死の前の水わが手より飲みしこと 飲ましめしこと一つかがやく
全員
いついかなる時代に平和ありきやと おのれに問ひてこころくずれゆく
ノーモア ヒロシマ ノーモア ナガサキ ノーモア ヒバクシャ!
以上です。
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2015年啄木祭
以上です。
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短歌は新日本歌人
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宇都宮健児・井戸川克隆 未来を語る
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