橋本邦久さんの歌集「草の実」を読んだ
橋本邦久さんの歌集「草の実」が届いた。
早速読んで感想を送ろうと思っていたが、7月25日の文学4団体の戦争法案に反対する集会の場でその日の朝新日本歌人協会に訃報が届いたと聞いた。
癌に侵されていたとは聞いていたが歌集とほぼ同時に訃報が届こうとは思わなかった。
ありがとうあれもこれもが感謝でいっぱい風も気持ちいい六月の末
これはこの歌集の最後の歌です。
六月十二日の日付けになっています。二カ月も経っていません。
松下と闘う電機労働者の一人であった橋本さんの闘いの歴史に学ぶと共に歌友・橋本邦久さんの御冥福をお祈りします。
この文章はあとがきにあった橋本さんの闘いと歌の同志である中山惟行さんの『「草の実」の普及にお力添え下さる事を心よりお願いしたいと思う。』を受けても書いた事を申し添えます。
この歌集から十首を選びました。
ショートコメント★を付けて紹介します。
人文字の「せんそうアカン」の「う」の中にわが白頭も一点しめる p48
★この意外性のある「う」がいいですね。
若者の非戦のデモのひたひたと広がるを見るはなにより嬉しp58
★私もそうですが、同じ思いを多くの世の中高年はしている事だろう。
放映する年金改悪国会を箸で衝きつつ妻とめし食う p61
★箸で衝くのがユニークです。
心こめて妻の作りしゆうめしにまた文句つけひとり悔ゆる日 p75
★「悔ゆる」のが橋本さんらしい。
イラクへの派遣を拒む米将校あり あっ鶺鴒がパッと飛び立つ p81
★上の句と下の句の鮮やかな転換が見事です。
またひとつ病を背負う冬なれど雪降る町を面上げて行く p127
★ 病気に面上げて立ち向かう姿勢を見習いたい。
「愈々か」地球最後の夢をみる空が斜めにずれ込んでいるp137
★「空が斜めにずれ込んでいる」という異常感が作者の非尋常性を伝える。
タクアンを妻は丸切り我は拍子木 両者譲りていまは半月 p145
★独特の愛情表現ですね。
戦争か平和かを問う日ながれ病み臥すわれの春行かんとす p264
★さぞや戦争法案に胸を痛めておられた事でしょう。
草の実は熟れて実って秋の空河内の街に弾けておくれ p268
★歌集のタイトルになった草の実の二首のひとつです。この歌は新日本歌人八月号にも掲載されています。但し「街に」は「ここに」となっています。「ここに」の方が病院の作者に引きつけていていいと思います。)
ありがとうあれもこれもが感謝でいっぱいです。
橋本邦久さんに冥福あれ!
合掌!
八月六日 広島原爆忌に 三郷にて
大津留公彦
以上です。
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俳句は新俳句人連盟
短歌は新日本歌人
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