歌集「花の渇き」を読んで
歌友である藤田貴佐代さんの第四歌集「花の渇き」を読んだ。
同じ歌会に属しているので吟行会などで共有した体験も多く歌会でお目にかかった歌もある。
しかしジャンル毎に纏められているので意外に既視感は少ない。
特に前半四分の一を占める東日本大震災の関連の歌は著者の何度かの被災地訪問が生み出した労作群である。
五首をあげるとこんな歌がある。
手を出してしっかり掴め友の手を「困ったときは」とひさしの校歌 (p26)
農機具の除染の費用は自己負担 飯館村は追い詰められて (p37)
三年間も時が止まったままの町 家には車が突っ込んでいて (p42)
仮置き場とされたるままに野ざらしのフレコンバッグ雨に打たれて (p47)
七万本の松流されて一本の根性松ふんばって立つ(p49)
★何れも現地にて受けた感慨を作品として具体的に我々に伝えてくれています。
作品の中に ご本人の健康に関する歌がある。
一年後の検査結果は「転移なし」かけがえのない「命の保証書」
★重い感慨が「命の保証書」にある。(p59)
こういう若者への思いの歌もある。
遺書のみがこの世に生きた証とは 非正規労働の若者の果て(p97)
★無縁社会というタイトルの歌群の中にある。
作者の個人的思いが伝わる一番の作品群はこれらだ。
自らが選びし道を超えてきし誰ひとり血縁のなき大都会 (p109)
友がいた短歌の仲間がいつもいた悩みは何故か聞く側にいて (p109)
東京に暮らし始めた日のように一人なり夫の声消えし家 (p131)
★指導者としていつも元気に我々に指示を飛ばす藤田さんの連れ合いをなくされてからの家での寂しさを思います。
ひび割れし木肌「く」の字に折れながら春香らせて天神の梅 (p180)
★一緒に行った吟行会の作品です
紅白の梅咲く寺に順三の墓洗う生誕百二十年 (p196)
★藤田さんは渡辺順三の直接の教えを受けた存命の人の中の数少ない一人です。
これからも新日本歌人協会の活動と歌作りに邁進され第五歌集・第六歌集と出版される事を期待します。
以上です。
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血に染めし父の記憶や晩夏光
軍服を着せる為なら子は産まぬ
(戦争法案に反対!575&57577)
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