リーディング「コペンハーゲン」を観た
・相補性原理=「量子力学においては、『粒子』と『波動』といった互いに排除的な概念は同時に互いに補完的であり、そのどちらか一方では完全な記述はできない」とするボーアが提唱した原理。
・不確定性原理=「粒子の位置と速度を同時に正確に測定することはできない」というハイゼンベルクの原理。
これを理解出来る人は少ないだろう。文系の人間にはちんぷんかんぷんです。
この二つの理論を提唱したユダヤ人とドイツ人の朗読劇「コペンハーゲン」を夕べ観た。
この二人とボーアの妻の三人の朗読劇である。
これ程難しい内容をよくよく劇にしたと思う。
特にローゼンブルク役の方のアクション付きの朗読は素晴らしく台本を見ない事も多く、殆どの言葉を暗記しているようだった。
台本があるとはいえ2時間50分間3人がしゃべり続けるというのも大変なことだ。
特にハイゼンベルク役の山内榮治さんの朗読は素晴らしく殆どセリフを暗記している感じでたびたび台本を離して語りかけていた。
物理学の言葉の難しさはあるが、共に原爆開発に関わった双方の苦悩(特ハイゼンベルク)は人間の真実に迫るものだ。
演出の鈴木龍男さんはチラシにこう書いている。
「先の戦争で結果的に多くの演劇人が戦争協力の波に飲まれていったことは事実だ。演劇という文化が人の心を集団的につかまえてしまう要素をつよく持っているが故に苦渋が残る。しかし、それを単純に批判することができるだろうか。自分たちの魂を失わずに、しかし生き抜いていかなくてはならない。 良心と日々うごめいていく情勢の中で格闘する日々がもう始まっている。 自分の頭と体で考えることをやめてはならない、そう言い聞かせながら舞台に向かっている。」
演劇人の持つ強い問題意識を感じる。
池小は元池袋小劇場で発足以来「今日性、社会性のある作品を舞台に!」が創造目標という。
このリーディング「コペンハーゲン」はまさにすぐれて「今日性、社会性のある作品」と言えるだろう。
池小の更なる発展に期待します。
2001年11月15日、 新国立劇場小劇場での公演に対するアクエリアンさんの感想から一部紹介します。
この劇のより重要が部分は、原爆開発に関するものである。量子力学の建設に成功した二人の関心は、1930年代になると原子核物理学に向かう。1938年、ヒットラーのヨーロッパ制覇の野心が歴然としてくる中で、ドイツのハーンとシュトラスマンが核分裂を発見する。そのニュースを、いち早くアメリカの物理学界へ伝えたのが、ボーアであった。この情報は原子核物理学者に大変な興奮を引き起こし、すぐに連鎖反応の可能性がいわれ、原爆開発プロジェクトを立ち上げる結果となる。夫人がユダヤ人であったボーアは、1943年にナチ占領下にあったデンマークを脱出し、アメリカの原爆開発に参加することになる。実質的にさして大きな寄与をしたとはいえないが、開発の中心であったロスアラモス研究所での理論活動を後見する役割を果たした。一方のハイゼンベルクは、ドイツの原爆開発の総責任者となった。アメリカと競り合うように、ドイツでも、原爆開発は進んでいたのである。アメリカにおける原爆開発に、ナチスを追われた物理学者たちが大挙して参加したのは、実は、ナチス・ドイツに、この大量殺害兵器を先に開発されたら大変なことになる、という恐怖心ゆえであった。あのハイゼンベルクならやれる、という、彼の能力への恐怖心もあったのである。それが開発を大いに加速した。実際には、彼の選択した開発の道筋は見当違いであったため、ドイツの山奥の洞窟の中に、原子炉の一歩手前の装置までは作っていたのだが、原爆そのものを実現するなどおよそ不可能と、彼は開発をギブアップしていたのだった。それが分かったのは戦後のことである。
この感想の最後に書いているように、実に重厚で、知的興奮を呼ぶドラマであった。
ーーー
リーディング コペンハーゲン
作 / マイケル・フレイン 訳 / 平川 大作 演出 / 鈴木 龍男(前進座)
「でも、どうして?」 「答えの見つからない謎もある…」
1941年、ドイツの物理学者ヴェルナー・ハイゼンベルグは、ナチス占領下のコペンハーゲンに
ユダヤ系デンマーク人の恩師ニールス・ボーアを訪ねた。
二人はかつて父と息子のように固く結ばれ、1920年代に量子力学を共に研究し確立させた姉弟でもあった。
原子爆弾の開発に連合国とナチスがしのぎをけずっていた時代、この訪問の目的は今も謎のままである
なぜ、ハイゼンベルクはボーアを訪ねたのか?
緊迫した状況下で語られたボーア、ハイゼンベルク、マルガレーテの会話の真相とは?
死後の世界から、食い違う三人の回想がぶつかり合いながら「訪問」は再び、三たび繰り返される。
現代史の中で未だ解明されないこの一日、原爆製造へのかかわり、戦争と祖国愛、物理学者としての
倫理観、尊敬と嫉妬、死者たちが語れば語るほどスリリングな人間ドラマが展開する。
核の恐怖、科学者の責任、人間の真実とは……史実に残る謎の一日に迫る!
出演 / 菅原 司 山内 榮治 渡辺 美英子
中板橋新生館スタジオ 東京都板橋区中板橋19−6 ダイアパレスB1
前売 2,500円 当日 2,800円 学生 2,000円 日時指定・全席自由
2月10日(金)19:00
11日(土・祝)14:00 19:00
12日(日)14:00
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