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2017年3月28日 (火)

「右派ビジネス」の実態


今日はこの論考を紹介して終わりです。

「右派ビジネス」の実態がよくわかります。

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「森友学園」の認可申請取り下げ表明と同じ3月10日、元航空幕僚長の右派政治家、田母神(たもがみ)俊雄被告が2014年東京都知事選での公職選挙法違反(運動員買収)で懲役2年を求刑された。「日本のこころを大切にする党」(旧・次世代の党)所属。やはり「保守」精神や夫婦の和を説く教育勅語賛美が持論だが、近年は表のきれい事と裏腹に、不倫騒ぎや寄付金横領など「色とカネ」のトラブルを次々に起こしている。直接の関係は不明だが、ツイッターで森友学園を「日本を立て直そうと頑張っている。現在の騒動は反日的日本人たちの日本潰しの行動」と擁護する。同じ臭いがするのだろうか。

 先週号(3月26日号)で「森友疑惑は思想事件である」と書いた。一般的な「政と官」「政治とカネ」の問題として片付けるのではなく、教育勅語を無邪気に懐かしがったり、安倍流保守政治が高支持を維持する日本社会の思想状況を読み取らなければ、こういう問題が起きる原理は見えないだろうと指摘した。同時に、こういう疑惑を生む社会の土壌として、「保守」が思想ではなくビジネスになっている実態があることを指摘しなければなるまい。

「森友学園」経営者一家と稲田弁護士夫妻と田母神被告に共通しているのは、「保守」を符丁に「敵と仲間」を簡単に仕分けし、「類は友を呼ぶ」方式でお互いによく知らない者同士が簡単につながり合って(ツイッターやフェイスブックもどこか似ている)、結局何をしているのかといえば、国有地格安払い下げや実入りのいい弁護士収入や政界進出や寄付金横領といったカネもうけと権力志向ばかりだったという情けない顛末(てんまつ)である。この人たちにとって「保守」とは、便利な合言葉、おいしい商標・ブランド、議員バッジをつけた人たちへの面会証のようなものでしかないのではないか。

「東条ブランド」を使ったビジネス

 森友疑惑のようなスキャンダルや事件にまで発展するケースの裾野には「保守ビジネス業界」を形成する草の根層が広がる。

 私は3年前、『毎日新聞』で42回連載した長期企画「いま靖国から」で、東条英機元首相のひ孫の活動を紹介した。脱サラした40代男性。職業は「社会起業家」を名乗り、神社の歴史から日本の伝統や価値を説く。「東条」はある種の人々にとっては魅力的なブランドで、神社のサイトや講演を通して各地に地道にファンを増やし、2014年末、一般社団法人「国際教養振興協会」を創設して代表理事になった。

 設立総会を取材した。会費2万円。都心の豪華な宴会場に、30、40代を中心に男女の学生も交えて100人余が出席した。当時の記事から会の模様を引用しよう。まず代表挨拶(あいさつ)。

「若い時はリベラルでした。ずっと自分の名前から逃げていた。高校の親友は反天皇制のビラをまいていたが、今では警察官。自分に守るべきものが見つかった時、人は保守になる」。

 先週号で紹介した政治思想史研究者、川村覚文(さとふみ)氏の「豊かさの中での自己証明としての保守」という分析を裏付ける。なぜ「教養」なのか。代表が説明する。

「日本は世界有数の文化立国。ところが、大半の日本人は誇るべき建国の歴史も文化も語れない。神社・神道はその源泉です。真のグローバリズムには、伝統に根ざした教養力の再生、国際教養人の創出が求められています」

 事業の柱は、教育・グローバル・ビジネス。「森友学園」が小学校の勧誘パンフレットでうたったのも「八百万神(やおよろずのかみ)を通して神ながらの心、日本人精神、道徳心、教養人を育成。国際語の英語を学んで国意識を構築。国家有為の人材育成」。とてもよく似ている。会場には、学生・生徒数3万人超の巨大学校法人の女性総長、国際異業種交流会の主宰者、旧五摂家出身の料理研究家、「人生で成功する○つの方法」といった世界的な自己啓発本の日本総代理人などがいた。皆「保守だが、右翼ではない」と言う。共通の関心事は、ビジネスでの成功、つまりカネもうけのようだ。私は会場で知り合った同族経営企業研究家に後日の取材を取り付けた。

 数日後、協会の理事で運営を実質的に統括している30代の経営コンサルタントが電話で怒鳴り込んできた。「どういうつもりだ。勝手にコンタクトを取るな」。その後も取材や記事に文句や注文をつけてくる。分かってきたのは、つながりのできた起業家や有識者を「芸能プロダクション」のように「タレント」として囲い込み管理しているつもりらしく、報道の自由という基本的人権観がない。報道ではなく、メディアに出るのはすべて宣伝・広報で、取材は自分たちの許容範囲に制限するのが当然という姿勢だった。断っておくと、東条英機のひ孫の男性は、誠実で落ち着いた親しみの持てる好人物である。ただし、年少の青年コンサルタントが経営する「東条ブランド」のビジネスモデルに乗った「タレントの一人」にも見えた。

「運動なんかしない、商売だもの」

 東条英機のひ孫の男性は、明治天皇の女系の孫の孫(遠い……)で旧皇族家出身の政治評論家、竹田恒泰氏が代表を務める「竹田研究会」に出入りしてノウハウを学んだと明かした。竹田氏が国史・日本神話・憲法・皇室を講義する勉強会で、一時は全国17カ所で3000人が参加していたが、昨年秋、会の幹事長だった事業家が助成金詐欺と脱税で逮捕・起訴される不祥事を起こしている。

 東条英機のひ孫と同じように、同会で学んだノウハウで独立し、「保守ビジネス」を起業した男性2人に取材した。話を総合すると――。

「セミナー屋だね。会費3000円で1回25人も集まれば成り立つ。あとはネット塾。私は月1000円で約1400人に歴史や時事問題で面白い言論を配信している。毎月定期的に140万円。売れっ子のKさんは月5000円、Mさんは月3000円で常時1000人以上。やめられないよ。運動なんかしない、商売だもの。自己啓発とか異業種交流とか似たモデルは他にもあった。1990年代末から保守が売り物として成立するようになった」

 2人は今も活動中。ウィキペディアにも載っている業界の中堅どころだ。商売敵か論敵か、仲は悪い。営業妨害と言われても困るので、匿名にした。

 こうした集まりを除くと、20、30代のまじめそうな女性がとても多い。彼女たちが考え方の合う男性と結婚し、子供を「森友学園」の小学校に入学させようと考えても不思議はない。実際「保守ビジネス」が定着して、すでにそれだけの歳月が経(た)っている。そうした社会的な広がりと、政治権力に結びついた「保守」の腐敗堕落が交差したところに「森友疑惑」が芽吹いた。「安倍流保守政治」は、両方を養分として1強体制を続けている。

(サンデー毎日4月2日号から)


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