橘 曙 覧(たちばなあけみ)の獨 樂 吟を学んだ
717短歌・俳句勉強会6月例会(6・8)のご報告
啄木と子規を交代で学んでいる子規の会でしたが子規が「歌よみに与ふる書」で絶賛している橘 曙 覧(たちばなあけみ)の獨 樂 吟を取り上げました。
第一部は7人の参加者に「獨 樂 吟」から10首づつ選んで貰いました。
得票上位の結果はこうです。
獨 樂 吟 橘 曙 覧(たちばなあけみ)
1位、7票
9.たのしみは朝おきいでゝ昨日まで無(なか)りし花の咲ける見る時
2位、6票
51.たのしみは野山のさとに人遇(あひ)て我を見しりてあるじするとき
3位、5票
6.たのしみは妻子(めこ)むつまじくうちつどひ頭(かしら)ならべて物をくふ時
24.たのしみは心をおかぬ友どちと笑ひかたりて腹をよるとき
1位の歌には票が入ると思ったが満票というのには驚いた。
実は事前に用意した資料にこういうのがあったので影響されるといけないと思って事前には出さなかった。
橘曙覧の長男、今滋に『橘曙覧小伝』がある。また彼は父の残した歌を編集し、1878年(明治11年)『橘曙覧遺稿志濃夫廼舎歌集』(しのぶのやかしゅう)を編纂した。正岡子規はこれに注目して1899年(明治32年)、「日本」紙上に発表した「曙覧の歌」で、源実朝以後、歌人の名に値するものは橘曙覧ただ一人と絶賛し、「墨汁一滴」において「万葉以後において歌人四人を得たり」として、源実朝・田安宗武・平賀元義とともに曙覧を挙げている。以後、子規およびアララギの影響下にある和歌史観において重要な存在となる。
彼の歌を編纂したもので『独楽吟』(どくらくぎん)[1]がある。どれも「たのしみは」で始まる一連の歌を集めたものである。1994年、今上天皇、皇后がアメリカを訪問した折、ビル・クリントン大統領が歓迎の挨拶の中で、この中の歌の一首「たのしみは朝おきいでて昨日まで無かりし花の咲ける見る時」を引用してスピーチをしたことで、その名と歌は再び脚光を浴びることになった。wikipediaよりなぜクリントン大統領の周辺に独楽吟が伝わっていたのか。新井氏が作家・上坂紀夫氏のリサーチの成果として伝えるところでは、ドナルド・キーン氏が編纂した『日本文学選集』の中に独楽吟の八首が英訳付きで紹介されていた。
ホワイトハウスのスタッフの一人がこの歌に注目、クリントン大統領も共感して、日本を代表する詩文に「たのしみは」が取り上げられたという。
中外日報(京都の新聞)
http://www.chugainippoh.co.jp/NEWWEB/n-shasetu/08/0812/shasetu081220.html
人間の植物にかける思いは世界共通ということだろう。
第一部は楽しみはで始まる短歌・俳句を作って頂き投票しました。
票の入ったものを紹介します。
1位、5票
楽しみは朝陽を仰ぎ今日の日も命ありしをたしかむる時 喜美代
2位、3票
楽しみは友のたよりを受け取りてつつがなきこと確認しあうとき たま代
3位、2票
楽しみは孫と二人で絵に会いに美術館へと出かけたる時 幸子(生まれて初めて作った短歌)
4位、1票
楽しみは子規・啄木を学ばんといこいの家に人の寄るとき 公彦
楽しみは庭で育てた藍の葉を白き布地に浅き青色 澄江
楽しみはぐすり眠りさあ今日はあれをしようと決意するとき たま代
楽しみを楽しみと思わずにすぎゆきしわれのおごりよ たま代
たま代さんは二十分の間に十二首も作られました。一晩で百四十首作った啄木以上のペースです。
次回は7・13(第二木曜)10時に以下でドナルドキーンの「石川啄木」をテキストに行います。
〒341-0018 埼玉県三郷市早稲田7丁目1-7
いこいの家717 特定非営利活動法人三郷早稲田ライフサポートネット
埼玉県三郷市早稲田7丁目1番地7 電話:048-934-5761
参考までに「獨 樂 吟」前五十二首と右端の数字が我々の投票結果です。
獨 樂 吟 橘 曙 覧(たちばなあけみ)
1. たのしみは草のいほりの筵(むしろ)敷(しき)ひとりこゝろを靜めをるとき 3
2.たのしみはすびつのもとにうち倒れゆすり起(おこ)すも知らで寝し時 0
3.たのしみは珍しき書(ふみ)人にかり始め一ひらひろげたる時 2
4.たのしみは紙をひろげてとる筆の思ひの外に能くかけし時 2
5.たのしみは百日(ももか)ひねれど成らぬ歌のふとおもしろく出(いで)きぬる時 1
6.たのしみは妻子(めこ)むつまじくうちつどひ頭(かしら)ならべて物をくふ時 5
7.たのしみは物をかゝせて善き價惜(をし)みげもなく人のくれし時 0
8.たのしみは空暖(あたた)かにうち晴(はれ)し春秋の日に出でありく時 4
9.たのしみは朝おきいでゝ昨日まで無(なか)りし花の咲ける見る時 7
10.たのしみは心にうかぶはかなごと思ひつゞけて煙草(たばこ)すふとき 0
11.たのしみは意(こころ)にかなふ山水のあたりしづかに見てありくとき 4
12.たのしみは尋常(よのつね)ならぬ書(ふみ)に畫(ゑ)にうちひろげつゝ見もてゆく時 1
13.たのしみは常に見なれぬ鳥の來て軒遠からぬ樹に鳴(なき)しとき 2
14.たのしみはあき米櫃に米いでき今一月はよしといふとき 1
15.たのしみは物識人(ものしりびと)に稀にあひて古(いに)しへ今を語りあふとき 1
16.たのしみは門(かど)賣りありく魚買(かひ)て煮(に)る鐺(なべ)の香を鼻に嗅ぐ時 1
17.たのしみはまれに魚煮て兒等(こら)皆がうましうましといひて食ふ時 4
18.たのしみはそゞろ讀(よみ)ゆく書(ふみ)の中に我とひとしき人をみし時 3
19.たのしみは雪ふるよさり酒の糟あぶりて食(くひ)て火にあたる時 1
20.たのしみは書よみ倦(うめ)るをりしもあれ聲知る人の門たゝく時 0
21.たのしみは世に解(とき)がたくする書の心をひとりさとり得し時 1
22.たのしみは錢なくなりてわびをるに人の來(きた)りて錢くれし時 0
23.たのしみは炭さしすてゝおきし火の紅(あか)くなりきて湯の煮(にゆ)る時 0
24.たのしみは心をおかぬ友どちと笑ひかたりて腹をよるとき 5
25.たのしみは晝寝せしまに庭ぬらしふりたる雨をさめてしる時 0
26.たのしみは晝寝目ざむる枕べにことことと湯の煮(にえ)てある時 0
27.たのしみは湯わかしわかし埋火(うづみび)を中にさし置(おき)て人とかたる時 2
28.たのしみはとぼしきまゝに人集め酒飲め物を食へといふ時 4
29.たのしみは客人(まらうど)えたる折しもあれ瓢(ひさご)に酒のありあへる時 0
30.たのしみは家内(やうち)五人(いつたり)五たりが風だにひかでありあへる時 0
31.たのしみは機(はた)おりたてゝ新しきころもを縫(ぬひ)て妻が着する時 1
32.たのしみは三人の兒どもすくすくと大きくなれる姿みる時 3
33.たのしみは人も訪ひこず事もなく心をいれて書(ふみ)を見る時 4
34.たのしみは明日物くるといふ占(うら)を咲くともし火の花にみる時 0
35.たのしみはたのむをよびて門(かど)あけて物もて來つる使(つかひ)えし時 1
36.たのしみは木芽(きのめ)煮(にや)して大きなる饅頭(まんぢゆう)を一つほゝばりしとき 0
37.たのしみはつねに好める燒豆腐うまく煮(に)たてゝ食(くは)せけるとき 1
38.たのしみは小豆の飯の冷(ひえ)たるを茶漬(ちやづけ)てふ物になしてくふ時 0
39.たのしみはいやなる人の來たりしが長くもをらでかへりけるとき 1
40.たのしみは田づらに行(ゆき)しわらは等が耒(すき)鍬(くは)とりて歸りくる時 0
41.たのしみは衾(ふすま)かづきて物がたりいひをるうちに寝入(ねいり)たるとき 0
42.たのしみはわらは墨するかたはらに筆の運びを思ひをる時 0
43.たのしみは好き筆をえて先(まづ)水にひたしねぶりて試(こころみ)るとき 1
44.たのしみは庭にうゑたる春秋の花のさかりにあへる時々 3
45.たのしみはほしかりし物錢ぶくろうちかたぶけてかひえたるとき 0
46.たのしみは神の御國の民として神の敎(をしへ)をふかくおもふとき 1
47.たのしみは戎夷(えみし)よろこぶ世の中に皇國(みくに)忘れぬ人を見るとき 0
48.たのしみは鈴屋大人(すすのやうし)の後(のち)に生れその御諭(みさとし)をうくる思ふ時 1
49.たのしみは數ある書(ふみ)を辛くしてうつし竟(をへ)つゝとぢて見るとき 0
50.たのしみは野寺山里日をくらしやどれといはれやどりけるとき 0
51.たのしみは野山のさとに人遇(あひ)て我を見しりてあるじするとき 6
52.たのしみはふと見てほしくおもふ物辛くはかりて手にいれしとき 3
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