歌集「白萩坂」(大山志津子著)を読んで
歌集「白萩坂」(大山志津子著)を読んでご本人に以下のお手紙をお送りしました。
ご了解を頂いたので以下転載します。
大山さんも久我さんも新日本歌人福岡支部で1年間一緒に短歌に取り組んだ仲間です。
大山さんの健康を御祈りしています。
ーー
大山志津子様
大津留公彦です
大分遅れましたが歌集「白萩坂」お送り頂きまして有難うございました。
送って頂いた久我節子さんの御手紙には「少し元気になられた」とありました。
ご病状が分かりませんがご自愛下さい。
福岡には一年しかおりませんでしたが福岡支部の方々の歌には興味を持って見ています。
あとがきを読みますと玉城徹さんの「うた」に属されていたのですね。
玉城徹さんというと私の参加する同人誌「炎(ほむら)」第二号(1987年)に「炎の会の方々へー創刊号を読んで」という感想を寄せて頂いたことが記憶にあります。
ちょっと探してみたら冒頭にこう書かれていました。
『「マルクス主義の方法によってのみリアリズム論は真に深められる」だろうと、北岡忠憲さんが書いておられます。この点に大きな期待をいだいているということを、最初に申し上げておきます。これまでの歌壇におけるリアリズム論というものが、いつも、アララギ写生主義とどこかで紛れをおこしてしまうのを、わたしは残念に思っているのです。」
(中略)あの写生論の基礎になっている形而上学的要素は、はっきりと認識して批判してゆかなければならないものです。』
以下同人との論争に続くのですが玉城さんの新たな面を見たような気がします。
その玉城さんの教えを受けた大山さんの歌は自然詠と家族詠と社会詠が混然一体となっており、こういう歌の作り方が出来たらいいなと思いました。
今後の大山さんの歌に注目し、期待したいと思います。
さて歌集「白萩坂」の十三首選を行いましたので紹介しておわりとします。
p23 夫描きしカンバス古きをいくつ燃やす煙は枇杷の葉群に昇る
p48 赤旗を持ちて唱ふは六人なり三池炭鉱今朝閉山す
p52 をちこちの畑隅にしてこの秋の菊咲く寂し母はいまさず
p75 磔刑のキリスト像の手のひらを打ちつくる釘ああ大きくて
p89 戦災に焼けし瓦を塗り込めし博多塀というが残れり
p107 旅人の乗り物かれは膝折りし駱駝よひとつの瘤持つ駱駝よ
p113 限りなく平和の礎続きたり名を「妻」と「長男」とあるも悲しき
p128 蚊を打ちて苦瓜捥ぎて時が逝く短き夏よ六十五歳の夏
p130 夜の机に鉛筆の芯折れ氏ままわが精神よ眠るな眠るな
p144 ジギタリスの白きを選りて植ゑにしが白き寂しもことに今年は
p152 老いてなお活動家なるあの方へピカソの白き鳩の絵葉書
p198 いとしきものあるがごとくに右胸をそと押さえつつ春はもうすぐ
p215 思ひ出の白萩坂よ虹の萩咲けばまあねつぶやきのぼる
平和万葉集巻四の歌も読みました。
星野村の平和の塔に青々と炎三つ四つ原爆の火は燃ゆ
老いてなお活動家なるあの方へピカソの白き鳩の絵葉書
(この活動家とは加来和江さんなのですね。亡くなった息子さんは大学時代の仲間でした。)
いずれも確かな行動に基づいた玉城さんのいう形而上学的でないリアリズムの歌ですね。
(中略)
以上です。お元気でお暮し下さい。
2017年11月14日
三郷にて 大津留公彦
以上です。
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