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2018年1月 2日 (火)

「新日本歌人」2018年1月号10首選

「新日本歌人」2018年1月号10首選です。
なんと半分が亡くなられた方か亡くなられた方に関する歌です。
今年は毎月10首選をやりたいと思います。

ーー

p14 七十七歳の吾の命ごいもう三年『あさぎ』十号なしとげたしと
★故・田淵茂美さんの絶詠です。支部誌『あさぎ』十号は出るのだろうか?

p31 「上げ潮」の全国発送の手際よさ失語症など忘れるほどに
東京 横井妙子
★故・滝沢教子さんへの晩歌です。滝沢さんは実務能力に長けた方だった。

p36 夫と我息子三人我が家の玄関の今日ハイヒールの赤
滋賀 峯村あや子
★他にも好きな歌があったがこの赤い映像が見える歌を選びました。おめでとうございます。

p41 いずれ土に還るを真昼先立ちて地に滲むごとく我が影は濃し
千葉 碓田のぼる
★真昼の寂寥感と人生の哀歓を見事に感じさせる。脱帽です。

p44 ケアハウス「茜の会」と名付けたり七十路八十路の翁と媼
福岡 加来和江
★施設に入られても歌会を組織する亡き我が同級生の母君に敬意を表します。

p47 多喜二隠れし崖上の離れへみんなして車椅子ごと運び上げし日 七沢温泉
東京 小石雅夫
★故・田淵茂美さんへの挽歌。この多喜二の居た離れは高いところにあり、石山さん達と抱え上げた。

p60 自らの出征を送る万歳に「あと一分」と描き続けしという
長野 久保田武嗣
★無人館の絵のエピソードでしょう。この若者はきっと戻らなかったのでしょう。悲しい。

p62 売り込みのエステシャンの背の壁のクリムトの額わずかに傾ぐ
三枝史生 山口
★歌の技術はこの「わずかに傾ぐ」にある。山口の人達の歌の技術を見習いたい。

p66 協会誌「た行」をまずは開けども先達三人の名はもう在らず(高橋さん・田賀・滝沢さん)
東京 高山永子
★亡くなったこの三人はた行だったというのは高山さん等た行の人しか思いつかない。

p67 素手で生まれて素手にて死に行く人間の一つなる世を思うしきりに
静岡 故・菊池東太郎
★先月16日に亡くなった菊池さんの絶詠です。「兵戈無用」と題された八首の中の一首です。
最後まで社会に発信されてました。合掌!


亡くなった故・菊池東太郎さんは1月号の選もされている。
「その選のあとに」の文章の一部を紹介します。
私たちへの遺書のようなものとして心に刻むべきだと思います。

「8月号「セミナーへの提言で文学的作品化課題の中で「協会」の作品が成功してないのは、「まず、発想自体の欠陥(中略)私たちが一定の社会認識を有するという自惚れをもっているためでしょう」と指摘しました。(中略)
短歌というものは謙虚なものであると私は思う。表現・言葉の高い文学化を勝ち取る苦労をして初めて可能なものだと思う。」

同じ号で選をされた中山惟行さんの「その選のあとに」に引用された菊池さんの文章の一部を紹介します。

「類型的作品は何故生み出されるのでしょうか。その根底に、発想の類型化があります」「協会の構成員の意識の共通性、生活、活動パターンが共通の発想を生み出しているともいえます」

以上です。

俳句は新俳句人連盟

短歌は新日本歌人
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