「いのち」 佐々木妙二歌集(昭和62年発行)より十首
「いのち」
佐々木妙二歌集(昭和62年発行)より十首
大津留公彦選
八十年私を支えてきた背骨
老い枯れるとも曲がることなし
どこへでも麻痺の片腕が従いてきて
いつも何かを訴えている
当然のことを言うても通らない
通さなければいつまでも通らない
声あげて泣いてもどうにもならないから
まことにひとは 声あげて泣く
八十をいつまで生きるか生きていて
いつも明日のすることがある
陽だまりに麻痺の片足なげだして
てんとう虫とぬくもっている
あるがままの自分を正直に生きてゆく
それだけでよい それが出来ない
多数決に葬られるとも言い通す
孤立はつねに さわやかにある
人は人、私にかかわりないことだ
そうは思うが なかなか寝付けぬ
屈託なく車椅子押す妻の眸(め)に
耀うものか 欅若葉の
以上です。
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