仕事着 佐々木妙二歌集昭和29年)から9首
仕事着
佐々木妙二歌集昭和29年)から9首
大津留公彦
手術台から抱えておろす
体重の、
ついに守りえた 一人の生命
こゝろよく金を貸してくれた順三の
店の灯に
送られて帰る。
技術と誠実が開業術だ と
答えつゝ、
そればかりでもない と、言葉にはいわぬ。
ゆたかだということは
こんなにもいゝ、
うごくと 浴槽から
湯があふれ こぼれる。
日本の
ある町隅の治療院にいて、
父のごとくに スターリンをおもう。
これはひどい 性病
米兵相手の
まだ肢体の伸びきらぬ 日本の小娘。
ま夜中の戸をたゝかれては
誰よりも先に眼をさます
町医者の俺の習性
冷えきってもぐり込むふとんの中に
ふれた妻の足も
まだ温もれないでいる
呼び売りの「ハタ」がまだあまり売れてないと思いながら
改札口の列に押されてゆく。
以上
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