佐々木妙二歌集「限りなく」を読んで八首
2018年2月15日
佐々木妙二歌集「限りなく」を読んで八首
大津留公彦
昼休みに妙二の「限りなく」を読み終わる癌患者となる医者の悲しみ
水野昌雄あとがきに書く妙二なる言葉とくらしの葛藤の様
妻との諍い離婚となりぬ愛憎の長く続きし日々を経てのち
まさに我が出会いし頃の短歌なり癌との闘い激しきを知る
政治詠ほとんどあらずここにあるは病と愛憎そして友なり
赤木健介を詠いし歌の穏やかなり三十年の付き合い遥けし
佐々木妙二その歌ぶりの変わらぬこと泰山のごと大海のごと
ーー
佐々木妙二歌集「限りなく」八首選
大津留公彦
どの患者のカルテの終末も みなひとつ、
わが身の癌に 例外はなし。
肛門をふさぎ 下腹部に孔をあける、
医学的合理性を
いまわが生身の写身に。
人間のそらぞらしさを
押しつぶし
岩は 巨大に そこにある。
ともかくも離婚はするな と
母に言う 息子らのことば
重く のしかかる。
家も土地も 些かの財も 妻にわたし、
老残のひとり
新しく生きる。
形あれば いつか崩れる
この湯のみの、
それゆえにこそ いま掌のなかに。
飲み残しの私のコーヒーを飲んでいる、
愛情は かく 単純にある。
つきあい下手が
多くの友を失った、
失って惜しいいくたりかある 。
ーー
それぞれから一首選んで頂けると有り難いです。
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