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2018年7月20日 (金)

火を継ぐもの 回想の歌人たち(碓田のぼる著)を読んだ

火を継ぐもの 回想の歌人たち(碓田のぼる著)を読んだ。

先に感想を書いた「団結すれば勝つと啄木はいうー石川啄木の生涯と世界」は書き下ろしだったがこの本は過去に書いた文章を集めたものだがそれぞれ重要な文章である。
参考
碓田のぼるさんの「団結すれば勝つ、と啄木はいう」を読んだ。

新日本歌人に掲載された論文は読んでいるがこうやってまとめられると碓田のぼるという文学者の全体像が見えてくるような気がする。

各文章のタイトルは以下にある通りであるが名前だけ列記するとこうなる。
赤木健介/ 芥川龍之介/ レーニン/ 佐々木妙二/ 小林多喜二/ 岩間正男/ 渡辺順三/ 八坂スミ/矢代東村/山原健二郎

いずれも碓田さんの思い入れのある文章なので全体を読んで頂きたいが私のあまり知らなかった一人を紹介します。
その人は岩間正男さん
闘う教師、歌人そして政治家である。
小学校4年の時に以下の歌を詠んで担任教師をびっくりさせている。

こわごわとのぼるさやかの相山もきたりてみれば桜さきみつ

学校を出て、宮城で小学校教師となり上田庄三郎らの「綴方生活」に出会う。
成城学園小学部の教師となり白秋の二人の子どもを教える。
教師の追い出し問題を発端とする成城学園事件が起こり馘首される。
白秋は岩間ら全面的に支持し短歌144首を全校父母に送ったりしている。
岩間は白秋の「多磨」に入会し短歌を再開する。

ここで述べられている白秋と岩間の関係は短歌の師と弟子という関係を超えたものがある。
碓田さんはこう書いている。
「北原白秋という、すぐれた詩人の魂の中にある、はげしいたたかいの心にふれ、それを継承・発展させたところに、歌人岩間正男の真骨頂があった。」
白秋は1942年に亡くなるが前後3年間岩間は「多磨」を編集し選歌も担当した。
そして祖師谷の自宅から阿佐ヶ谷の白秋宅まで週三日自転車で通ったという。

2・1ゼネスト目前の1946年に出来た全日本教員組合協議会(全教協)の中央闘争委員長が岩間正男だった。
当時の歌にこれがある

闘争宣言手交し終えて炎群(ほむら)なす隊列のなかにわれら入り行く

当時の文部大臣に闘争宣言を手渡した時のものである。

全教協は1947年結成の日教組の母体となった。
同じ年に岩間は全教協に推薦され無所属で参議院全国区に立候補し当選した。

第二芸術論の桑原武夫は岩間の自然詠の歌を批判した。
しかし闘争宣言の歌に見るようにそれは「闘う短歌」であり、その批判は当たっていない。

戦前の「多磨」を通した岩間の発言は戦時中発表された唯一のものなのかもしれないという気がする。

岩間は1949年に日本共産党に入党する。

昂ぶりも逡(ため)らいもなしといわば言い過ぎんこの夜入党宣言ひとり書きつつ

1977年27年の議員生活を終えて退職し新日本歌人協会に入会している。
退職後病気がちになった時に見舞った碓田さんに岩間さんは死後読んでほしいと封書を渡された。
死後開封したら遺歌集や教職員組合や、病気のことが細々と書いてあったという。

上田耕一郎の岩間さんの葬儀での「送る言葉」ではこの歌が紹介されたという。

銃眼に身をふさぐごとき思いもて過ぎしたたかいのとき長かりき

葬儀の時白秋の子の隆太郎さんは碓田さんはこう言われたという。

「おやじが一番信頼していたのは岩間さんでしたよ」

岩間正男という人物に出会った気がする。

私は大学時代から社会人になる頃にかけて母と一緒にコスモス短歌会に属していた。
岩間が編集した「多磨」の後継誌である。
そういう意味では岩間さんに私自身も遠く関わっている。

私は大学時代から青年新聞を通して碓田さんの指導も受けてきた。
45年来の弟子である。

暑い夏に自分の二つの短歌のルーツに思いを致しました。

内容詳細
時代の逆流に抗し、言葉の力を信じ、一途に歌い、鮮烈な生涯を生きた歌人たち。
碓田のぼる歌論「回想の歌人たち」第二弾!

目次 : 1 一筋に生きる(赤木健介と芥川龍之介、そしてレーニン/ 佐々木妙二と小林多喜二/ 岩間正男論―炎群の歌人の生涯 ほか)/ 2 短歌の革新―源流をさぐる(初心の旗と展望―『人民短歌』以前と以後をからませて/ あらたな飛躍のために―創立七〇周年に思うこと/ インタビュー『渡辺順三研究』をめぐって)/ 3 追悼譜(花が咲く春前にして渡辺順三さんをおくる/ 追悼 八坂スミさんの業績/ 火群の道一筋に 岩間正男さんをしのぶ ほか)

【著者紹介】
碓田のぼる : 1928年、長野県に生まれる。現在、新日本歌人協会全国幹事。民主主義文学会会員。日本文芸家協会会員。国際啄木学会会員。歌集、『花どき』(第10回多喜二・百合子賞受賞)(長谷川書房)他、著書がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)
http://kaikenno.com

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