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2018年9月28日 (金)

「翁長知事の遺志を継ぐ」

「翁長知事の遺志を継ぐ」
三郷で講演をして頂いた琉球大学の亀山統一さんからこの本を送って頂いた。
「翁長知事の遺志を継ぐー辺野古に基地はつくらせない」(自治体研究社発行)
発行日が9月7日となっている。8月8日の翁長知事のご逝去から一ヶ月も経っていない。
オール沖縄の知事候補が決まる前なので玉城デニーという言葉はないが亀山さん始め執筆
全員が辺野古に基地はつくらせない玉城デニーさんの当選の為に頑張っている事でしょう。
その思いに答え、又沖縄の人たちの投票の参考にして頂く為に、執筆者自身が学者のオール沖縄とも言える執筆者全員の記述の一部を順に紹介します。

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宮本憲一(滋賀大学元学長・大阪市立大学名誉教授)
最後の文を紹介します。
翁長知事は福岡高裁での陳述で次のように述べています。
『歴史的にも現在においても、沖縄県民は自由・平等・自己決定権をないがしろにされてまいりました。私はこのことを「魂の飢餓」と表現しています。(中略)日本には、本当に地方自治や民主主義は存在するのでしょうか。沖縄県にのみ負担を強いる今の日米安保体制は正常なのでしょうか。国民の皆様すべてに問いかけたいとおもいます。』
 私たちはこの翁長さんの遺志となった問いかけに応えなければならないでしょう。

紙野健二(名古屋大学名誉教授)
さまざまな沖縄への悪しき影響を「被害」や「損害」と言わず「負担」といいその「負担」も「無くす」ではなく「軽減する」という政府の言い方は差別的で、不当な忍従を迫るものというという指摘にははっとしました。
「辺野古訴訟で問われてきたもの」が詳論されています。

安部真理子(日本自然保護協会自然保護室主任)
 ここで初めて知ったのは辺野古の埋め立てには6県7箇所から土砂が持ち込まれそちらと辺野古の両方の自然破壊が行われるということです。
その7箇所は奄美大島、徳之島、瀬戸内、門司、天草、佐多岬、五島です。
運び込まれる土砂に付着して来る生物が引き起こす外来種問題も発生します。
アセスではジョゴンが見つからなかったがその後食痕が151も見つかった。しかしボーリングの騒音に警戒したかある個体は大浦湾をその後利用しなくなった由。
又生きている珊瑚の上にブロックが置かれていたことが分かったそうです。

亀山統一(琉球大学助教)
沖縄島は北半分(やんばる)の山、南半分はさんご礁の隆起した平地が多く、土の質も違うので生物の棲む「場」の多様性が豊かでこの大きさや多様な地形も「生態系のホットスポット」といわれるほどの沖縄の生物の豊かさをもたらす一因だそうです。
又、国際自然保護連合はユネスコに対して世界自然遺産登録の延期を勧告したそうですが、軍事基地を外していることが原因だそうです。
翁長知事は沖縄島中部にある泡瀬干潟の埋め立て事業を中止しませんでしたが、残された泡瀬干潟のラムサール条約登録を目指し始めたそうです。

川瀬光義(京都府立大学教授)
四年前の知事選の翁長さんの「基地は経済発展の阻害要因」というスローガンは、基地撤去を求めることと経済をよくすることは矛盾しないことを端的に表したそうです。しかし川瀬さんは軍事基地と民間の経済施設の経済比較には意味がないと言います。
アダム・スミスはこう言っているそうです。
「海軍や陸軍は平時は何も生産しないし、戦時には戦争を続けている間すら、その維持費を賄えるものは何も生産しない。自分では何も生産せず、他人の労働によって維持されている。」軍隊には経済効果はないということですね。
 日米地位協定によって、米軍関係者は公租公課を免除されているそうです。騒音被害や行政サービスを受けているのに税金は払わないという経済面でも迷惑な存在です。
基地の建設投資はなんら県民に経済効果を生まないが、返還のあとの有害物質の除去費用などは膨大といわれており「負の投資」だそうです。
 観光客は900万人を超えハワイを抜いたそうです。
辺野古の埋め立ては有望な観光資源を失うということですね。

仲地 博(沖縄大学学長)
翁長さんの著書「戦う民意」から引用しています。最後の言葉を付けて引用します。
『「私だけが政治的に死んでも肉体的に滅んでも、沖縄を代表して言いたいことを言おうと思う。」「私たちが屈することなく立ち向かっていく姿を子どもたちに見せれば子どもたちは子どもたちなりの判断をして力強く生きていくと信じます」
遺言と言ってもいいでしょう。責任世代として自分たちの姿を子や孫に伝えることが翁長氏を悼むことなのでしょう。』

高良鉄美(琉球大学教授)
「沖縄と憲法」と題する文章の最後を引用します。
「憲法は地方の民意を決して蔑ろにはしません。主権者である日本国民も地方自治の憲法理念に沿った憲政(立憲主義政治)を支持すると信じています。沖縄はそのために平和憲法の下への復帰を求めてきました。地方自治は民主主義の学校と言われますが、辺野古新基地建設問題はまさに日本民主主義を測る試金石だといえます。」

我部正明(琉球大学教授)
「米軍の海外基地と地位協定」と題する文章です。日本では米軍の基地使用に関し日米間での具体的規定がないため、米軍のほぼ自由な使用が認められている。
 今年の全国知事会ではこの地位協定の改定が翁長さんの努力もあり決議されている。
NATO諸国と比べても日本の地位協定は問題が多いそうです。

佐藤 学(沖縄国際大学教授)
「沖縄の平和」という文章です。
在沖縄の海兵隊は尖閣列島を守るためという誤解を解明し在沖縄の海兵隊は尖閣で何もできないことを説明しています。
・ 米国は尖閣の先集的領有権については中立
・ ガイドラインでは島嶼の防衛は自衛隊が一義的な責任を持つとなっている。
・ 国会でもそれは確認されている。
・ 海兵隊オスプレイは地上戦闘員を訓練場に運ぶ「通勤バス」なので戦えない。
中国が原理的に受け入れられない国であったとしても「平和的に共存していく方法を見出す他に道はない」由。

島袋 純(琉球大学教授)
「沖縄の自治」という文章です。
オスプレイ配備撤回と新基地建設反対の建白書の取りまとめ役であった翁長氏が沖縄の政治の中心に登場したのは沖縄の戦いの歴史の文脈の中で捉えるべきだと言われています。
翁長さんの登場は必然であったということでしょう。
瀬長亀次郎からの沖縄の闘いの歴史をヤマトンチューはもっと知るべきでしょう。

前泊博盛(沖縄国際大学教授)
 安倍政権の一括交付金削減などのいじめの中で米軍基地返還跡地の急成長や観光で、沖縄経済は今絶好調です。
(県民総生産増、実質経済成長率は全国一、人口増加率も東京を超え全国一、地価上昇率も全国一、観光客増、観光収入増、返還以後はじめての有効求人倍率が1を超え「人手不足」状態
安倍政権は9月30日に選ばれる県知事の辺野古移設への態度によって予算は考えるそうですが「沖縄子供の貧困対策緊急対策」の全額補助の削減は公言しています。
 最後はこう結んでいます。『税金を賄賂に使う政府の姑息な手段に翻弄されない「自立・自主経済」の確立が鍵となりそうです。」

島袋淑子(ひめゆり平和祈念資料館前館長)
本土からくる方に沖縄戦のことを知らないので「沖縄はよかったですね。戦前はとても貧しかったそうですから、いまこんなに栄えてよかったですね」と言われる方がいたのでこう返したそうです。「何を言っているのですか。戦前の沖縄は平和があってよかったんです。那覇は沖縄戦で全部焼けましたよ」
本土の若者に沖縄戦の実態が知られてないといつも思わされているようです。

桜井国俊(沖縄大学名誉教授)
「翁長知事の死を無にしてはならない」という短文です。

白藤博行(専修大学教授)
あとがきです。
「誇りある豊かさ」論は、経済的豊かさの追求だけに走りがちな「保守」と平和主義の徹底などの誇りだけに走りがちな「革新」を「心ひとつ」にする鍵概念だったのでしょう。「沖縄はひとつ」の希いは「辺野古に基地はつくらせない」という「心ひとつ」となって翁長知事を支えてきました。翁長知事と沖縄県民がひとつになった平和への希いは、まさに人間の尊厳を追求するものでした。

以上です。

自治体とは何か、民主主義とは何か、戦う民意を翁長さんとここに登場した多くの方に教えていただきました。
沖縄の皆さんの願いに応えて玉城デニー知事が誕生することを願っています。

2018年9月28日 大津留公彦

ご参考
亀山統一氏三郷講演
沖縄から見える日本のすがた
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「歌碑のある風景」を紹介します。
私も三郷市の万葉歌碑を紹介しています。