小石雅夫著 「やさしい短歌の読詠」を読んだ
小石雅夫著 「やさしい短歌の読詠」を読んだ
著者は「はじめに」にこう書いている。
「短歌は作り方というものの基礎となるものは、一にも二にも読みかた」
従って多くの歌が紹介されそれについてのコメントがされている。
いくつかの文章を紹介します。
啄木の歌を四首紹介して「青春、窮乏、望郷、社会意識、病などのほとんどを見ることができると思います。」と書きこの歌を紹介しています。
亡くなれる師がその昔
たまいたる
地理の本など取りいでて見る
そしてこの歌を連想すると「新しい発見」をしています。
地図の上朝鮮国にくろぐろと墨をぬりつゝ秋風を聴く
そして余計なことをいうようですがとして以下を書いている。
「すでに短歌をはじめているという人でも、よくよく聞いてみると、意外や意外、そうした歌人の歌集、さらには評論や歌論を、知識としてはよく知っていても、実際にはきちんと読んでいない“知識人”でだけでいる人が案外に多いものです。そうならないように、初心のうちに、これと思う歌人の歌集はまるごと読んでおきたいものです。」
「敵(短歌という容れ物)を知り己れ(盛り込む内容)を知るもの百戦(作歌)して破れず(短歌の成功)だと言いたいのです。」
「単なる『三十一文字』としてだけの器は底のないか浅い皿で、詩としての三十一音律を伴った器は底の深い、実もつゆも盛り込める大きな甕のようなもの」
1、 自分の感情を歌にこめるとき、むき出しにしないで、どう歌の内容に感情移入をして(仮託)いくか。
2、 歌のイメージをくっきりとさせる表現には、文字の意味上だけでなく、色彩的感覚の活用・効果も大きい。
3、 広大なものと卑小なもの、などのような対比的な表現で、より主題対象を明確にしていく。
4、 同じ対象でも、見方や性質など固定化せず、時・所によってさまざまな面から捉える
5、 対象の細かい観察と新しい発見に日頃から心を敏感にしている
6、 言葉の連想性などを捉えて、不要な説明的な部分の省略した表現をしていく
「作り方、あれこれ」からキーワードを並べます。
倣うこと、習うこと、一言メモ、一首一目、舌頭千転、まず、「生活を歌え」、人の心を種として、自然詠、生活詠、社会・時事詠、愛を詠う、終焉(期)を詠う、戦争を詠う、直接期的、間接的―詠み方、
最後に行分け短歌について
「新日本歌人」には行分け作品欄があります。主に田中収氏の「口語短歌の研究」からの紹介です。
「定型短歌的調律とはなにかといえば、五七五七七音の五句校正の調律であり、これが短歌基準律である。(中略)つまり短歌というからには短歌基準律によるものであって、それのない作品は、たとえそれがすぐれた短詩であっても短歌ではないと考えている」というのはかつて代表であり、口語歌を作った佐々木妙二の「短歌基準律論です。」
また渡辺順三はこう言っている。
「短歌の独特な韻律美というものは長短五つの句の構成によって生じているものだと思うのです。」
啄木の三行書きの短歌について「行分け(分かち書き)は、単に形式に変化を生じさせるだけのものではなく、内容にも大きな変化を生じさせる意図を含んだもの」であったと赤木健介はし、さらに後には、行の分かち書きだけでなく、字下げや句読点、記号まで使った新工夫をしめた点なども注目しています。
行分け作品欄の呼称について結論的に小石さんはこう書いています。
「新日本歌人」には行分け作品欄は「口語行分け自由律」とすることが、形式・内容ともに正確であろうと思います。
この呼称に私は大いに賛成です。
最後にまとめ、にかえての文章を引用します。
二八二首の多くの歌を紹介したことに触れ「短歌のつくり方というのは、つまり、より多くの短歌の読みののなかからこそ会得されていき、学びとられていくことが最良なことであるのだと思うからです。実際にも、先ずはじめに短歌を少し読みはじめてから、作歌への関心へ移ってくる、ということが一般です。したがって、本来の短歌入門というのは、短歌を読むことが第一歩であり、ここがもっとも基本点となるべきところなのだと思います。短歌の読み、作品の鑑賞力なくして、よい短歌が作れるはずはないと思っています。このことからあえて言えば、短歌のつくり方とは短歌の読み(の力)のなかにこそあると言えるだろうと思います。」
いい歌を沢山読みましょう。以上です。 2020/03/16 大津留公彦
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