お役所の掟―ぶっとび「霞ヶ関」事情を読んだ
お役所の掟―ぶっとび「霞ヶ関」事情を読んだ
この本は現役の厚生省検疫課長が書いた本です。
尤も初版が1993年です。ウィキペディアによるとこの本の出版後1995年に無断欠勤などを理由に懲戒免職になっている。(この本にもこの長期休暇については書かれている。)厚生大臣に処分の取り消しを求めて提訴したが敗訴して、フランスで暮らしていたが1999年にパリの病院にて結腸癌で51歳で亡くなっている。
この本を読むと国会答弁の言葉の正確な理解が出来る。
「前向きに、鋭意、十分、務める、配慮する、検討する、見守る、お聞きする、慎重に 等」の意味である。多くの方はその言葉の国会での意味を知っているだろうが。
現役の役人がこの類の本を書くというのは異例のことだろう。
アメリカで助教授を務め精神医療で知見のある作者だからこそだろう。
こういう本は今後なかなか出て来ないだろう。
出てくるときは日本の役所風土が大転換した時だろう。
どんな感じか少し紹介しよう。
――ある日、私が率直にものを言いすぎることを批判してある幹部が、「『男は建て前』『女は本音』の世界で生きる。本音ばかり言っているのでは、世の中うまく回らなくなる。だから女は表舞台に出てはいけないのだ。お前は本音を言いすぎる。女のような行動をとってはいけない」と言って私のことを叱ったのだが、この発言の根底には「男尊女卑」の論理のもとに女性を職場から排除するだけでなく「女は男に従順たれ」の発想を守り抜くのが役人だ、そんな思想を守り抜くのが役人だ、そんな思想が見えかくれしている、と思えたのだ。――
こういう感じだがジェンダー平等はその頃よりも大きく進んでいるので今は少し違うかもしれない。
親子関係についてはこんな文章があった。
――感情・衝動をコントロールする心の基盤は、幼いころ育ってきた母子関係と深い結びつきがある。欧米型の母子関係は、幼少のうちから母親離れを推奨する。だから大人になったとき、自分たちの感情、衝動がかなり強くても十分に対処しコントロールできるようになる。もちろん、欧米型の夫婦関係が感情、衝動のコントロールに大きく貢献していることは見逃せない。夫婦がひとつのユニットを形成し、子供は一人の個人として扱われる。だから、子供の時から独立を意識せざるをえないのだ。中学・高校へと進学すれば、両親の「早く自立すべきだ」との考え方はいっそう加速度を増す。けっこう、月謝の高い大学教育も、親の援助なく自分ひとりでまかなう人が圧倒的に多いのも、母親離れが異なった形態をとって毎日の生活に浸透しているあらわれのひとつなのである。――
中学校の終わりから海外に出た息子を見るにつけ、早い段階で母親離れが出来たと思うし、母親の息子離れが出来たと思う私はその父親であり夫である。
2021年3月19日 大津留公彦
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