首藤順子著「おみおくり」を読んだ
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首藤順子著「おみおくり」を読んだ
この本は兄の死に立ち会った筆者の日常を淡々と記録したおみおくりの記である。
筆者の夫が私の大学時代からの友人である。
その上に妻が長崎出身で夫が大分出身であること、兄と妹の二人兄妹であることの私との共通項があり自分に引きつけて一気に読んでしまった。
中にこんなフレーズがあった。
『夫はどんなときも「良一さんファースト」で考えていいと言ってくれた。ありがたい。根本的なところで、こんないい夫はめったにいないと思う』
この「夫」の優しい笑顔が見えるようだ。この妻は幸せだと思うし、こう思われる「夫」も幸せだと思う。
こういう兄と妹の交流もあった。
『しかし、何度も作っては捨て、作っては捨てをくり返していると、病気のせいとは分かっていても時々悲しくなってくる。兄の好き嫌いが多いこととこだわりが強いことを知っているから、「私の料理が気に入らないのだろう」と思ったりする。しかし、そんなことを察したのか、ある日兄が、「ごめん、食べきらん、はいらん。残して悪かなあ」と涙をこぼした。
私は一瞬でも兄に腹を立てたことを申し訳なく思った。』
献身的に兄に尽くす妹に打たれた。
こういう兄と妹の関係は素晴らしいと思った。
そしてこの本を読み終わった私にはある種の清涼感が残った。
自分は短歌で記録を残しているがこういう形の文章で自分と自分に関わる人の人生を残したいとも思った。
「おみおくり」
読みて心に清涼感
生き死に多く我にもありて 公彦
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