「立憲は、共産党と共闘したために敗北した」のか
長野県岡谷市の弁護士毛利正道さんの選挙結果分析を紹介します。
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「立憲は、共産党と共闘したために敗北した」のか
2021年11月9日 毛 利 正 道
問題の所在
立憲民主党:公示前勢力と選挙結果の対比
小選挙区48→57 比例区62→39 合計110→96
比例で公示前勢力62を維持し、小選挙区で今回1万票以内の差で自民党に敗れた31名(赤旗日曜版11月7日号一覧表付き記事)が当選していたなら、小選挙区88、比例62、合計150となり、
他方、自民党は実際の獲得議席261を少なくとも31減らした230となり、岸田総裁が超低めに設定した目標「単独過半数233以上」を確実に割っていた。自民党政治を大きく変える第一歩になったはずであったが、そうはならなかった。その原因を、なるべく事実に基づき分析してみたい。
(なお、ここでは、「共闘」が意味するものが、候補者1本化に留まるものなのか、政権構想合意を意味するものなのか、曖昧なままに論ずることにする。共産党との候補者1本化のみについてさえ、否定的に論ずる者もいるからである)。
立憲が比例で23議席後退したのはなぜか
比例区では、約30万票あれば、一人当選できる(政界の常識であるし、実際にもその通りである)。
これは、公示前勢力62を維持するためには、約1860万票必要ということ。
これは、自民党(今回=72議席=1991万票)とほぼ同水準の票が必要ということ。
これは、自民党と立憲の政党支持率比率=良くても「3:1」からみて、ありえないこと。
(政党支持率のこの傾向は、少なくとも2012年に政権から下野して以降同様であって、共産党との共闘が表面化してからではない。例えば、2014年8月共同通信調査では、支持政党別で、自民党36%・民主党8%。)
立民の支持率(良くて自民党の3分の1)から見ると、今回の自民党の72議席=1991万票からみ
て、その3分の1である24議席=664万票程度であっても不思議ではない。
故に、今回の立憲比例1149万票・39議席との結果は、いわば近年の党勢からして当然の結果であり、共産党などと共闘したために生じたというものではない。
(となると、立憲の比例公示前勢力が実際に得ている政党支持率と比較できないほど大きかったということになる。なぜこのような状況が生じたかというと、前々回2014衆院選では比例980万票・35議席であった民主党であったが、前回2017衆院選で、民進党から希望の党への解党的合流とこれに抗して結党した立憲という超特殊状況の中で、結果として、両党合わせて比例票が2000万票を超え、議席も希望32,立憲37、合計69にもなっていたために、その後の複雑な政党の動きのなかでも、立憲が今回選挙の公示前勢力として、62という大きな勢力を維持していたという経過である。そのため、今回選挙でのメディアの事前予測でも、共闘とは関係ないところで、立憲の比例が現有62から大きく後退するとみられていた)
小選挙区での共闘の結果は
1万票以内の僅差落選を固定的に見る根拠はない
まず、はっきりさせておくべき点は、上記赤旗記事の通り、立憲が1万票以内の票差で自民党候補に敗れた選挙区が、31あった(赤旗記事では32になっているが、うち1名は無所属であるため、立憲に議論を絞るため除いてある)。
選挙結果は出て見なければ分からないから、この31選挙区すべてで立件の候補が当選する可能性もあったのであり、そうなれば、立憲は、比例が39に減っても、小選挙区57+31=88を合わせると127議席になりえた。そうなれば、それまでの現有110から17議席の前進であるから、これほどまでに共闘への非難は生じなかったのではないか。
しかも、その31の選挙区のうちの21、すなわち3分の2の選挙区では、立憲候補は前回衆院選の時より、得票を伸ばしている。うち1万票以上伸ばしている選挙区が16,そのなかでも2万票伸ばしている選挙区が7ある。共闘への非難がゴウゴウとするような状況では選挙区ごとの得票も大きく減らすのが普通ではないか。落選したとはいえ、31のうちの16=過半数で1万票増えていたというのであるから、次回に希望が持てる落選ともみれるのではないか。
共闘勢力が衆議院が2倍になった
他方、当選者の動向はいかに。
2017前回選挙では、1本化に努力した83選挙区のうち、当選33比例復活23で、計56名の共闘議員が誕生した。今回は、213選挙区で1本化が成立し、当選62比例復活48で、計110名の1本化による「共闘議員」が誕生した。7名の比例単独を加えると、今回の共闘議員は合計117名である。今回当選者のなかの立憲は、前回54議席だったものが今回、選挙区57比例復活39で、計96名である。全体としてほぼ2倍の勢力になった(なお、立憲で比例単独から当選したものはゼロである)。
立憲に着目してもう少し詳しくみると、小選挙区で当選した57名のうち、前回は敗れたものの今回当選した議員が24名いる。また、57のうち、前回よりも得票を増やした選挙区が39=3分の2以上あり、うち1万票以上増が33,うち2万票以上増が19選挙区ある。共闘に対する否定的世論が大勢であれば、このような結果にはなるまい。
立憲65名落選を過大視することは慎重に
他方、立憲で1本化した161選挙区のうち、小選挙区で当選した57名と、比例復活当選した39名の合計96名を除く65名の候補者が落選したことは事実である。立憲としての今後の方向を見るうえで無視はできない。が、うち33名は新人であってやむなきケースも少なからずあるのではないか。これを差し引いた32名は、現職か元職だったということであり、真剣な反省が必要とは思われるが、うち23名=7割超は、前回よりも得票が増加しているのであり、共闘自体を原因とすることにはよほど慎重でなくてはなるまい。共闘の成熟度が今一歩だったために落選したということも十分考えられるからである。
戦略としての共闘に確信を持ちつつ
結局、立憲で一本化した161の選挙区のうち、前回敗れて今回逆転当選した24名を含む96名が小選挙区か比例復活で当選し、前職元職32名を含む65名が落選した。
そこでは、
1 立憲敗北の基礎数字とされている、獲得総議席が前回比14減となったことには、比例区で23議席後退したという、共闘とは無関係の事態がほぼ全ての原因を占めていること、
2 そのなかでも、立憲の議席も、他党派も加えた野党共闘による議席も、ほぼ前回選挙の2倍になったこと、
3 小選挙区で野党共闘による逆転当選が24名いること、
4 小選挙区で当選した選挙区でも落選した選挙区でも、大勢として、前回選挙時の得票を超える得票になったこと、
5 選挙戦全体を通して、9年に亘って政権を担ってきている自民党に対して、最後まで追いつめる激戦を展開したのであり、いわば、その象徴として、甘利明・石原伸晃以下の大物多数を落選させたこと、
6 市民と野党の共闘は、これまでの且つ今後の自公政権による政治では、国民として我慢がならない極地にまで達しているが故に、これを変えるための唯一の対抗策としてこれまでの幾多の難局を克服して今回の選挙に市民と野党の共闘は、これまでの且つ今後の自公政権による政治では、国民として我慢がならない極地にまで達しているが故に、これを変えるための唯一の対抗策としてこれまでの幾多の難局を克服して今回の選挙に到達したものであることを再度銘記すべきこと、
等から見て、共闘は戦略として基本的には正しかったとみるべきである。そして、今後は、互いに相手方をリスペクトしその意見に十分耳を傾けつつ、困難な事態の下でも、効果をより発揮するには、どのような態様の共闘が望ましいかを追求することが必要であろう。
(以上の分析は、2017・2021の選挙区ごとの選挙結果を踏まえたものである。個人での作業であるため、1・2の数値に誤りがある可能性はあるが、大勢に誤りはないものと思っている。誤りがあれば、ご指摘いただきたい。また、今回の選挙結果については、共闘の今後の態様についても、その他の点にも私なりの意見はあるが、野党共闘の是非に関しては、今後の政治の方向を定めるうえで急ぐべき重要論点であると思われるため、いわば基礎的な事実関係を踏まえたうえで論議して欲しい、との思いから提示するものである。ご意見をお寄せいただけると幸いです。)
以上。
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大津留公彦の意見
全体として異議はない。
まとめられている通りだが特に私が大事だと思う点を再引用する
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・当選62比例復活48で、計110名の1本化による「共闘議員」が誕生した。7名の比例単独を加えると、今回の共闘議員は合計117名である。全体としてほぼ2倍の勢力になった。
・小選挙区で当選した57名のうち、前回は敗れたものの今回当選した議員が24名いる。
57のうち、前回よりも得票を増やした選挙区が39=3分の2以上あり、うち1万票以上増が33,うち2万票以上増が19選挙区ある。共闘に対する否定的世論が大勢であれば、このような結果にはなるまい。
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本日第101代総理大臣に岸田氏が再任された。
共産党の小池晃書記局長は8日の記者会見で、第4回中央委員会総会を27、28両日に党本部で開くと発表した。
詳細な選挙分析が行われるものと期待する。
闘わない限り勝利は訪れぬ
変革しよう
解釈でなく 公彦
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